第3話 始まりの国 リスタット編

「私は昇格など必要ありませ」

「おおっと!リーン・ネイトよ、勘違いをしていないかね?」

「勘違い…でしょうか?」


「そうd」

「あくまでも罪を犯した事に対しての罰なのだー。今回は罪の内容に反して功績が大きくなっただけであり、罪人なのは変わらないのだ…ってか?」


俺はニヤリと笑っておっさんに言い返してみるが、ワナワナと震え始めたぞ…気持ち悪いな


「大罪人 アーラ・ディアス…貴様の罪は永劫許されはしない。世界を渡り生きていたばかりか、この私の口上まで阻むとは」

「その名前は捨てたはずだぞ。寧ろ記憶も力も捨てたはずなんだけどな。どうやら転生魔法に失敗したらしいね」

「はっはっは!悪の化身が何をしようと中途半端に終わるに決まっているではないか。しかしこうやって貴様は自ら裁かれに来た!私が審判してやろうではないか」


むっか


「やほ!レフルのおじちゃん!」

「やあリトルディア・ユスティーナ。ここに来たと言う事は決心はついたのかい?神界は喜んで君を歓迎しよう」

「ええ?その名前はもう捨てたわよ。それにまだ私やりたい事もやらなきゃいけない事もあるからやだなー」


「っおーい!なんだこの態度の違いは!」


「はっはっは。セプタ様は心待ちにしておられるが人の生など瞬きが如く終わるモノ。どうやって私を掻い潜ったのかは分からないが…まぁ良しとしよう」

「?、なんの話しか分かんないケド良いならいいわ」


俺をお構いなしにおしゃべりを始めた2人はどうやら仲が良いらしい

リーンも空気になってしまったクラマもキョトンと2人を見つめてるよ



「さて、リーン・ネイトよ。執行の時は来た」


ひとしきり話して満足したのかレフルと呼ばれた金髪のおっさんはリーンに向かって偉そうに語ってきた


「…私は……」

「神格が低い君にはどうにも出来ないがね。そこの無知蒙昧なる人間にさよならを告げなさい」


「……」

「…リーン」


顔を俯かせて僕の前に立った彼女はいつもの元気も人懐っこさも無く…


肩を震わせて泣いてた


「ごめんなさい」

「リーン?」

「ごめんなさい。私が弱くて」

「な、何を言ってるのさ?これから2人で強くなっていけばいいだけ!そうでしょ?」

「……ごめんなさい。勝手に転生させて、勝手に貴方を好きになっちゃって、勝手に罪まで犯してしまって……短い間だったけど貴方と居られた時間はきっと封印されても忘れないわ」


「リーン?…リーン!」


そう言ってレフルの元に行く彼女はとても悲しそうで…


「ふむ?どうしたのだね?無知蒙昧なる人間よ?」


僕は気付いたらレフルと言う人の目の前に立っていた


「僕のリーンを奪われてたまるか…」

「うん?」


先程のフイラーノのは違った威圧感で声が霞んでしまったケド…やってやる


「どうしたのだと聞いているのだ。羽虫の囀りが聞こえるとも思えないが?」

「僕のリーンを奪われてたまるかぁ!!!」


勢いのままにレフルの服を掴もうとしたけど、触れた瞬間に大きく弾き飛ばされてしまった


「っぐう」

「クラマ!!」


「ふはははは!私は神!君のような存在がどうにか出来るモノではないのだよ。さぁ準備は良いかね?」


「ぐすっ……んくっ。やっぱり…」

「なんだね?」


「やだよお。クラマと一緒に生きたいよお」


「何だそんな事か、諦めるのだな。そろそろ次もあるのでな。では」


ポロポロと涙を流す彼女は成す術はなく、出来る事は封印される最後までクラマの側にいる事だけだった


封神監獄デウスフォール


レフルがそう唱えるとリーンの体は光り、粒子状に消えて行く…


かと思われたが


「何っ!?何だこれは!?」


何度唱えようとも彼の魔法は彼女に当たりその都度効果は発揮しているようだが、一向に彼女自身に効果は現れない



全くコイツらは抱き合う事が好きらしい

いや

好きだから抱き合ってるのか?

