第3話 美羽の部屋で
その後、悠斗は美羽に案内されて二階にある彼女の部屋の中へと入った。すると、
「えっと、それじゃあ私は今から飲み物とお菓子を持って来るから、悠斗くんは部屋で寛いでいてね」
美羽はそう言うと、悠斗を置いて自分の部屋を出て行ったので、悠斗は美羽の部屋の床に座ると。
「……それにしても美羽の部屋に入るのは久しぶりだな」
悠斗はそう言って、部屋の中を見渡した。
美羽の部屋は数年前に来た時と同じように可愛らしい雰囲気で綺麗に片付けられていて。
美羽は昔から変わってないなと少し懐かしい気分に浸りながら、悠斗が部屋の中を見渡していると。
「……ん? あれは」
彼女のベッドの枕元を見た時、何やら見覚えがあるモノがあったので、悠斗は立ち上がると彼女のベッドの方へと歩いて行き、それを手に取った。そして、
「やっぱりあの時のやつだ、美羽のやつまだ持っていたのか」
そんな風に悠斗が呟くと。
「えっと、悠斗くん、何をしているの?」
いつの間にか部屋に戻って来ていた美羽が悠斗に向けてそう質問をして来たので。
「あっ、美羽、戻って来たのか、いや何、これを見て懐かしいなと思っていたんだ」
そう言って、悠斗は自分の手に持っていたウサギのぬいぐるみを彼女に見せた。すると、
「えっ、あっ、悠斗くん、それは……」
そう言うと、美羽は何故か頬を少し赤く染めて下を向いたのだが、その後、直ぐに顔を上げて悠斗の方を観ると。
「えっと、悠斗くんはそのぬいぐるみの事を覚えているの?」
少しだけ悠斗から眼を逸らしつつ、美羽はそんな事を聞いて来たので。
「ああ、当たり前だろ、確か中学生の頃に二人で買い物に行って、お前がそのぬいぐるみを欲しそうにしていたから、俺がクレーンゲームで取ってお前に上げたんだよな」
悠斗がそう言うと。
「……うん、そうだね、このぬいぐるみは悠斗くんが私に初めてプレゼントをしてくれた大切なモノだよ、だからこのぬいぐるみの事は悠斗くんだと思って今日までずっと大切にしているの」
美羽は照れ臭そうに微笑みながらそんな事を言ったので。
「……そうか」
そんな美羽の姿を観て悠斗も少し照れ臭くなってしまい、美羽から視線を逸らしてそう言った。
その後、二人の間には妙な沈黙が出来て少し黙ってしまったのだが。
「えっと、悠斗くん、いつまでもそんな所に立ってないで、こっちに来てお菓子でも食べようよ!!」
そんな雰囲気を変えるようにいつもより明るい口調で美羽がそう言ったので。
「ああ、そうだな」
悠斗もそう返事をして、ぬいぐるみを枕元に戻すと美羽の元へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます