第5話 アドバイス

「俺の意見を?」


 美羽の言葉を聞いた悠斗がそう聞き返すと。


「うん、私はその人に私が好きだという事を分かって貰えるように自分なりに色々とアピールをして来たんだけど、その人は鈍感過ぎて私の気持ちには全然気付いてくれないの」


 美羽は少し不満そうな様子でそう言ったので。


「そうか、どこの誰だか知らないけどお前にアピールされても全然気が付かないなんて、そいつは本当に鈍感というか馬鹿な奴だな」


「……本当にそうだよ」


 悠斗がそう言うと、美羽は何故か少し呆れた表情を浮かべて悠斗の事を見てそう言ったので。


「どうかしたのか?」


 悠斗がそう聞いても。


「別に何でもないよ」


 悠斗から目を逸らして美羽はそう答えた。そして、


「それで、私なりにアピールをしてもその人は全然私の気持ちに気付いてくれないから、今度は他の人の意見を聞いてそれを実行しようと思ったの」


 美羽は再び悠斗の方を見るとそんな事を言ったので。


「成程、それで俺に聞くことにしたのか」


 悠斗がそう聞くと。


「うん、私が困った時に一番頼りになる人は悠斗くんだから」


 美羽はそう言った。正直、悠斗としては頼りにされていて嬉しいという気持ちと、自分以外に好きな人が出来てそれが嫌だという二つの気持ちがあったが。


「……分かった、正直俺も恋愛経験なんて無いから大したアドバイスが出来るかは分からないけど、それでも良かったら相談に乗るよ」


 最終的に幼馴染が悩んで居るのなら力になってやりたいと思い、悠斗はそう言った。すると、


「ありがとう、悠斗くんのそういう所、私は好きだよ」


 美羽はそんな風にお礼を言ったので。


「……おう、そうかよ」


 美羽から顔を逸らして、悠斗はぶっきら棒な口調でそう言った。そして、


「因みにお前はそいつとは今どれくらいの仲なんだ?」


 顔を逸らしたまま、悠斗が美羽にそう質問をすると。


「うーん、そうだね……困ったことがあったら色々な相談に乗ってくれたり、休みの日は私のわがままに付き合ってくれる位の仲かな?」


 美羽はそう言ったので。


「何というか、思ったより仲が良いんだな」


 悠斗がそう言うと。


「うん、そうかもしれないね」


 美羽は嬉しそうな表情を浮かべてそう返事をしたので、その言葉に少しショックを受けつつも、悠斗はどうアピールをするべきか自分なりに真面目に考えた。そして、


「因みに美羽はそいつの連絡先を知っているのか?」


 悠斗がそう質問をすると。


「うん、知ってるよ」


 美羽は直ぐにそう答えたので。


「そうか……それなら無難だけど買い物に付き合ってとか言ってその人を誘って、そのまま二人でデートをして仲を深めるのはどうだ?」


 悠斗がそう案を出すと。


「うーん、悪くはないけど、その人は鈍感だからそれだけじゃあ気付いてくれないと思うよ」


 美羽はそう言ったので。


「そうか、それなら普段しないような事をしてみたらどうだ?」


 悠斗がそう言うと。


「どういう事?」


 美羽はそう聞き返して来たので。


「そいつにお前の事をアピールしたいんなら、例えばそうだな……少し強引かもしれないけど、人が多い所だったら、はぐれない為だとか言って相手の手を握って買い物をするのはどうだ? 相手がどれだけ鈍感でも、さすがにそれくらい大胆な事をすれば少しはお前の事を意識すると思うぞ」


 そんな風に悠斗が美羽にアドバイスをすると。


「確かにそれくらいの事をしたら少しくらいは効果があるかもしれないけど、でも、嫌じゃないかな? 急に私に手を握られたら」


 美羽は少し不安そうな表情を浮かべてそう言ったので、悠斗は、


「……そいつがどう思うかは分からないけど、少なくとも俺なら嫌じゃないぞ」


 美羽から視線を逸らしてそう言った。すると、


「そっか……うん、分かった、それなら悠斗くんに言われた事を今度試してみるよ!!」


 美羽は笑顔を浮かべてそう言ったので。


「……ああ、そいつに気付いて貰えるように頑張れよ」


 悠斗は美羽に向けてそう言うと。


「うん、絶対に私の気持ちに気付いて貰えるように私は頑張るよ!!」


 美羽は満面の笑みを浮かべて悠斗に向けてそう言った。

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