第百話:資源探索(鉱物編)・Ⅳ
「ふーはっはァ! モンスターか! しかも、鉱物を食べることに進化した
「よし、なら私たちの――」
「いや、既にここは洞窟の中だから。あまり暴れられる環境でもない。ここまでの道程で疲れただろう、ここからは俺様たちに任せるがいい。――というわけで行け! ファーヴニルゥ!」
「ってお前はいかないのか!?」
「その方が早いしな。あー、ファーヴニルゥ。周囲にはあまり刺激を与えないように。生き埋めにはなりたくないからな」
「うん、わかったよマスター!」
洞窟の中に入ったディアルドたち一行、当然のように洞窟の中にもモンスターは居るわけで彼らは襲い掛かってくるのだが、それはファーヴニルゥの蹂躙によって無力化されていく。
「あんなにあっさり切り捨てるなんて……硬くて大変な思いをしたのに」
「僕が小さいけど傷を作って姉上がそこをついて一気に倒すって戦い方をしていたのに。ファーヴニルゥ様、凄い……っ!」
「くっ、アリアンの尊敬の眼が……眼がぁ……」
「まあ、あれだ。頑張って修練とかに励め、な?」
鉱物系のモンスターの特色として高い防御力が挙げられる。
鉱物を摂取することで強固な鱗や甲羅、外皮などを手に入れたモンスターたちはやたら滅多らに硬い。
反面、重量があって動き鈍い傾向にあるという特色もあるが……まあ、その話は置いておくとして。
とにかく、鉱物系のモンスターは高い防御力を有し、討伐難易度が200後半ともなると魔法耐性も中々なものになってくる。
途轍もなく厄介なモンスターだ。
それが余程に良質な餌場なのか洞窟内を進む中で三体ほど現れ――全員、ファーヴニルゥの迅速な一振りで唐竹割りにされてしまった。
スパンっといった感じで綺麗に。
ロゼリアたちの反応はそれを見てのものだ。
まあ、ディアルドの見立てからしてこのレベルとなると二人では有効な攻撃方法はないだろう。
それでも戦い方次第では勝ち目はあるし、ロゼリアたちの経験を考えればディアルドとファーヴニルゥという助けに入れる同行者が居るなら戦わせるのもありだったかもしれないが……。
(ふーはっはァ! そんなことより、早く奥に行きたい!)
彼は今とても自らの欲に支配されていた。
金、金の匂いがする。
それもとても大規模な。
ディアルドの勘が囁いているのだ。
「よし、もうすぐ先だな。確か話によれば進んでいくと大きな空間に出られるはずだが――」
ウキウキとした気分で奥へと歩いていき、遂に彼は辿り着いた。
「こ、これって……」
「ああ、ついに見つけたぞ」
そこは洞窟の奥でありながら不思議と明るい場所だった。
天井の一面が透明度の高いクリスタルのようなもので覆われており、その中から淡い光が放たれ洞窟内を照らしているのだ。
そして、当たりを見渡すと数多くの鉱石が露出した壁があった。
「これはモンスターが食った跡か?」
「恐らくはな、ここがやつらの餌場らしい」
「でも、餌場と言うならモンスターはどこに……」
「道中でファーヴニルゥが倒したモンスターがここのボスだったんじゃないか? 強そうなやつだったし」
「ボス……いや、確かにそうだったな。全部一撃で倒してしまったから感覚が狂っていたが、洞窟の外で私とアリアンが戦ったモンスターよりも遥かに強そうなモンスターだった」
「手下が居たとしても逃げ出しちゃったってことですか?」
「そういうことなのだろう、実際に居ないのだから。そんなことよりも重要なのはここだ。――≪
「ダズマ鉱石?」
「とても希少な鉱石だ。王国では格式の高い鉱石でな、美しい色合いと質感があって王宮を作る際にも使われている」
「詳しいですね」
「ダズマ鉱石は南西の鉱脈でしか見つかっていなくてな、それで高値がついていて密輸を――まあ、それはいいじゃないか」
「おい、今何を言おうとした?」
「――≪
「あっ、それは知っています。とても頑丈で高い武具や防具によく使われる奴ですよね」
「ふーはっはァ! その通りだ、アリアン。騎士や冒険者にはとても身近なものだ。つまりは需要がとても高いということでもある。売ってもいいし、うちの領内で使うにもいい。扱い方も知られていて使いやすい。それから――」
ディアルドとアリアンはとても楽しそうに鉱石を見つけ、あれやこれや言い合っている。
その様子を少し離れてたところから見ていたロゼリアはファーヴニルゥへと問いかけた。
