BF98 初めての共同作業
昨晩、寝る前にバトルの申し込みをした。バトルの申し込みは前日の正午までだ。キャンセルも同様に前日の正午までだ。
翌朝、端末でバトルの時間を確認すると、18時から第9リングだった。弓使いのコノカとは冒険者ギルド前に9時に待ち合わせている。ダンジョンに潜っても時間の余裕はあるだろう。今日もメアリを従えて朝食を取った。
9時少し前に冒険者ギルドに着くと、コノカはもう待っていた。メアリはダンジョンにはついてこないらしく部屋から見送られた。ダンジョンに向かいながらコノカと話しをする。
「今日は僕、18時からバトルなので軽くダンジョンに潜ろう、初めてだしね。」
トレーニングも兼ねていくらでも生活費のたしになるくらい稼げればいいと思う。
「ダンジョンは初めてですか。」
コノカは普通の言葉使いで安心する。
「ああ、まっさらの初心者だ。コノカはバトル申し込みしてないの?」
ハレルは聞いた。
「えぇ?!普通は期限の一週間経つまでバトルしませんよ。私みたいな底辺冒険者はバトラーになって食費と宿代浮かしているだけなんですよ。」
コノカは当然のように言った。
「そっか、コノカは冒険者がメインなんだね。僕はバトルタワーの頂点を目指しているんだよ。」
ハレルは言った。
「えぇー?!普通にさらっとすごいこと言った。」
コノカはけっこうリアクションがいいなぁ。
「目指すだけなら誰でも出来るよ。」
そう、まだ何もなしていない。
「でも、それならなぜ私みたいな底辺冒険者とパーティーを組んでくれたのですか。」
コノカがこちらを覗き込んで聞いた。
「う~ん、ノリと
理由はいくつかある。一つは直ぐにダンジョンに潜るつもりだったので、初めてだし一人よりいいかなと思った。もう一つはコノカが素質のわりにうまく戦えてない気がして、鍛え上げればそこそこのバトラーになれると思った。もう一つはコノカがかわいかったから……。だって健康な男子がかわいい女の子のお誘いを断れるわけないじゃない!
「?!ちょっと意味わかんないけど、まあラッキーだったって思っておく。」
コノカが微笑んだ。
ダンジョンの入口にはゲートがあり生体認証で通れる。ハレルとコノカはそれぞれ通過した。ダンジョンは最初が地下1層で、フロアーのどこかに下りる階段があり、何層も下に広がっている。
基本的に一つのフロアーには一種類の魔物しか出ない。地下1層はスライムだ。何で物理ダメージが入るのかわかんないが、ハレルの日本刀で一撃で倒せる。倒したスライムは消え、
コノカは遠慮しているのか、誤射を
「短刀とか持ってないの?」
バトルタワーで対戦した時、接近したら反撃を受けるかもと警戒していたが、何の気配もなかった。
「ないです。」
コノカは
正直に言えば弓使いはバトルタワーでのバトルに向いていない。バトルフィールドの大きさからいって、射出に十分な時間がとれないし、相手にすぐ接近されてしまう。
「バトルタワーで戦うなら近接武器の方が向いてると思うけど、弓に何か思い入れでもあるの?」
ハレルも父親の
「私、エルフなので弓使うのが当たり前みたいな感じです。ここに来る前は良い仲間が見つかってパーティー組んでダンジョンに潜って活躍するイメージだったんですけど、誰も弓使いと分かるとパーティー組んでくれないんです。」
コノカはうつ向いて言った。
「えっっえ~~えっ~!!!エルフなのーー?!?!」
ハレルは飛び上がった。
「えっダメですか?」
コノカはショックで暗い顔になる。
「いや、スゴいじゃん、エルフ最高だよ。死ぬまでに一度は遭遇してみたい種族ランキングぶっちぎり一位だよ!」
ノリでパーティー組んでよかった。バトルタワーに来てよかった~~。
「えっそんなランキングあるんですか?」
コノカの表情が明るくなる。
「いやぁ~ハレル超個人的ランキングだけどね。」
(笑)
「もう、ぬか喜びですよ。まあそれでも嬉しいですけどw」
コノカの落ち込みは少しはましになったようだ。
少しして下への階段を見つけた。それほど時間はたってないが、今日は引き上げることにした。マップや階層の情報を調べたり、装備も少し整えた方がいいだろう。
地上に戻って、武器防具屋とか道具屋をまわってダンジョンに必要なものを買いそろえたい。コノカの短剣も見に行くことにした。
「そういえば僕、一文なしだった。」
バトルタワーではお金がかからないので忘れていた。
「ハレルはバトルに連勝してますよね?勝利報奨金が入ってるはずですよ。」
コノカが言った。
バトルタワーで登録した時に説明されたのを思い出した。バトルに勝つと賭博の売上の一部が勝利報奨金として支払われる。バトルタワー本部の銀行口座にプールされ、いつでも引き出せるしバトルタワーの街ならどこのお店でも生体認証で買い物ができる。
武器屋の店主に銀行口座にいくら入っているか聞いた。生体認証で確認すると50万円入っていた……。
コノカが言うには一桁の番号のリングでは人気も注目度も高いので掛け金も多く集まって、勝利報奨金もたくさん貰えるらしい。ちなみにコノカの勝利報奨金の最高で数千円だったらしい。負けると一銭も貰えない厳しい世界だ。
店主に短刀を見せてもらった。自分用にも一本欲しいと思っていたのだ。ひとくちに短刀といっても、
その中でわりと小ぶりなナイフを選んだ。脇差しのようなタイプは二刀流でもあるまいし、使うような状況になったら負けるイメージしかない。それにあまりかさばるようだと普段の動きに良くない影響を与える気がする。
値段も手頃だしこれを一生使い続けるわけでもない。とりあえず使ってみてだな。使うようなことがあるのかもわからないことだしね。
ふと、コノカのほうを見ると一本の短刀にくぎ付けになっていた。その値札を見てすぐに府に落ちた。ハレルの選んだナイフの十倍の値段だ。でもデザインとかフォルムがとても良く、高価なのにも納得できる。
「もしよかったら、パーティーとしてこのナイフとその短刀を買おうか?」
放置しておいたらいつまでもそこに立っていそうだ。
「えぇいいの?!」
今日一番の笑顔でコノカが振り返った。
ハレルのナイフとコノカの短刀を銀行口座から生体認証で支払った。コノカには近接戦闘の基本くらいはマスターしてもらって、バトルタワーでもダンジョンでも頑張ってもらいたい。
コノカと別れ、バトルタワーの練習場で汗を流した後、18時前に第9リングに到着した。ダンジョンで冒険者も楽しそうではあるが、魔物と戦って経験値を得たり、バトルタワーで活躍するために経済的な
今日の対戦相手は、槍使いだった。
槍という武器の特徴は、
開始のゴングが鳴った。
相手は槍使いらしく距離を取って慎重に
右に振りかぶって攻撃のフェイントを入れると、思ったように槍をつきだして弾きにきた。力を抜いて反発力の影響をうけないように左から相手の懐に飛び込んだ。こうなると槍の長い柄が不利になる。
そのまま左回し蹴りを相手の顔面に叩き込んだ。気持ち良いほどに後方に吹き飛びそのままノックアウトで試合終了のゴングが鳴った。
とりあえず、次のバトルを申し込んだが、さあ明日は
主人公ハレル ランクBF98 戦績3戦3勝0敗
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