ふーむ

前世の年齢プラス現在の年齢=女いない歴の俺にとっては難解な問題のようだ


「あはは!たかだか神の使いっ走りと人間の恋路を邪魔するとは最低な神だねえ」


「貴様の仕業かあ!!私はもちろん裁定の神であるが故に審判を下す事こそが正義。そしてそこは貴様が座って良い場所では決してない!」



俺は待ち望んで居たのだろうか


平穏な生活を暮らして平穏にくたばって行くタマではないらしい

俺自らの人生を彩る最初のピースが今完全に埋まった気がする


「まぁまぁ落ち着きなってこれからg」

「大罪人如きが座って良い場所ではないのだ!!そうだ、決めたぞ!貴様は今!この場で!私がやろう!!」


「…あぁ。。。言っちゃたね?」

「なに?」


これで完全に舞台も整った


ピュルンッ


風をしなやかな物が切る音がした瞬間にレフルの目の前の地面が爆ぜた


「ゴホッゴホッ。何なのだ一体!!」


地面の白のモヤの中コツコツとあいつはレフルの前へ行った



「ねえおじさん?」


「ん?ああ。リトルディア・ユスティーナか。今から私はあの大罪人を」

「それは出来ない相談ね。それと今はただのユシアよ。忘れないで」

「……何だと?」


現戦乙女セプタ様のお気に入りの次代戦乙女候補とはいえ

正義に加担する事を断るだと?

こんな事があっても良いのか


否!


そんな事はあってはならん!

私に向かっての不遜な態度も気に食わない


ふふふふ…


ならばここは一つ私が教化を施してやろう

灰色などは無い

白か黒で完全に仕分ける公正なジャッジメント

きっとセプタ様もお喜びになる事だろう




「うわっ。なんか1人で笑い始めたぞあのおっさん。気持ち悪っ」


「マオぉおおおおお!あ、あぁりがどおお」

「びぇええええ!グラマぁああ!」


「いやいやいや。お前らも大概だな」


ユシアの狂犬スイッチが入った後すぐに2人を回収して、今はパイプオルガンの椅子に座ってる俺の足にクラマがしがみつき、クラマの後ろにリーンがしがみついて号泣している


何だコレ?


「あ、いや。ナメクジに流す涙なんてないですからね?……グラマぁああ!びぇええ」


ピキッ


「やっぱりお前封印されたほうがいいんじゃねえかなぁあ」#


そんな元気があるならもっとおっさんに抵抗していいと思います

全く現金な女だぜ


さてそれよりも…


「さあユシア!!楽しい人生の門出だぜ!シンフォニアの序曲は俺に任せて貰おう」



〜♩


「ふふふ。隠し芸なんてなかなかやるじゃない」


耳障りのいいお腹の底に伝わってくる重厚な調べが響き渡る中、顔を真っ赤にして「弾くな」だの「罪の更なる上塗り」だのとやいのやいの騒いでるレフルおじさん


確か会った時はあの化け物を倒す前だったかな?

あの頃はもっと色んな事に対して寛容だった気もするんだけどな

…私の目線も変わったのかしら


「レフルおじさん?そろそろ始めましょ?私お腹空いて来ちゃった」

「全く私が貴方の進む道すらも正さないといけないとは……」

「正す?」

「そうだよ。君は大罪人を滅する事を嫌っているようだからね。だから私が善と悪を教えてあげようと言っているのさ」


何を言ってるのかしら?