「なんか楽しそうだな。私としてはあんな石ころで一喜一憂する感覚がわからないんだが……。いや、資源は大事という感覚はわかるのだが」
これを使って何を作ろうかとか、あれも作れるんじゃないかとか目をキラキラさせて話し合っている光景に彼女は上手く乗れなかった。
目を輝かせているアリアンは可愛いなーとは思っていたが。
「男の子ってそういうものが好きらしいよ。もの作りとか人にもよるらしいんだけどね。嵌る人はとても嵌るみたい」
「そういうものなのか……」
「僕としてもわからなくはない感覚だけど、とりあえずマスターが嬉しそうならそれで満足だよ」
「お前はそうだろうな」
自身のお手柄であるという、自負の有るファーヴニルゥはどこか自慢げに笑みを浮かべディアルドたちを眺めていた。
「あと、他にも宝石の原石とか……」
「原石ですか。加工とか大変そうですけど」
「まあ、そこら辺は任せればいいだろう。とりあえず、大雑把にだがここの調べは出来た。細かいところは――アリアン、起動させてくれ」
「あっ、はい。それではよろしくお願いします」
そう言ってアリアンは鞄から金属製を塊を取り出すとじめんに放り投げた。
するとその塊は地面とぶつかる前に魔法陣を発生させたかと思うと、変形しまるでくものような方に変わり――そして、動き出した。
ファーヴニルゥはそれを見て浮かべていた自慢げな笑みをひっこめた。
〈――探査ドローンの起動が確認されました〉
「ああ、ヤハトゥ。例の地点に着いたんだ。周囲の地層の細かい調査を頼みたい」
〈――回答します。了解しました、我が主〉
ディアルドがアリアンに持たせていた金属製の物体はヤハトゥの魔導探査ドローンの一種であった、見つけたところで詳細な広域調査が出来なければ活用は難しい。
鉱脈を見つけたからと言って、設備も整えて景気よく掘っていたらすぐに枯渇してしまいました――では笑い話にもならないからだ。
「わかるけどさー」
「はいはい、ほら拗ねるな。ここの発見がお前の手柄であることは間違いないのだからな」
「そ、そうだよね!」
〈――同意します。ファーヴニルゥによる貢献のお陰だとヤハトゥも評価します〉
「ふーん、キミもまあわかっているようだね」
〈――回答します。はい、発見についてはファーヴニルゥの貢献であるのは間違いなく。残りの調査や管理など、我が主へのサポートはヤハトゥが引き継ぎますので〉
「あ?」
「ええい、メンチを切るな。メンチを……。それでどんな感じだ? ここらの地層は」
〈――回答します。良質な地層であるのは間違いなく、更に複数種の鉱石の鉱床を確認。量もかなりのもので当初の目的だった城の建設には今確認できている分でも十分すぎるほどです〉
「思った以上の資源の豊富さだな」
〈――回答します。地層深くで山脈との地下水脈が繋がっている可能性があります〉
「それ故にというやつか。まあ、豊富な資源が領内に見つかったのは良いことだ」
「しかし、今更いうのもアレだがどうやって運ぶんだ? 採掘は出来るんだろうが……」
「それについては解決策がある。≪
「えっ、でも今の≪
「ああ、それは一回解除する。イリージャルへの行きが多少不便になるが……どのみち、今は立ち入りを制限しているからな。入れるのと言えば子爵は当然として、俺様とファーヴニルゥ、ワーベライトとあとはアリアンぐらい」
「なぜアリアンはよくて私は……」
「あんま必要じゃなかったからなぁ……まあ、それはさておき。情報のやり取りだけならこうして中継を挟めばヤハトゥとも取れるし、すぐに困ることはないだろうと思ってな。こことルベリティアを繋いで建設に必要な量は採掘してすぐに持ち込む」
「なるほど……。本当に便利な魔法ですね、≪
「ついでに簡単な加工に必要な設備も整えようかと思ってな。出来そうなのはそっちでやる」
一番簡単なのはイリージャルに持ち込むことだが、先のことを考えれば金属加工や精錬技術などの技術を磨いておくのは決して損ではないとディアルドは考えていたからだ。
「なるほど、そういうことでしたか」
「ふーはっはァ! これから忙しくなるぞぉ! やることは一杯あるからなぁ!」
彼の目からすれば宝の山にしか見えない鉱石の山を見ながら、これをどう使ってやろうかと妄想を楽しんでいたディアルドであったが――次の厄介ごとはすぐ傍まで迫っていた。
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