スカルマスク ~グリーンヒルの超人~

セイン葉山

プロローグ スカルマスクショー

その土曜日の夜、緑が丘の街に何発もの花火が鳴り響いた。たくさんの人が夜空を見上げた。見事だ、派手な花火が輝いている。そろそろ時間か、みんな駅前広場に繰り出した。ライトがまぶしい駅前公園の特設ステージで司会者が高らかに開会を告げる。

「この街で生まれて今や日本のヒーロー、スカルマスク生誕40周年記念イベント第1部映画大会の幕開けでえす。ご来場の皆様、入場開始です」

わあっと盛り上がる観客、現在テレビで放映中の新作テレワーク戦隊リモート5(ファイブ)も上映後に出るというので、ちびっ子たちもどっと押しかけ、昭和や平成時代のちびっ子だったお父さんや二枚目俳優狙いのお母さんたちも声援を送っている。

昭和時代の懐かしのフィルム映像、スカルマスクの第1話と第2話が、ハイビジョン4Kのデジタル画質に焼き直され、最新のプロジェクト装置と立体音響でよみがえるのだ。

「すいません、イラストレーターの芽森時子と申します」

受付をやっていた東新映画のおねえさんに、メガネをかけた若い女性が名刺を渡した。

「芽森(めもり)さん?…あ、イラストマップを描いてくださった方ですね。すばらしいイラストですね。杉原もお礼をと申しておりました。そっちの取材席の方にどうぞ」

杉原というのはスカルマスクの当時の制作責任者で、今回のイベントプロデューサーの大物だ。40周年記念の美麗なイベントマップを渡されて、中央のなかなかいい場所に座る。同じ編集部の佐々岡さんは先に来て座っていた。まもなく上映だ。時子は、スカルマスクのことはこの街に来るまでよく知らなかったが、大人気の特撮ものだったらしく、まわりのおじさんたちが目をキラキラさせてスクリーンを見ている。

「ほう、あなた記者さん?この駅の東側に昔からの特撮の撮影所があってね。この街は撮影所とともに発展したんだ。しっかり取材していってよね」

「はい。40年たっても今でもすごい人気なんですね」

「うちなんか親子3代のスカルマスクファンだよ。ハハハ」

すぐに会場は真っ暗になり、昔懐かしい昭和のヒーロースカルマスクのテーマソングが流れだし、当時の映像が動き出す。

♪地獄の底からよみがえり、光とともに進む者、

悪の心が正義に変わる。地球の平和を守るため。

敵は不死身の怪人軍団、

倒しても、倒しても、奴らはすぐによみがえる。

ゴーズ、突進だ!

めーず、バイクに変身。

スカルスマッシュが悪を討つ

正義を貫け、スカルマスク

「うわああ、隅から隅までなんてきれいな画面なんだ。今の技術はすごいなあ」

「当時の焼き直しだけど、音質もすごい。重低音が迫力だ」

驚きや感動のため息があちこちで響き渡る。そして本編前のミニストーリーから始まる。

「22世紀後半、宇宙に進出した人類は未知の宇宙人や宇宙生物に遭遇し、いくつもの危機に見舞われていた」

画面では広大な宇宙空間、そこに現れる謎の円盤、怪生物の影が揺れる。

「若き宇宙刑事鷹峰剣斗(たかみねけんと)は今日も未知の宇宙人と戦っていた…」

宇宙船の中で、光線銃で撃ち合いする剣斗、不気味な怪人を二人倒し大活躍だった。だが後ろから何者かに撃たれて倒れ、気が付くと手術台、宇宙人たちに改造手術を受けていた。

