第2話 高橋美羽

 その後、美羽との通話を終えた悠斗は約束通り彼女の家に行く為、自分の部屋を出ると出かける準備を済ませてから家の外に出た。


 ただ、美羽の家は自分の家の直ぐ隣にあり、歩いて一分も掛からない距離なので、悠斗は直ぐに美羽の家の玄関前に辿り着いたのだが。


(……それにしても、美羽の言う大切な話って一体何なんだ?)


 直ぐにはチャイムを押さず、悠斗は心の中でそう呟いた。


 悠斗は美羽とは幼稚園に入学する前のまだ記憶の無い頃からの付き合いであり。


 かれこれ十年以上同じ時間を過ごして来たので、もうお互いに言いたい事はある程度言い合える仲ではあるのだが。


 そんな美羽が電話では話せない大切な話だと言っていたので、悠斗は一体どんな話だろうと自分なりに考えてみて、その結果、


(……もしかして、大切な話っていうのは恋愛関係の話か?)


 悠斗は最終的にそんな結論に至った。


 何故なら、年頃の女の子が電話では話せない大切な話というのは悠斗からすれば恋愛関係くらいしか思いつかなかったし。


 美羽の性格を考えればこういう真面目な話は直接会ってしたいというのも理解できた。


 それに、もしかしたらこの後、美羽が自分に告白をして来てくれて、俺にも遂に春が訪ずれるのかもしれないと、悠斗はそんな妄想をしそうになったのだが。


(……いや、そんな訳ないか、美羽が俺なんかに気があるわけないし、高校に入学ばかりだから、もしかしたら人間関係の悩みなのかもしれないな、もしそうならあんまり自信は無いけど、それでもちゃんと相談には乗ってやらないとな……よし!!)


 悠斗は心の中でそう結論付けると、その場で一呼吸してから顔を上げて、


「ピンポーン」


 美羽の家のインターフォンのボタンを押した。


 そして少しの間、悠斗がその場で待っていると。


「……ガチャ」


 そんな風に鍵を開ける音がして、ゆっくりと家のドアが開いた。そして、


「えっと……おはよう、悠斗くん」


 そう言って、玄関から顔を出した少し気弱そうな雰囲気の彼女が悠斗にそう挨拶をして来たので。


「ああ、おはよう、美羽」


 悠斗も同じように美羽に挨拶を返しつつ彼女の姿を観た。


 黒色のショートヘアに高校1年生にしては少し小柄な身長、顔はかなり童顔だが同学年の女子と比較してもかなり可愛らしい容姿をしている美少女。


 彼女が悠斗の幼馴染であり、今日、悠斗を電話で呼び出した張本人である高橋美羽だった。


 そして今は八月に入ったばかりの夏真っ盛りであり、彼女は白のキャミソールにピンク色の短めのスカートという涼しそうな格好をしていたのだが。


 そのせいで、彼女の細くて色白な腕や足が見えてしまい、悠斗は咄嗟に美羽の体から視線を逸らした。そして、


「……それで、お前はどうして今日俺を呼んだんだ?」


 美羽から視線を逸らしたまま、悠斗が彼女にそう質問をすると。


「えっと、その事は私の部屋で話さない? ここで話す様な事じゃないと思うし、折角悠斗くんが家に来てくれたんだからお茶くらい出すよ?」


 美羽は直ぐには答えず、悠斗にそう提案をして来たので。


「そうか、分かった、それじゃあ遠慮なくお前の家に上がらせて貰うよ」


 悠斗はそう返事を返し、美羽の後に続いて彼女の家の中へと入った。

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