秋葉原電気街口エムタワーダンジョン⑩
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秋葉原電気街口エムタワーダンジョンは全6階層である。
そして3階は歳三が半壊させてしまった為、足元はよいか、の理念に従って探索を飛ばす事にした。床は半分以上崩落しており、不安定な場所での戦闘は危うい。
足元はよいか、とは現場仕事でよく聞かれる安全確認の掛け声だが、足元の大切さは現場仕事に限った話ではない。
探索者協会は何というか、標語だとか安全確認の掛け声だとか、そういう昔めいたアレコレが好きな団体でもあるので、基本的な確認まわりの色々は戌級探索者のうちから叩き込まれる。
ちなみに戌級探索者、通称"犬野郎"には戌級にあがって暫くたつと講習受講を義務付けられる。なぜ暫く経たないと講習が受けられないかといえば、外部団体、あるいは他国からのスパイじゃないかと調査部が調べる為の期間が必要だからだ。
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4階はぬるぬるであった。
大変異前、この階層はローションやコンドーム、高級輸入品などが販売されていたが、ダンジョンと化した現在は床全体が怪しい液体に塗れ、そこかしこに巨大な蛭めいたモンスターが蠢き、宙にはカップ状の物体や、バチバチと放電しながら宙空を回遊する蛇めいたモンスターもいる。
『あ、あれはーー!えへへ、実はこのダンジョンに挑む前に予習してきたんです。床のぬるぬるは、その…ローションをイメージしたもので、あのヒルっぽいのは、その…コンドームなんだとかっ!それであのカップはええと…胸にはめて内部のミニモーターでブラシを回転させて、先端を刺激するオモチャなんだとか…いや!私も説明したくてしてるんじゃないです!会社の方針で、なるべくダンジョンの説明はするようにっていうお達しが!わ、私は悪くないんですぅー!』
などとティアラが言う。
THE・カラテは黙殺し、ハマオは無表情でカメラを回していた。鉄衛は言わずもがなである。
これでいて根がアバズレであるティアラは、毎回は逆効果だがときおりシモめいた話をするというのは再生数上昇に大きく寄与する事を知っていた。だがこの手の発言は女性リスナーの反発を受けるというリスクもある。それを…
ドドドン!
電光石火の三連射!
三発の銃声の始めと終わりの音域がそれぞれ重なったかのような早業であった。
ティアラがマグナムを抜き放ち、瞬く間に浮遊するニプルカップ・モンスターを三体撃ち落としたのだ。
ニプルカップ・モンスターはカップ内部に鋭い牙をいくつも生やし、主に胸部を狙って食いついてくる。
そしてドリルの様に回転し、貪り食い、ついには胸に大穴をあけてくるという恐るべき雑魚モンスターなのだが、所詮は丁級指定のダンジョンのモンスターにすぎず、鉛玉を何発かぶち込めば処理できる相手でもある。
だが、太く黒くゴツいマグナムを片手でぶっぱなし、モンスターを始末する彼女の姿は世間一般の"強い女"イメージを体現したかのような姿で、この姿が女性リスナーを惹きつけるのであった。
『THE・カラテに任せてばかりもいられません!私もDETVの看板を背負ったダイバーだという事を示していかなきゃね、ですっ』
輝く様な笑顔でカメラに微笑むティアラにモンスター達もほれ込んだのか、小物がそろって一斉にティアラへ殺到しようとし、そしてとある一点に吸引された。
THE・カラテがティアラの前に躍り出て、空間をぶち割るかのような激しい蹴り上げを放ったのだ。
「昇竜の様に蹴り上げ」
秒速500mを超える超音速の蹴り上げが真空領域を作り出し、各種18禁モンスター達はそこへと一瞬吸い寄せられた。抵抗は出来ない。なぜならば蹴り上げの際の衝撃波がモンスター達の全身を強打していたからだ。
「落雷の様に打ち据える」
死に体となったモンスターの小群にTHE・カラテの踵落としが叩きつけられた。衝撃波と熱がモンスターの小群を巻き込み、焼き尽くし、バラバラに引き裂いていく。それはさながら落雷に撃ち据えられたかの様な様相であった。
「天に昇る竜は己が唯一無二の至尊だと奢り高ぶり、そして天神より放たれた雷に撃ち据えられ地に墜ちる。これぞ無道流・
『はァ~……』
ティアラはハァーとしか言えなかった。
──PSI能力?ただの踵落としじゃないの?なんで風が吹き荒れて炎が噴きあがるの?ドラゴンベインって何?
ちなみにドラゴン・ヴェインとは歳三が、いや、THE・カラテが昔プレイしたゲームに、そういう名前の武器が登場した事からチョイスされたネーミングである。
dragon bane…「竜の破滅」という意味だ。
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