ここでタイトル「第1話、スカルマスク誕生」

手術台の上で目を覚ます剣斗。だがなぜか顔ははっきり映らない。

「ここはどこだ…、おれは誰だ…。思い出せない」

するとそこに長いマントに身を隠す、黒い仮面の大幹部蜘蛛男爵タランテリスが現れる。

「おめでとう、手術は大成功だ。感謝したまえ。一度流れ弾に当たって死んだ君を我々がよみがえらせたのだ」

「俺は誰だ。お前は…」

「君の新しい名前かね?地球人類を闇に引きずり込む魔人、スカルマスクだ」

「魔人スカルマスク?!」

そのとたん顔が映る。不気味なドクロの仮面がはまっている。

そこでショッキングな音が流れ、不時着した悪の円盤から、ぞろぞろとガイコツに似たロボットスカルロイドの一個師団が下りてくる。先頭にいるのは鷹峰剣斗のスカルマスクではないか。蹴散らされていく地球防衛軍。響き渡る銃弾の音、次々と破壊されていく街、逃げる地球人、不適に笑うスカルマスク。

「フハハハハ、思い知ったか、地球人どもめ!」

前進するスカルロイド達。

「へえ、スカルマスクって最初は正義だけど、悪玉に改造されて地球に攻めてくるんだ」

思わず時子が本音をもらすと、近くにいたおやじたちが色々教えてくれる。

どうやらスカルマスクより先にデビューして、大ヒットとなった仮面ライダーやキカイダーなどと違いを出すために、

1;主人公は悪者として罪を犯し、その償いのために戦う。

2;敵の怪人は1話で1匹ずつ爆死したりせず、さらに強化改造されて2回、3回と再登場する。そのうち怪人も数が増えてくるが、怪人も勝ちや負けを背負って戦い、さらに怪人同士で争い、戦うことも少なくない。

「だからスカルマスクは敵にも主人公にも哀愁があるんだよね。そこがいいのさ」

やがてストーリーは進み、続けて第2話「地獄から来た男」だ。地球人を助けるために飛来した光の宇宙人、光の女王ギャラクシアによって記憶が戻った剣斗だったが、自分の破壊した街、傷つけた人々のひどい現状がわかって死のうとする。だが改造された体は簡単には死ねず、そこにハサミムシ怪人メガザスが襲ってくる。メガザスから助けた男の子の応援によって、スカルマスクの姿のまま地球人の味方としてまた、歩き出すのだった。そしてこの時やられたハサミムシ怪人メガザスはハサミを強力に改造されて再度、再々度と登場し、スカルマスクの初期の好ライバルに育っていくのだ。最後には敵を蹴散らし、空を見上げるスカルマスク。空には光の女王ギャラクシアの幻影が浮かび上がりスカルマスクにお礼を述べるのだった。

やがて盛大な拍手の中、上映終了。明るくなった舞台の上に、往年の鷹峰剣斗役の俳優、森崎吾郎がサプライズ登場。今もテレビや舞台で活躍中だが、60才を超えた今でも、とても元気で若々しかった。

さらに現在放映中の「テレワーク戦隊リモート5の二枚目若手スターたちが出てくるとお父さんに続きちびっ子やお母さんたちも大喝采だ」

リモート5は、レッドがテレワークおやじ、ピンクが引きこもりの女子高生、ブルーが半身不随の熱血空手チャンピオン、イエローが海外から参加の謎のブロンド美少女、ブラックがガンと戦う天才少年ゲーマー。5人が、リモート画面で自分の意識を飛ばし、5人の最強アンドロイドを操って世界の平和を守るという話で、特にがんと闘う少年ゲーマーがクールでかっこいいと大評判なのだ。さらに子供たちから歓声が上がる。リモート5のマスコットロボット、金魚のキャラクター、シスター金魚の人間体の着ぐるみが舞台に登場だ。長い尾やひれが、ユラユラたなびいて、動きもチャーミングだし、つぶらな瞳もとってもかわいい。

「それではイベントの第2部『スカルマスク対リモート5のアクションショー』と、グッズコレクション即売会は、明日の午前10時に駅ビルの前の特設ステージで開催します。そして午後2時からは、スカルマスクの新作ヴァーチャルゲームの公開イベントもついに大公開、同時開催のスカルマスクコスプレ大会もあるよ。商品も出るからふるってご参加くださいね」

そしてイベントは終わり、みんなヒーロー談義をしながら帰っていったのだった。

時子は写真やイラスト、インタビュー記録をまとめると、山側にある現在の家へと歩いて帰ったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る