第144話 教室の様子その2
教室に入ると、何人も級友が集まって来て、いつものようにおしゃべりが始まった。
私は話題の中心にいることが多い方だが、今日は様子見で、友達の話の聞き役に回っていた。
少しすると、サナが私に訊いてきた。
「あのさ、さおりん、仲村くんとケンカでもしたの」
どうして、そんなことを訊くのだろうとは思ったが、私は自然体を心がける。
「え、ケンカなんかしてないけど」
「あ、そうなの、だってここ数日、仲村くんところへ行かないよね。
まあ、中間テスト前に戻ったと言えば、それだけのことなんだけど」
「あれ、そうだったっけ、特に意識してなかった。
今日はコウタが来たら、話でもしてみるよ」
サナじゃなくて、ユウナが答えた。
「ふうん、本当にケンカした訳じゃないんだね」
「うん、ケンカなんかしてないよ」
とぼけてるつもりはないけど、周囲はそうは見てないらしい。
アンドロイドめ、何してくれてんの!
今度はコハルが意味深なことを言った。
「じゃあさ、ケンカじゃなくて、仲村くんと何かあった」
こっちの質問の方が困った。
「何かって何よ」
全然うまい返しができない。
これじゃコハルを調子に乗せるだけじゃない。
「ふふん、チョメチョメとか?」
こういうのは、こっちが突っ込む時は楽しいけど、言われるのは恥ずかしすぎる。
イジメと取られると困るから。
それなのに、私は相手が喜びそうな返しをしてしまった。
「何言ってんの!
そんなことしてないよ」
「何でそんなに顔赤くしてるの」
ほら、コハルを調子づけてしまった。
「ええ、赤くなんてなってないよ」
「そうかな」
「そうだよ」
私の慌てぶりに、コハルは十分満足した感じだった。
ところが、今度は、リオまで変なことを言い出した。
「さおりんはさあ、仲村のこと、どう思ってるの、好きじゃないの」
「え、どうして、今日はみんな変なことばかり言うよね」
私はもう防戦一方だった。
いじめられる子の気持ちが分かるような気がした。
「いやあ、前から気になってたんだよね、二人は付き合ってるんじゃないかってさ」
リオの言い方は、面白がってると言うより、心配されている気がしたので、あまり嫌な気はしなかった。
「あ、私も」と、サナ。
「私も、私もそう感じていた」
ユウナも同調した。
リオも、サナも、ユウナも、ただおもしろがってるのじゃないと思えたら、つい油断した。
「まだ付き合ってないよ」
「え、今、まだって言ったよね」
さっきおもしろがってたコハルが、追求してきた。
「いや、、」
「その気はあるってことだよね」
「ええ、、、いや、、」
リオは、こんな事を言ってくる。
「さおりん、分かりやすい。
まあ、分かるけどね、仲村ってさ、少し前までは、結構陰気とは言わないけど、お一人様だったし。
でも最近、随分変わってきたよね」
「そうそう、変わってきた」と、サナ。
「少しカッコよく見えて来た」と、ユウナ。
「カッコよくはないと思うけど、頭いいよね、アイツ」と、コハル。
「いや、見ようによっては可愛いんじゃね」と、サナ。
「そうかなあ」
コウタが褒められるのは満更でもないが、疑問文で答えた。
「まだ、さおりんと釣り合う所までは行かないかな、でも好きなら付き合っちゃえば」
さっきまで、私をただいじってるようにしか見えなかったコハルの言い方が、優しいかんじになった。
「だから、そんなんじゃないって」
「そうなの、じゃあ私、行っても良いかな。
最近少し気になってんだ」
なんだよ、コハルもコウタに気があるのかよ、とは思ったが、本気じゃないことは分かったので、素直に言った。
「それはダメ」
先生がやって来たので、お話はそこで終わった。
いつの間にか、コウタが教室に来ていたのに、話が盛り上がってたせいで私の周囲は誰もそれに気がつかなった。
とりあえず、コウタに赤くなった顔を見られなくて良かった。
でも私が気づかなかっただけで、コウタに話が聞こえていた可能性もあるかな。
身代わりアンドロイドめ、いつもと違う行動しやがって、私の身代わり中にコウタを避けていたのかよ。
だから、却ってみんなが私たちをそういう目で見始めたんだよね。
でもーーーそうだよね、そろそろ良いのかな。
'''''''''''''''''''''''''''''''' 沙織視点 終 '''''''''''''''''''''''''''''''
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