第148話 俺の家に集合

 その日の昼休み。

 俺のともだち?も、沙織の友だちも、二人を残して教室を出て行った。

 昼食は二人で行きなよ、じゃまはしないよってことかな。


 俺は沙織と二人だけで、食堂で昼食を摂ることになった。

 周囲にいる知らない人たちは、他のクラスの生徒や、上級生や、下級生だろう。

 緊張がゆるんだ俺達は、並んで座ってランチを食べながら、ラシアとパーチンについて話していた。


「聞いたか、沙織。

 パーチンが国民向けに演説して、特別軍事作戦の決定に誤りがあったと認めて、エクライナから軍隊を引き上げると言ったらしいぞ」


 沙織はうんと頷いた。

 さっきは何も言ってなかったから、2限か3限の休み時間に、友だちから聞いたのかも知れない。


「あんなこと、本物のパーチンが言う訳ないよね」


「俺もそう思う」


 沙織が声をひそめて言った。

「あの、ピーターじゃない」


「そうだよな、フライたちから聞いてなかったけど、

ピーターの家族も救出したんだし、恐らくパーチンはフライ達が捕らえた筈だから、影武者ピーターが入れ替わったっていうことだよな」


「それ、フライに確かめようよ。

 しのぶにも連絡するから、学校終わったら、コウタの部屋に集合することにしない」


「それは良いけど、恥ずかしいから、別々に帰って、夕飯も勝手に用意して、二人で直接家に来てくれないか」


「そうだね、今日はさすがに恥ずかしいかも、レーションを取ってあるから、一度家に帰ってから3人分持っていくわ」


「ああ、あれ、結構旨かったものな」

 そう言ってから、しのぶの顔を思い浮かべて付け足した。

「しのぶも、俺達のこと喜んでくれるかな」


「きっと、姉さん良かったね、と言ってくれると思う」

 沙織もしのぶの顔を思い浮かべているのかもしれない。

 そんな気がした。


「うん、そうだな」


「後悔してない?」

 物思いに沈むような感じで、沙織が俺に問い掛けた。

 今更何を言ってるのかw


「交際宣言をか、うまく行って良かったと思ってるよ。

 まさか、クラス公認カップルになれるとは思わなかったけど」


 これも身代わり君達のお陰かな。

 こういうのを瓢箪ひょうたんからこまって言うんだろう。


「しのぶじゃなくて、私で良かったの」

 沙織は思いがけないことを訊いてきた。


「え、そっち?」

 俺は即答できず、そんな答え方をした。


「ううん、両方かな」


 交際宣言に後悔は無いことは、さっき答えた。

 しのぶのことは、そう、少し惜しい気がするが、しのぶも姉の為にやって来た感もあるし、まあ一切後悔はありませんw


「しのぶちゃんは、恋人の妹ってことで良いんじゃないか。

 これまで通り仲良くやって行きたいし」


「そ、そうね」

 沙織はほっとした表情を見せた。

 俺が前に言ったことを気にしていたのかも知れない。



『2年待っても、しのぶの気持ちが変わらないなら、俺がそういう気持ちを持っても問題ないだろ。

 今は14歳でも2年後には16歳だろ。 それくらいになったら、普通に付き合ってる男女は多いじゃないか。それでも何か問題あるか』


 確か、こんなことを沙織としのぶの前で言ったことがある。

 中二のしのぶと付き合うつもりなのかって沙織が訊いたから、そう答えた気がする。

 中二の女子との交際は、さすがに罪深い感じがするが、二年経てば高校生で、年齢も16歳なら問題ないだろうという意味で、あと二年という言葉を使ったのだ。

 それに対してしのぶが、私は4月生まれだから、1年半後、高校生になったらすぐ16歳になるから、2年も待たなくてもいいでしょって答えたっけ。


 あれは、俺もしのぶも本気じゃなかったよな、多分。

 何か、あの時のことを思い出すだけでも、甘酸っぱい気分になるな。



「コウタ、なに考え込んでるのよ。

 やっぱり後悔してるの」

 沙織はそう言って、俺の顔を人差し指でつついた。


「いやいや、後悔なんかこれっぽちもしてないよ、今俺は幸せ一杯な気分だよ」


「そ、そう? なら良いけど」


 そんな感じで、昼休みは、少しヤキモチを焼かれたりしてリア充を満喫した。


 終業時間になった途端、俺は、皆にお先にと挨拶して、すぐ教室を出た。

 放課後に気のゆるんだ連中から冷やかされるのが嫌だったからだ。

 まあいつも通りと言えば、その通りなのだが。


 学校を出てすぐ、母さんに電話する。

 母さんに冷やかされるのは、今日だけは特に嫌な気がして、予防線を張っておくつもりだ。

「あ、俺、コウタだけど」


「何、まだ仕事中だけど、少しなら良いわ」


「今晩、また勉強会をすることになった。

 宮坂姉妹が家に来るんだけど、俺も含めてそれぞれ夕食を持ち寄って集まるから、勉強のじゃまはしないでね」


「あ、そうなの、分かったわ」


 それだけだからと言って、電話を切った。


 これで準備はOKだなw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る