第7話 白きアサルトフレーム
◇
『ちぃっ! 何という装甲だ。普通の
『どうします? もう一度ミサイルをぶち込んでやりますか?』
『バカが! Dフィールドがない状態で多連装ミサイルが直撃すればあの頑丈な機体でも大破しかねん。それではあれが私の物にならないだろうが。少し考えれば分かることだろう!!』
『す、すみません……』
表向きは平静を
その時、突然<タケミカヅチ>の動きが止まる。
『動きが止まった? 機体が無事でもパイロットが音を上げたということか? ならば全機接近してコックピットのみを破壊しろ。その程度の破損であれば修理可能だ』
『『『了解!』』』
三機の<ゴブリン>は腰部からビームダガーを取り出すと短剣型のビーム刃を発生させ<タケミカヅチ>を取り囲む様にして接近してくる。
その狙いはコックピットに絞られ三機は同時に襲いかかった。
『パイロットの戦意レベル上昇。増加装甲
この場にいる誰もが決着がついたと思った瞬間、<タケミカヅチ>の全身を覆っていた増加装甲が弾け飛ぶように排除され<ゴブリン>三機に激突した。
思わぬ反撃に遭いそれぞれダメージを負って距離を取る。その眼差しの先には増加装甲を排除した際に発生した煙に包まれる<タケミカヅチ>の姿があった。
『何だ……? 装甲が吹き飛んだだと? まさか、あの装甲はオプション装備だったのか。それじゃあ本体は……』
煙の切れ間から白い装甲が見え隠れする。
その頭部では額のサブカメラユニットを基部として左右と頭頂部の後方に折りたたまれていたブレードアンテナが前方にせり出し三本角を形成した。
戦闘態勢が整うと煙の向こうで深紅のデュアルアイが発光する。その姿はまるで怒りをたぎらせる武人のようであった。
『こいつ……!』
<ゴブリン>がアサルトライフルを撃つと標的には当たらず煙を霧散させる。ロックオンしていたはずの機体は遙か上空へと飛んでいた。
『一瞬であんな高度まで上昇したっていうのか!?』
『あれは……白いAF……だと?』
空を舞うAFは重い装甲から解き放たれ本来の白い装甲を纏い深紅の両目で下方にいる敵機を睨み下ろす。
その殺気溢れる姿を前にして恐怖に駆られたAF達は、照準が定まらないままライフルを撃ち続ける。
真の姿を現した<タケミカヅチ>は、スラスターと各部バーニアを巧みに操って無数の弾丸を回避しながら降下すると、一番近くにいた<ゴブリン>の前腕を掴み肘関節をねじ切り殴り飛ばした。
『ぐああああああああ!! こいつ何てスピードだ。さっきまでとは動きが違う!』
<ゴブリン>のアサルトライフルを奪い装備するとコックピットに武器情報が表示される。
『増加装甲強制排除に伴いオプション兵装使用可能になりました。リミッターにより内蔵式ウェポンは使用不可を維持』
カナタはためらうことなく操縦桿のトリガーを引いた。
<タケミカヅチ>は構えたアサルトライフルを発砲し、近くにいた<ゴブリン>のDフィールドを貫通、その頭部を破壊した。
『ああっ、メインカメラが……やられた!?』
頭部のメインカメラが壊されコックピットモニターが異常をきたすとパイロットは恐怖の声を上げる。
その隙に<タケミカヅチ>は接近すると敵機の残った前腕を握りつぶしビームダガーを奪い去った。
『ビーム出力兵装を入手しました。バイパス開放、ジェネレーターからエネルギー伝達開始。兵装の破損を防ぐためエネルギー流入量を四十パーセントに制限します』
モニターの不調が回復した<ゴブリン>がスラスターを噴射して後方にジャンプすると<タケミカヅチ>はそれ以上のスピードで食らいつきビームダガーで敵機の両脚を斬り裂いた。
バランスを失った<ゴブリン>は地面に転がるように落下し、パイロットはコックピットから脱出すると悲鳴を上げながら逃げていく。
攻撃を続けながら一部始終を見ていた他の<ゴブリン>パイロットはその性能に驚きを隠せないでいた。
『何だ今のは……ビームダガーとは思えない出力だったぞ。並のビームソードを上回るビーム刃が出ていただと……』
『それってつまり機体のジェネレーター出力が段違いってことですか? まさかあの機体……噂で聞いたことのあるシャーマニックデバイスなんじゃ……』
『だったら何なんだ? むしろシャーマニックデバイスであるのなら好都合だ。そんな強力な機体を手に入れることが出来たのなら、趣味と実用を兼ねたこの狩りをもっと楽しむ事が出来る。――そうだろう?』
<レッドキャップ>のパイロットはコックピット内で口角を上げて不気味に笑う。その凶器に満ちた眼光をモニターに映る白いAFに向けて舌なめずりするのであった。
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