外伝 第九話:ファーヴニルゥ日記 その⑧
■月■日
≪カルヴァノ・ブラスト≫、≪カルヴァノ=ブラスト≫、≪カルヴァノ=ブラスト≫――
今日も元気にラグドリアの湖に≪カルヴァノ=ブラスト≫を撃ち込む。
それだけで大量の魚とモンスターの死骸とかが浮いてくる。
あとはそれを回収させれば食料や素材が手に入る。
実に楽でいい。
マスターはまたエリザベスと顔を突き合わせて魔法を作っている。
潜水用の魔法を作っているのだとか。
僕は色々と規格が違うのでそういった点では助けにならないので素直に良いなぁと思ってしまう。
別に僕に仕事が無いというわけでもないのだけど。
■月■日
マスターから秘密の
どうにもラグドリアの湖での僕たちの活動を監視している存在が居るらしい、言われ少し探索領域を広げると確かに僕たち以外の人間がいた。
マスターは彼らの正体と目的におおよその予想がついているらしく、それにどう対処しようか悩んでいるらしい。
手っ取り早いのはさっさと僕が制圧することだけど、彼らの背後にある存在のことも考えると後々面倒なことになりそうなのだとか。
彼らの正体は恐らく隣国のアスガルド連邦国の関係者で、目的はマスターと同じく魔導機兵ファティマに関すること。
出来れば上手く利用したいらしい。
それで僕にだけ相談……そう、僕にだけ相談してくれたというわけだ。
相手の出方を窺って対応を決めるつもりらしいけど、場合によってはやはり強行策に出る必要があるかもしれない。
その時に信頼できるのは僕しかないと。
うんうん、その通りだよ。
僕はマスターの剣なのだからその判断も当然と言えば当然だね。
最後に頼りになるのはやっぱり僕なんだ。
魔導機兵ファティマなんて所詮は言われたことしかできない玩具のようなもの、最初から気にする必要なんてなかったんだよ。
■月■日
ムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつくムカつく――――
……とりあえず、少し発散出来たかな。
落ち着いたような気がする。
一先ず、今日あったことを順番に書いていこうと思う。
今日は色々なことがあった。
まず、最初に起きたのは湖の底からある存在が現れたことから始まった。
後に「燎原のファティマ」という魔導機兵ファティマの技術を使い、帝国崩壊後に出来たある国――今のルベリ領の東の一帯を支配していたエーデムベーという国が作ったとされる大型魔導兵器だとわかるのだけど、その時の僕たちはそこまで詳しくわかっていなかった。
いつも通り、日課になり始めている≪カルヴァノ=ブラスト≫を湖に叩き込もうとしたら急に現れたのだ。
完全に正体不明だった、僕たちが知っている魔導機兵ファティマとは姿かたち、大きさも全然違っていたからね。
それでもマスターは流石だった。
状況が分からないなりにも考察して湖の底にあると推測していたイリージャルの防衛システムかなにかではないかとすぐに察していた。
実際、この推測が正しかったことは後に判明することになる。
僕の≪カルヴァノ=ブラスト≫を攻撃だと認識して起動したらしい。
情報がない中でそれを言い当てたマスターはつまりは天才だったということだ。
一先ず、僕にそれをやるように命じたのはそのマスターだったということは脇に置いておくとして……そんなこんなで僕たちは「燎原のファティマ」と戦う羽目になったわけだ。
予想外の展開ではあったけど、おおよその強さは魔力反応から推察できた僕には余裕があった。
総合的に見てあの時点での「燎原のファティマ」の戦闘力は、前に戦った
そう僕が進言すると少しだけマスターは黙考し、一つの作戦を思いついた。
それは現れた「燎原のファティマ」の利用して、僕たちを監視している連中を引っ張り出そうというものだ。
さほど、難しいではない。
監視している連中と僕たちが探しているものは同じはず、なら僕たちが着々とラグドリアの底の探索を進めている様子を見るのは内心焦っていたはずだ。
だが、彼らが強行的な手段に打って出ないのはマスターや僕、ルベリたちが居るからだろう。
なにせ彼らも頭を悩ませていたであろう
二の足を踏んで決断できなくてもそれほどおかしくはない。
だからこそ、あえて捕まえる隙をつくることをマスターは思いついた。
いきなり現れた「燎原のファティマ」を利用し、多大なる魔力を消費して勝利した――という展開に見せかける。
彼らからすれば僕たちを襲撃する絶好の機会であり、ついでに僕よりは弱いとはいえ強大な兵器である「燎原のファティマ」も手に入るという状況。
動かない、という選択肢はないだろう。
というか、そんな状況を作っても監視にとどめるような相手ならマスターからすれば怖くないもない相手、後々でどうとでもなる……とその時のマスターは考えたらしい。
実際、マスターの読みは当たって彼らは僕たちを捕まえに来た。
あえて捕まって利用するという手段はとてもリスクの高い手段だけど、それは一緒に捕まった僕への信頼の裏返しともいえる。
何かあっても僕が居れば安心だとマスターが思ってくれているからこそ、こんな作戦を思いついて実行できる。
その信頼の答えなければならない。
僕の有用性を証明できるいい機会だと僕は内心でやる気満々のまま捕まっているとまたもや予想外の方向へと事態は動いていった。
始まりはイリージャルが浮上してきた際に放たれた信号、それは帝国軍が使用していた回線で僕に所属の照会を求めるものだった。
イリージャルの予想外の大きさに何か動きがあればすぐにマスターと共に退避しようと警戒していた矢先に起きたことで、僕は最初こそ悩んだものの最終的には返信することにした。
向こうはただ照会だけを求めているだけで、それ以上のことを求めているわけでもなかったし、変に拒否した結果相手が攻撃的になられても困ると僕はそう判断した。
その判断は決して間違いではなかったはずだ。
結局のところ、それが決め手となってマスターはイリージャルを手に入れることが出来たのだから。
そう……間違ってはいなかった。
うん、それは間違いない。
だって、マスターにも褒められたからね!
それはそれとして――我が主……だって? 僕の……僕のマスターなんだからなぁ!
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