岩が繋ぐ
俺は時々学校に行っていたが、話しかけてくる人は不自然な同級生ばかり。
「ちょっと遊ぼうぜ」
とか今まで声もかけたりしなかったやつが、声をかけてくるが、俺はあからさまに無愛想な対応をすると、もう声をかけてこなくなった。特に女子、普通なら絶対に話しかけてこないだろう人が話しかけてこられても逆に気味が悪かった。一人を除いては。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」
三枝 美沙。クラスですごく人気があるわけではないが、一部にはその包み込むような優しい性格に根強いファンがいる女子だった。
「なに?」
「おうちに岩があるってほんと?」
馬鹿にしてんのか、と俺は怒りそうになった。
「そうだよ、だから何?」
「あの……私——」
三枝は少し顔を赤らめた。
「岩、興味あるんだよね。もしよかったら……見に行ってもいい?」
またこうやって俺を馬鹿にする気か。まあ断ったら断ったでまた感じ悪いと言われても気分が悪い。俺はいいよと答えた。
てっきり集団で来るのかと思った俺は三枝が一人で来たのを見てびっくりした。
「ごめんね、突然」
「え、いや。全然いいよ。暇だし」
俺は部屋に案内し、岩を紹介した。どーん、と居座る岩を見ると三枝は顔をきらきらさせた。
「すっごい! ほんとに岩がある。どうやって運んだの?」
「いや、俺もわかんないんだよね。いきなりあった」
「へえ、ここが強盗から守った場所?」
「あ、そうそう、ここから入ろうとして入れなかったらしい」
三枝は少女のように目をきらきらとさせて岩を撫でていた。
「すごい、すごいよ。私感動しちゃった。寝る時はどうするの?」
「まあ、こんな感じ?」
俺はエビのように腰を曲げて寝て見せた。
「窮屈じゃないの?」
「まあ、慣れればそれほどでも。教科書なんかは」
俺は定規で漫画、教科書を取るところを見せた。
「すごいすごい! 技だね」
大したことしていないのに、なんか俺はヒーローになったような気になった。
帰り際、三枝は振り返ってこう言った。
「ねえ、また見に来ていい?」
「そりゃまあ、もちろんだよ」
三枝は目を輝かせて俺の家を後にした。
なんかその夜は、よくわからんけど興奮して眠れなかった。
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