BF99 遠距離初めてです

 ハレルは最初のバトルに勝利して、バトルタワーのランカーになった。BF100のランカーはバトルタワーBF100に部屋が与えられる。受付で部屋の鍵はになっているので、もうすでに入室可能とのこと。

 部屋はホテルのようになっているので、起こされたくない場合は『Do Not Disturb』の札をドアに掛けて置けばいいそうだ。食事はランカーなら大食堂で無料で食べられる。貧乏なハレルには嬉しいサービスだ。

 翌日のバトルのマッチングを申し込んで受付を後にした。


 「お帰りなさい、ご主人さまぁ!」

 BF100の部屋に入るとメアリがいた……どうなってんの?

 「お風呂にしますか、お食事にしますか、それとも?!」

 !?

 「わたしでお願いします!!」

 キタ━(゚∀゚)━!、ついに大人の階段を登ってしまうトキがきてしまったようだ。

 「。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。」

 バチーン~~~アマゾソ川の対岸まで飛ばされた……。いやそっちが言い出したんちがうの~~~。


 とにかく長旅の疲れを癒すためにシャワーを浴びて就寝。最下層の部屋だから狭いけどホテルのように清潔ではある。ホテルに泊まったことないですけどね。狭いベッドにメアリと同衾どうきんした。狭すぎてお互の身体が触れないことは不可能だ。

 背中にメアリの柔らかさと隣から漂ってくるなんとも言えない良い匂いが若いハレルには毒です。こんな環境で寝られるわけないと思ったが、数分後には2つの寝息が聞こえてきた。


 翌朝、目が覚めると知らないてんじょ……あぶないあぶない。

 メアリの姿が見えなくて気になるが、気にしてもどこにいるかはわからない。思ったより身体が疲れていたのか、緊張で思ったより疲弊ひへいしたのかわからないが、わずかにダルく感じる。

 

 部屋にある端末で今日の試合時間を確認する。第7リングで15時開始である。およそ10分前にリングに行けば良いが、開始時刻に行かないと不戦敗となる。

 バトルタワーでは12時、15時、18時、21時の1日4回バトルが大小30あるリングで行われる。バトラーが1日にできる試合は1回と決まっている。BF51以下は最低でも週に1回は試合しないとランクが下がってしまう。BF50以上は2週間に1回、BF10以上は月に1回だそうだ。


 

 施錠せじょうの外れる音がしてメアリが帰ってきた。

 「おはよぅございですぅ、

 朝から元気だな。

 「おはよう。」

 メアリのご主人様になったつもりはないが……なったの?

 「朝食をいただきに大食堂に行きましょう」

 メアリが言った。ハレルはメアリが外で何してたのか気になるが、いや何故メイドになっているかって方が気になるか…。


 メアリの案内で大食堂に来た。ちょうど朝食の時間帯だからけっこう賑わっていた。メアリにテーブルで待っているように言われて座っていると、トレーを運んで来た。

 「どうぞぉお召し上がりぃくださぃ~~」

 ハレルの前にトレーを置くと背後に下がった。

 「メアリは食べないのかい?」

 ひとりの食事は味気あじけない。

 「とご一緒するぅなんてとんでもなぃですぅ」

 メアリは言った。

 「……。」

 しゃべり方といい行動といい、どういうつもりなんだ?

 「お腹がかないのか?」

 聞きたいことは山ほどあるが、どう言っていいのかわからない。

 「私は先に頂きまぁした~私のことはお気遣きづかいなくぅですぅ~」

 とりあえず一旦いったんメアリのことは後回しにしていいか……。


 日課になっている素振りをしながら対戦時間がくるのを待っていた。序盤は苦戦どころか秒殺びょうさつ以外ないかもしれない。でも、油断大敵ゆだんたいてきランクが低いからといって弱いとは限らない。ハレルがそうであるように。

 今日の相手は弓使いのようだ。弓という遠距離武器はバトルに向いていない気がするがどうなんだろう。身体の小さい女の子だが、バトルには十五歳以上でないとエントリーできないので、十五歳以上なのは確かだろう。

