第8話 悩みの種
火山地帯から空の島に戻った。その道中で狩った動物の肉を、グリフォンの足に吊るして運ぶ。グリフォンの住んでいる区画へ行くとクライヴが驚愕する。
今乗っているグリフォンから素早く下りた。遠くで大人しくしている、先ほど助けたグリフォンの方へと嬉しそうに走って行く。こちらに気が付いたらしく、鳴き声で挨拶をしていた。
「お前ぇ!? 来てたのか!?」
「よろしくね」
レティシアが挨拶をする。グリフォンは彼女の方を見てから、短く鳴いて答えた。グリフォンを飼育している女性騎士が驚いた様子でエルナに言う。
「こんな大きなグリフォンは初めてですよ。いきなり飛んで来て。ビックリしたんですよー……」
「私も今知ってビックリしたわよ。まったく、やんちゃなお姫様よね~!」
ディアナ嬢にたっぷりと怒られた女性騎士は遠い目をして、その言葉を聞き流した流した。
「先ほど守護精霊様がおっしゃってました。この子、地の精霊に好かれているようですね。それで体が大きくなっているようです」
アルフィーはそれに喰いついた。女性騎士に訊ねる。
「じゃあ、ベルソンのグリフォンはどうなんですか?」
「私たちのは風の精霊! 小柄だけど速くて長距離も行けるんですよぉ!」
「なるほど。こんなに大きく変わるんですね~」
足元で遊んでいるフィーがピィピィと鳴いている。こちらに気が付くとキュゥ、っと疑問系の声を出した。体を持って持ち上げると手足をバタつかせて喜んでいた。レティシアが頭を撫でるとさらに元気に鳴く。
そんな会話を余所に、クライヴが子煩悩な父親の如く、グリフォンに熱を入れる。
「俺はこの子が生まれるまで当分ここに住むぞぉ! 見届けずには夜も眠れねぇっ」
女性騎士は無言だった。追い払われ無いので了承という事で大丈夫だろう。この辺りで一旦解散する。
レティシアはフィーの体を洗うとかで川に行った。アルフィーは訓練中である。時に激しく、時にゆっくりと筋肉を使いながら思考にふける。
(俺は数年かかったが、レティシアは癒しの魔法を短期間で習得した。才能がある……)
クライヴにはあの勇敢さと力。何よりも凄まじいタフネスがあり、エルナには大胆さに加えて槍での間合い取りなど、繊細な技術がある。
俺の強みは何だ。型が読みにくい我流か。それとも速さか。
(他の魔法にも手を出したいが……剣と同じく我流だと時間がかかるだろうな)
そんな事を考えながら体を動かしていると、ディアナと目が合った。彼女も訓練中らしい。こちらに気が付いたらしく手を止めて近づいて来た。
エルナとは違い。美しい姿勢。数センチほど彼女より高く豊満である。それでいて品性も持ち合わせていた。
ボリュームアップしたポニーテールが可愛らしく、その雰囲気が話しずらさを軽減している。右目が淡い紫、左目が緑とエルナと逆のオッドアイも印象的だ。
「アルフィー殿。何故、エルナ姫を連れて行った?」
「すみません……」
「……大方、エルナ姫が無理やり同行したのだろう」
(妹への理解が深い……)
「え、まあ……俺の不手際もありますので、エルナ殿下をあまり、叱らないであげてください」
「それは姫次第だな」
(よく考えると対面での会話は初めてだな。何を話そう……)
「訓練ですか?」
「ああ、日課だ」
(真面目な人だ。エルナ殿下とは偉い違いだ)
「よければ、手合わせをしませんか?」
「分かった。国の威信をかけて戦おう」
彼女は自信に満ちた顔でそう返して来た。余程戦いに自信があるようだ。
(あ、この表情。この人たちやっぱり姉妹だ)
「……もっと軽めのでお願いします」
「個人での練習試合か?」
「はい」
ディアナは細剣を抜くと優雅に構えた。まるで隙が無い。直接的なエルナとは違い、適度に緩急を付けた動き。
アルフィーの僅かな変化を見逃さずに、出鼻をくじく様に薙ぎ払いの一撃を放つ。たまらず受けに回る。先手を取られ、防戦に追い込まれる。頑張って無理やり反撃をするが、容易に対処されて、再び攻め込まれる。
(魔獣の時とは違う。直線的な攻撃だけじゃ倒せない!)
アルフィーも自分の素早さと身軽さを活かし、フェイクを挟みだす。彼女は関心した様子を見せるが、まだ本気を出してないとばかりに速度を上げて来た。
「アルフィー殿! ここからだッ」
数十分ほど撃ちあうとアルフィーが体力勝ちした。エルナ戦とは違い辛勝だった。余りにも予定外だったのか、両手と両膝を地面に付け、ショックを受けているディアナ。
「も……い……か……だ」
「……え?」
「もう一回勝負だ!?」
「……はい」
その叫びには否応なしに、ハイと言わせる気迫があった。その後、何度も挑まれたが全て勝利。埒が明かないので、最終的に勝ち逃げした。
【わるわるなやつら】
ある時、クーが建物に入り、廊下を飛んでいると呼び止められた。
「守護精霊殿」
「あれ、陛下。何か用?」
「雑談でもしようかと思ってな。アルフィー殿の事をどう思う?」
「んー。難しいねぇ。頼もしい騎士ではあるけど」
「ふむ。それではレティシア女王とは……どうかな?」
「あ~……ちょっとレティシアとは合わないかな」
「ほう……ところで話は変わるのだが、貴殿に相談がある……」
「なに?」
「同盟国として、土地を譲渡してもらえないだろうか?」
「もうあげてるじゃない」
「そうかそうか。それでは……その土地を切り離し、分ける事は可能か?」
「なるほど、目的はそれか。独立するほどのコアを作るのは、現状の技術では難しいだろうね。でもその内、僕の力が及ぶ範囲内なら孤島にする事は可能だよ。ある程度、自由に操作できる権限を与える事もね」
「余り驚いて無い様だが……? 警戒はしないのかね」
「散々似た様な事があったからね。最悪の場合、その対処法も知ってる」
「……それは恐ろしい」
「それを堂々と聞く陛下も中々だよ」
お互いに悪い笑みを浮かべていた。
「もし……もしもの話……どこぞの王の娘が、アルフィー殿と婚約するとなると……どうするかね?」
「興味深い話だね……」
「なぁに。協力する事の報酬と、成功した時の報酬があれば……そういう未来も存在するやもしれんな」
「ぬー。陛下も悪だねー」
「守護精霊殿、そちも中々……」
そこには、何かろくでも無い事を企んでる奴等がいた。
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