BF97 とりあえず潜ってみる

 朝早く目が覚めて、端末で試合予定を確認したら21時から第15リングだった。対戦相手、時間、場所はバトルタワーのが決める。どういう基準で決められるのかわからないが、の注目度が高いほど遅い時間で番号の若いリングにマッチングされるらしい。

 まだあせる時間じゃない…。ハレルが求めているのは人気じゃなくて強さだ。ランクが上がっていけば注目度も上がるだろう。


 狭い部屋の狭いベッドにはメアリが寝ている。田舎の村ヘンピーに居る頃から変わった行動をとったりしていたが、押し掛けメイドには驚いた。メアリが何を考えているのか分からないが、まあ考えるだけ無駄だろう。分かるわけない。

 メイドとして役に立っているかは不明だが、寂しさを紛らわすのには役立っている。ヘンピーと違ってここは人が多いし、知らない人ばかりだ。いろんなことをやったり考えたりしなくてはいけなくて寂しさを感じてる時間もないが、メアリが隣にいてくれるのはありがたい。


 今日は朝からダンジョンにソロで潜る予定で、外が明るくなってきているのでまだ早いかもしれないが、装備を整え部屋を出た。

 朝食は食堂には行かず、ダンジョンに向かう途中の屋台で取るつもりだ。いつも良い匂いが漂っていて、ちょっと興味があったのだ。

 気のよさそうなおっちゃんがやっている屋台はソーセージをパンで挟んだものを売っていた。ホットドッグっていうらしい。ソーセージの焼ける音も食欲をそそる。

 さすがには使えなかった。小銭を払ってひとつ買い、ダンジョンまでの道すがら、おいしく頂いた。


 ダンジョンは十層ごとにワープポイントがある。利用するには一度その場所まで行きで登録する必要がある。ダンジョンの入口のゲートのすぐ脇にもワープポイントがあり、他の階層のワープポイントに登録しておけば、すぐに行けるようになる。

 今日の目標は地下10層まで潜りワープポイントに登録してくることだ。そこで登録できれば、帰りはワープして入口まですぐ飛べる。

 地下1層は昨日同様スライムをぶった切って行く。魔石ませきは回収していく。魔石ませきもいろいろで基本的に弱い魔物の魔石は安く、強い魔物の魔石は高い。低階層でいくら魔物を倒してもランチ代くらいにしかならない。弓使いでエルフのコノカさんが言っていたように、バトルタワーのランカーになって食住を確保してダンジョンに挑むってのは理解できるな。低階層ではまったく仕事としてはわりに合わない。


 昨日、武器屋の後にギルドによって地下10層までの地図を購入してきた。10層以下の地図はないそうだ。不完全な情報しか集まってないらしく、売れるようなものじゃないとのことだった。宝箱も見つかったりするそうでダンジョンの捜索も楽しそうだが、実戦経験を求めているハレルとしては最短走破の方針で行くことになる。

 一応地図で確認しながら昨日来た地下2階層への階段までやって来た。序盤はたいしたことないと思うが、それを確認しに地下10層まで行く。


 ウサギや犬のような魔物、あるいは鳥の魔物が襲ってきたが、たいした強さではなく苦労もなかった。ふとコノカさんは何階層まで潜ったことがあるのだろうかと思った。聞いておけば良かったな。もとからソロで活動する予定だったので、パーティーで行動することがよくわからない。今日ハレルが地下10層のワープポイントにの登録ができても、コノカさんが登録するためにまた地下1層から10層まで走破しなければならないかもしれない。

 そして10層ごとにボス部屋があり、ボスの魔物を倒さないとワープポイントに行けない。ワープポイントの先に次の階層への階段もあり、ボスを倒さないと次に進めない仕組みだ。

 地下10層のボスはゴブリンだった。人型の魔物は初めてで、二足歩行も初めてだ。身長は1メートルくらいで、見た目も動作も醜悪な感じだ。一直線につっこんでくる感じで、とくに苦戦するはずもなくあっけなく一降りで逝った。