 弓でどういう戦いをしてくるのか少し興味が湧いた。相手が女の子でもあるので、派手にぶった切りに行くのも躊躇ためらわれる。


 対戦開始のゴングが鳴った。


 弓使いは連射で二本の弓を撃ってきた。こちらが右にけるように左足付近に一射目、右にけたタイミングで当たるように二射目。一射目が誘導で二射目が本命か。こちらのスピードをわからせるために、二射目が届く前に大きく右にけた。

 弓使いの目が見開いて驚いているのがわかる。想定外の事だったのか、打つ手がわからなくなったようだ。

 ハレルは全力で弓使いとの距離を詰め、相手との顔をゼロ距離で聞いた。

 「降参こうさん?」

 ハレルは弓使いの女の子の睫毛まつげが長いなと思った。

 「降参デス」

 弓使いが宣言すると試合終了のゴングが鳴った。

 弓使いの子はBF99だったので、ハレルがBF99にあがり、弓使いの子はBF100に下がった。秒殺とはならなかったが、消耗も疲労もなくバトルタワー二日目を終えた。


 「ハレルさん、私とパーティー組んで下さいお願いします!」

 弓使いの子がリング脇でいきなり深くお辞儀しながら、右手を差し出していた。ハレルは右手を力強い握り言った。

 「お願いします!」

 弓使いの女の子は驚愕きょうがくの表情でハレルを見つめたままフリーズしていた。

 「で、パーティーって何?おーい!?」

 たぶんパーティーって冒険者のことだろう。ハレルはバトルタワーの序盤は時間があまるので、冒険者としてダンジョンに潜るのも悪くないと思っていた。というか、この後に冒険者ギルドに冒険者登録に行こうかと思っていた。弓使いの女の子は固まったままだ。

 手を離して、両肩を揺さぶるとようやく我に帰ったようだ。

 「バトラー大注目のハレルさんですよね?」

 弓使いの子が言った。

 「大注目ってのは知らないがハレルだ。」

 大注目って何?

 「大注目とはぁ~バトルタワーのが注目のバトラーを○や◎で紹介するぅのでぇす。は◎の大大大注目バトラーでぇすぅぅ」

 メアリがいつの間にか背後に立っていた。

 「誰?!」

 弓使いの子、驚きすぎだよ。

 「メイド?のメアリだよ。」

 幼なじみ?同郷?まあメイドって言うべきなのかな。

 「何故に疑問形?!」

 驚きすぎを継続中。

 「まあ些末さまつな事はさておき、冒険者登録しに冒険者ギルドに行きたいんだ。歩きながら話そう。」

 ハレルは弓使いの女の子の左手を取って歩き始めた。

 「些末さまつ?!」

 弓使いの子はあまりに自然なハレルの行動に左手がしながらも普通に歩き出した。

 「えっと弓使いさんはなんて名前?」

 ハレルが聞いた。

 「あっすみません自己紹介まだでしたね。弓使いのコノカです。よろしくお願いします。でもどうしてパーティー承諾してくれたんですか?」

 コノカは聞いた。

 「パーティー勧誘は断らない主義なんだ。」

 ハレルは胸を張った。コノカは目をぱちくりさせた。

 「はぃ~はぁてけとーなこと言い出す事が多々あるーのなのでぇまともに考えると混沌カオスでぇす!」

 メアリ背後にいたのかよ。

 「頭脳明晰ずのうめいせきな私ハレルが適当てきとうな事など言うはずもないのです。」

 バシッ、ハレルはメアリにハリセンで殴られた。どっからハリセンが出現したのかは謎。


 そうしているうちに冒険者ギルドに到着し、ハレルは冒険者登録を行った。コノカはすでに冒険者登録しているそうだ。

 昨日、バトルタワーの受付でバトルの申し込みは部屋の端末からも出来るそうなので、部屋に戻ったら申し込もう。

 明日さっそくダンジョンに潜る約束をコノカとして解散した。


主人公ハレル ランクBF99 戦績2戦2勝0敗

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