おじさん遂に壊れちゃったのかしら

私はいつだって自分の正義を信じるわ

マオの事だって


「……ふふふ」

「どうした遂に神である私が怖くなったか?」


「いえ?おじさんはおじさんでしょ?何だかイライラしてきちゃって笑ってしまったの」

「イライラして笑う…?」


「ええそうよ。私のを狙う奴は誰だってボコボコにしてやるわ」

「獲物…?」

「あいつを斃すのはこの私っ!他の誰にも譲ってやらないんだからぁああ!!!」


ユシア式 勇輝百刄ユウキヒャクバイ


ユシアが中腰になり踏ん張る姿を取ると周囲の漂っている魔力を取り込み、数瞬後には空間の維持していた魔力も取り込み始めて白い空間にはヒビがそこかしこに伸びていく


「お、おぉ。リトルディア・ユスティーナよ。少し話しをしないかね?」


バチバチと蒼白い雷光がユシアから漏れ出し、自慢の尻尾の様に纏めた緋色の襟足もユラユラと揺れ、澄んだ翡翠の鋭い眼孔はレフルに狙いをつけた



「却下ね!時間も無いし速攻でノしてやるわ!」


「…どうやら私は虎の尾を踏んだようだ」


「いっくわよぉお!!!」

5分後…


ボロッ


「ほ、ほうひはへほはひはへんへひは…」


「うーわっ。えぐっ」

「僕ユシアさんだけは決して怒らせないって固く心に決めたよ」

「レフル様…」


ユシアがレフルを問答無用でボコると3分もしたら床とキスを奴はした

気絶していたが2分程で目を覚ました

流石神

耐久力はそれなりか


…まぁそもそもがその3分間は倒れる事も許されずにガードの上からでも受け止めた瞬間に発生する衝撃波は障壁でも張って無ければ貫通して直撃する


アレは痛かっただろう



「あー!!スッキリスッキリぃ!」


元凶は余程スッキリしたのか最早レフルに興味も無いようだ


「おい。最低の神」

「は、はひ。。」

「コレだけは言っておくぞ」


「………」ゴクリ



きっと大罪人って言われて怒ってるのかな?

何か言われてる名前も違ってたし

後で聞いてもいいやつなのかな?

いつになく真剣なマオは

何を言うのだろうか



「おめえ程度の三下じゃウチの狂犬に勝てる訳ねえだろ!!今度またくだらねえ事言ってみろ?また狂犬差し向けてやっからなあ!?」



………


余りにも衝撃的な発言に5人の時が止まってしまった



ゲシッ

「なんですってぇ!?」

「いだ!?」


ゴスッ

「ぐはっ!?」

「ナメクジ野郎はほんと最低ですね。ユシアにさっさと滅されて下さい」


そこから更に数十秒間ユシアとリーンによる無慈悲なリンチによってマオの姿もレフルさんとそう変わらなくなってしまった


ボロッ

「ちょ、調子こきました!ごめんなさい!」


「ふん!分かれば宜しい!」

「地べたに頭を擦り付けてこの程度で終わらせてくれたユシアに陳謝しなさいな」


「…ぐぬぬぬ。。泣き虫野郎が好き勝手しやがって」


ぎゅむっ

「あ゛ぁ゛ぁん゛?陰気な所にお住まいのナメクジさんは現状を理解しておられないと?ユシア師匠。お願いします」

「なっ、なにっ!?師匠!?もういいわよ。スッキリしたし、帰りましょ?」


「お優しいのですね!お師匠様!私とクラマは一生着いて行きますわ!」

「え?ぼっ僕もかい!?」

「この際秘密は無しですわ!ユシア様に特訓して貰えばクラマも異世界生活が充実する事間違い無しなのです!」

「特訓?異世界生活充実?」

「まぁまぁこんな壊れそうな空間にいるよりもリスタットのお食事処にでも行って今後の方針を決めましょう?」

「え?…え?ちょっとマオ!あんたも早く来なさいよ!」

「…ユシアはちょっとナメクジに優し過ぎですわ」

「いやいや!確かにさっきはマオが悪いけど元々マオとユシアはコンビだからね?リーンももう少しは優しくしようね?」

「ぐっ!?……ほ、ほらあ。ナメクジも一緒に帰ってくれ…てもいいんくないですのよぉ」

「リーン余り言い方変わってないよ?でも、確かに4人で旅するのも楽しそうだねえ」



空間が崩壊して行く中で出口に向かう3人

《前》とは全く違う環境でユシアと2人でもそれなりに楽しかったが…


4人なら更に楽しそうだ


「よし。俺も帰るか。おいレフル」

「はひ」


「今日からこの先あいつらにコソコソと何かやってみろ?その時は」

「……」


殺しちゃうぞ?


「ひっ!?」


「さっ!俺も帰るか!おーい、待てよクラマー!晩飯奢るって約束だぞー」


レフルを残して4人は無事に白い空間から脱出し、無事にジョバンノ遺跡からリスタット国への帰路に着くのであった

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