 魔石ませきも少し大きいけど小ぶりには違いなく、換金もそれほど変わるとは思えないな。

 地下10層のワープポイントでの登録をした。時間は正午を越えたあたりで、序盤の10層がどれくらいで走破できるかわかった。次の地下20層まではどれくらい時間がかかるのか。ハレルの強さならどれくらいの階層まで潜れるのだろうか。効率よく狩れて換金も良いのはどの階層のどんな魔物かも知りたい。ソロでとパーティーではそれが違うかもしれないな。

 バトルタワーに帰ったら、コノカさんにいろいろ聞いてみよう。


 「お帰りなさい、ご主人さまぁ!」

 部屋に帰るとメアリが迎えてくれた。

 「お風呂にしますか、お食事にしますか、それとも?!」

 よみがえる記憶、アマゾソ川の水は冷たかった。

 「わたしでお願いします!!」

 ハレルはついに未来予知の能力を手に入れた。

 「。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。」

 バチーン~~~再びアマゾソ川の対岸まで飛ばされるハレル。だから、メアリが言い出したんじゃないの?

 ただ未来予知で宙を舞う自分が見えたとしても、性少年ハレルは一縷いちるの望みにかけてを選ぶしかないのだ。


 シャワーで汗を流し、メアリが用意してくれた服に着替える。どこで洗濯しているのかと思うが、それを聞くよりももっと聞くべきことがあるのかもしれない。何だかタイミング逃してしまうことってあるよね。

 メアリを従えて、大食堂で軽く遅い昼食を取る。ここはバイキング形式になっているのだが、メアリが給仕きゅうじしてくれるので好きなものが食べれない。そのことに不満はないのだが、この後ろに控えているのは何だろうね。


 バトルタワーの練習場で日課の素振りで汗を流す。正しく素早く刀を振るためであるし、必要な筋力をつけるためでもある。


 バトルタワーの部屋には端末が設置されていて、バトルの申し込みが出来るし、コノカさんに連絡も出来る。ところでコノカさんってランクBF100だよね。次に負けたらバトラーじゃなくなるし、連絡もとれなくなるのかな。


 バトルタワーのロビーでコノカさんと待ち合わせた。ロビーのソファーで話しても良かったが、騒がしいので喫茶店に入った。


 意外だったがコノカさんはダンジョンの地下10層を仮パーティーで潜りクリアしていた。最もその仮パーティーは二度と一緒に潜ってくれなかったそうだ。コノカさんは貴重なエルフさんですよ、分かってますか?ハレルだけがエルフという種族に異常な憧憬しょうけいを持っているのかもしれない。


 「えっハレル君ソロで地下10層まで潜ったの?」

 驚くコノカさんもかわいいです。

 「えっ10層のボスも一撃でしたけど?!」

 ハレルにとって苦戦するようなこともなく、むしろ予想よりバトルタワーもそうだが相手が弱い。階層を重ねれば強くなるのだろうが、ハレルはその予想をうまく出来ないでいた。まあ、進むしかないだろう。

 「コノカさんはダンジョンの最到達階層はどれくらいか知ってる?」

 ハレルは訊ねた。

 「知らないです。わたしみたいな底辺冒険者には縁のない話です。」

 コノカさんは少しうつむいて答える。

 「ノウノウノウ、ついでに最下層到達者の称号を頂きましょう。」

 ハレルは指を上に突き刺した。

 「いや、最下層だったら下だから!!」

 やるなコノカさん。

 「よーし、明日から最下層を目指して、朝ロビーに集合です。」

 ハレルは新たな目標に闘志を燃やした。もちろん、コノカさんにも異論はありません。

 「ダンジョンにもっと潜りたかったし、ハレル君と一緒なら安心です。」

 明日からまたがんばろう。


……。

今日のハレルのバトルですが紙面の都合上割愛させて頂きます。



主人公ハレル ランクBF97 戦績4戦4勝0敗

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