第7話 薬草の都 ジョソウ編

リスタットを出発して3日

マオ達はジョソウまで辿り着いた


「これは……草だな」

「そうね…草ね」


ジョソウに近付くにつれ雑草の背丈が伸び、目の前まで来るとマオ達の肩程までの高さがあった。

それもこれも立派に聳えるそびえる薬草が原因だ


『神薬層 エリクラシル』


巨大な薬草が雲を貫き、目に見えるだけで数十枚の巨大な葉が生っている

ジョソウはこの巨大な葉の下層部分にある訳なのだが…


「お前こんなん見た事あったか?凄くない?葉っぱの上に街出来ちゃってるとかヤバくない?」

「言い方気持ち悪いわよ?でもそうね。1番上には上がってみたいわね!」

「うるせいやい!雲の上にも薬草生えてんのかなー?」


「さあねー。ここであんたの薬草勉強しに来たんだから頑張るのよ!張り切って行きましょう!」

「へいへい。んじゃ行きますか!」



根本まで行くと一つ問題があるが発生した


「これどうやって上に行くんだ?」


周りを見渡しても上がって行けそうな階段の類いはない

薬草の都の入り口らしきものも十数メートル程上にあるので普通には行けないようだ


それならばと2人は足に力を入れ、一足跳びに行こうと上に見える門らしき物に狙いを付けた


「おい、キミたち何をしている?」


ガサガサと背の高い雑草の中から兵士が現れマオ達に話し掛けて来た


「あ、いや。上への上がり方分かんなくってジャンプして行っちゃおうかなー…なんて、ははは」

「ジャンプ?」

「はい、ジャンプです」

「ここから?」

「そうよ」


簡単な問答をしている最中にもマオやユシアの上から下までをチェックしていたようだが、どうやら彼らの口が緩んでいた


「はっはっはっは!キミたちは見た感じ新人冒険者なのだろう?最初は皆んな壁を登ろうとしたり風魔法使ってジャンプしようとしたりするものさ」


40歳くらいのおじさん兵士はもう慣れているのか笑いながら根本に手を着き魔力を込めた


すると魔力を当てられた所からしゅるしゅるとツルが伸び大人数人が入れる程の檻の形となった


「うおおお!?どうなってんだこれ?」

「おもしろーい!なにこれえ!?」

「さあなあ?よく分からんが魔力に反応してこうなるんだよ。ささ、早く入ってくれ」


兵士のおじさんに促され、檻の中に入るとふかふかしているが足元のツルは思いの他頑丈だった


「おおっ」

「わっ」


数瞬後、足元を見ていると檻は上昇してマオ達は思わずビックリしてしまった


「はっはっは!初々しいねえ」


兵士のおじさんはクツクツと笑いながらも姿勢を正して2人へと言葉を送った


「ようこそ薬草の都ジョソウへ!ギルドは入り口左手にすぐあるよ!頑張りたまえ!」



檻から降り、アーチ状になっている入り口を潜ると目の前には一つの大きな葉の上にあるとは思えない光景が広がっていた


「うおおおお!すげー!この葉っぱほんとどうなってんだ!?」

「わあ!ほんとに一つの街ね!凄い凄い!」


キョロキョロと周りを見渡しているとクスクスと行き交う薬草の行商やら冒険者に笑われ、多少の恥ずかしさを覚えた2人は早速入り口左手にあるギルドへと向かった



「ようこそ薬草の都ギルドへ!どのような依頼をお受けになりますか?」


緑髪金眼の綺麗なお姉さんが受付で出迎えをしてくれた


「リスタットからこの依頼を見て来ました。受けるのはこっちの方なんですけど…」

「はい……薬草採取ですねえ。では登録証の提示をお願いします」


マオが登録証を見せると受付のお姉さんは少し難色を示していた


「うーん…」


「どうしたんですか?」

「あ、はい。これは確かにSクラス冒険者さんでも可能な依頼なんですけどここの薬草採取は少し特殊でして…」


お姉さんによればここは他とは違い、魔獣を倒さなければ手に入らないそうだ

しかも魔獣の種類によって手に入れられる薬草も変わってくるとの事


ここではその事を魔獣からの「ドロップ品」と呼び、時間が経つと無限に湧いて出て来るのでたまに掃討依頼も出していると…

今回は掃討依頼を出す規定の少し手前まで魔獣が増えているみたいなのでSクラスのマオ1人で受けるのは少し心配なようだ


「なんっ…だと……」


マオはガクリと肩を震わせて下を向くと受付のお姉さんは優しく宥めてくれたが…


「大丈夫ですよ。魔獣自体は単体だと弱いですし、ヒットアンドアウェイで時間は掛かりますが」


「なんてボロい依頼なんだ!楽勝ではないか!ふははは!!」

「あのー?」

「…はは?」


楽勝だと思って笑っていた所に後ろから控えめな声で声を掛けて来た女性がいた


「突然すみません。宜しければ私もその依頼ご一緒しても宜しいでしょうか?」


モコモコと綿の様な白い髪に赤い瞳、モジモジと指遊びをしているがどうやら同じ冒険者らしい


「も、申し遅れました。私フワリ・シプルと…申します。それと…」


ささっとフワリ・シプルの後ろに隠れて顔だけをこちらに向けているのは娘のモコモ・シプルと言う


「フワリさんこんにちは」

「こんにちは。ほんとに突然ですみません」

「いえいえ。大丈夫ですよ。モコモちゃんは今日もこちらでお預かりしますよ」


「ふん?フワリさんと組んで依頼受ける事になったの?」


マオはどっちでも構わなかったがどうやら飛び入りでフワリ・シプルも薬草採取に参戦する事になったみたいだ


「フワリさんはBクラス冒険者なので、こちらとしてもご一緒していただけるなら安心ですねえ」

「おお!Bクラス!」

「い、いえ。大したものでは…でもご一緒してもほんとに宜しいのですか?」


「問題無いよな?」

「むしろ、色々勉強になるんじゃない?ありがたいお話しね」

「では、お2人が採取依頼を受けると言う事でいいですか?」

「ほーい」

「はい!」


依頼の細かい内容をマオとフワリは受け、ギルドを後にしたのであった

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勇×魔 刃と肉 @jin463419

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