『出産とその後』

@Joji-hiro

出産とその後

月明かり 広がる夜の 闇の中


静かに始まる 陣痛の声


初めは10 いたいいたいと いう妻の


痛みは増して 99を越す



臍の緒を 切ってみたらと 言われても


デベソの心配 して笑われる


強い痛みの中で いかに脱力するか


宮本武蔵に 達する妻


真っ赤な赤児を 検査台へ


私の声に 振り向いた気がする


強すぎる 痛みに涙ぐむ妻は


抱いて なんてかわいいのと 笑う


手にかかる 重みが私を 父にした

こんな私を 父にしてくれた



その日から 気の休まらぬ 日々続き


思う前日の アフタヌーンティー



ぐずる娘(こ)に 歌うと顔が やわらいで
驚くばかりの 恵みなりきと



怯えつつ 首とお尻に 手を添えて

薄いガラスの ような君の目


泣き出したら 何も考えずに歩け

妻が少しでも 眠れるように


寝てる子に 早く起きてよ 遊ぼうよ

なんて言ってて つられて寝てる


目の前で 踊ると笑って くれるから

お風呂上がりに 汗だくの僕


懸命に 吸い付く君は 生きようと

ただ生きようと しているのだ


シュー、コポコポ カパッ、さっさ トポトポトポ

ふー、くるくる コーヒーの匂い


子どもには わからないかと あなどるな

その目は僕らを 静かに見つめて


泣いている 顔を見てると にやけちゃう

だめだ、だめだ 真剣なきみに


寝てる君 横で歌う僕 笑う妻

君が生まれて 3日目の夜


あの日、君が 女の子だと 聞いた時

いつかの別れを 思って泣いた



思い出を三十一文字に詰め込んで

コトリこぼれる 一文字二文字(いちもじにもじ)


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