第112話 大蛇戦の後で
初めて俺たちのファイトを見届けた、歴戦のハンターのデーブもブッシュもロクシーも、みんなこぞって大絶賛してくれた。
俺たちの実力を、その目で見て認めてくれた、そういうことだ。
俺はデーブとブッシュに肩を思い切り叩かれた。
特にブッシュのでかい手で叩かれ所は、肩が外れそうになった。
もっと加減しろよな、クソジジイ。
決着がついた後、大蛇の残骸を前にして、改めて腰がくだけそうな沙織を、その元までささっとすり寄ったロクシーが支える。
「大ヘビ、怖かった〜〜、怖かったよ、ロクシー」
沙織はロクシーにハグするというか、しがみついた。
小柄なロクシーの背骨が折れるんじゃないか、と俺はヒヤヒヤしたが、エリスじゃないんだから、そんな訳はないかw
「よく頑張ったね、この次はマモタラと
戦闘は場数を踏むことで強くなるのよ」
小さいロクシーが、沙織の背中をぽんぽんと軽く叩く。
沙織が、あんなに人に甘える所を初めて見た。
ロクシー姉さん、さすがだな。
「でかいタランチュラは、やっぱり無理だよ〰」
「あの剣技なら絶対大丈夫だよ、さおりはすごいんだよ」
「そうかな、うん、なんとなくそんな気がしてきた。
大蜘蛛はまだ分からないけど、大コウモリ位なら、次はビビらずにやっつけられるかも知れない」
「あんなの、さおりなら楽勝だよ」
二人はまだそんな会話を続けている。
デーブがそんな二人を見やりつつ、俺に言う。
「おまえら、思った通り良い連携してたな、良いパーティだ。
白く光る剣なんて初めて見たが、すげえ切れ味だな」
「あれも俺の国の魔道具ですよ」
そう簡単に答えてみたが、そうだろう、そうだろう、あれはエターナルの超高度技術が生み出した、名剣ライトセーバーもどきだからなw
ブッシュはこう言ってくれた。
「最初の射撃で、あの大蛇トリオを右に寄せて、戦場を誘導した手際は見事なもんだ。 コウタ、やるな、おまえ」
おれはまた肩を叩かれないように、一歩退いて答える。
「あそこまでうまく行くとは思いませんでしたが、よかったです」
一方、ロクシーは沙織から離れ、少し物足りそうな顔をしてるしのぶに向かい合った。
「さおりの剣技にはしびれたけど・・・
しのぶちゃん、昨日の練習では今一だったけど、さっきのストーンバレットは見事だったわ」
しのぶは師匠に
あの冷静なしのぶでも、誰かに認められたいんだな、そういうものか、うん。
マイクは沙織に話しかける。
「相変わらず、あんたの光の剣と、あの一刀両断は見事なもんだな、まるでSクラスハンターの剣士を見ているようだったぜ」
まんざらでもないのか、沙織は、ライトセーバーを右手に構え、マイクに自慢するように、くるくると回転させてから、光の刀身をオフにして、スポッとホルダーに戻した。
「どう、カッコいいでしょ。
マイクの青い剣もカッコいいから、後で良いとこ見せてよね」
「そうか、俺の剣の良さが分かるか」と、マイク。
冒険者たちは、装備自慢談義も好きらしい。
どうやら、沙織は大蛇のことはすっかり忘れたらしい。
切り替えが早いのが沙織の良い所だw
その二人に、キャシーが寄って来る。
「もう、私も一緒に戦いたかった。
私は元々パーティメンバーなんだからね。 マイクさん、何で止めたのよ」
キャシーが、マイクの袖を引いた。
「ああ、わるい、わるい。
何しろな、ブッシュには、あの3人のCクラス推薦を頼んだもんだから、あいつらだけでどのくらいやるのか、その実力を見てもらいたかったんだ」
「ああ、そういうことですか。
だけど、私もブッシュさんにBクラス昇格の推薦人になってもらったんで、腕を見てもらいたかったんですけど、それは知らなかったんですか」
マイクは、ブッシュに一旦目をやった。
そのブッシュは、がんばれやとばかりににやついている。
口達者なマイクが、キャシーに文句を言われてるのを見るのが楽しいらしい。
「ああ、そうなのか、そりゃ悪かったな。
次の時は、お前の今の力を見せつけてくれ。
ブッシュよ、ちゃんと見てやれよBクラス昇級推薦人の努めだからな」
「おうよ」とブッシュ。
「よろしくお願いします」とキャシーはブッシュに頭を下げたが、マイクにはまだ言い足りない所があるようだ。
そのマイクはとうにそこから離れていた。
キャシーは、口のへの字を解いて、ロクシーの腕を取って引き寄せる。
小柄なロクシーがバランスを崩した。
「そうね、私はロクシーと二人でどのくらいやれるか、見てもらいたいわ。
ねえ、ロクシー、良いでしょ、次の魔物は私等二人のコンビでやっつけようよ」
どうやらロクシーは、愛弟子しのぶの土魔法の出来に刺激されたようだ。
「そうね、次戦は久しぶりに連携してみようか」
「おいおい、みんなよう、大蛇はここで料理するか。
しなきゃこの森では魔石化はせずに、森に吸収されちまうが」
こんなことを言ったのは、デーブだった。
どうやら、ダンジョンでは魔物を倒すと魔石化してそこに残るが、魔物の森では、魔石化する前に魔素として森に吸収されてしまうらしい。
魔石を取り出す方法がないことは無いらしいが、魔物を倒した直後に心臓を突くとかしないといけないらしいのだ。
つまりこの大蛇に対しては、もう魔石を取り出すには遅すぎるらしい。
料理の為に切り刻んだり、火で
ダンジョンに出る魔物も、スライム以外は肉として料理することはできるらしいが、魔石化する速度が早いらしく、食べるつもりなら、すぐ調理を始めないといけないらしい。
結局、大蛇はそのまま置いておくことにした。
沙織が無理無理と騒ぎ出したことが理由だw
その後も、俺たちは、森を奥へと進む。
ここいらでようやく森の中盤あたりだろうか。
さっきから、ブッシュと沙織が、ひそひそと立ち話というか歩き話を続けている。
あの二人に特定の話題があるのだろうか。
少し気になった俺は、その会話に参加しようと思って沙織のすぐ横に並んで歩く。
「それ、本当なんですか」
「おうよ、だから親父はあの事件に触れられたくないのさ」
「事件て、例の双子兄弟の失踪のことですか」
「ああ、そのことだ」
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