第109話 ヌシ対策会議その3

「私の土魔法で、硬い槍を作ることならできるわ、ただ、少し時間が必要かな。

 あ、そうだ、しのぶに土魔法を教えれば、私よりずっと早く硬い土製の槍が作れるかも」

 ロクシーが、前向きな意見を提出。


「土製の槍なんて、すぐ折れちまうんじゃねえか」

 懐疑的な意見を、デーブが提出。


「槍で叩く戦闘法だと折れるかも知れないけど、真っ直ぐ突き刺すならそう簡単には折れないほど固く作れるわよ」


 ロクシーが不敵に笑う。


「ほう、そんな槍が魔法で作れるのかよ」

 マイクが、物欲しそうな顔でそう言った。


「まあね」と、ロクシー。


「ロクシーのアースマジックは、この国で一番よ、きっと」

 おや、キャシーが口を開いたのは、これが初めてじゃないか。

 キャシー、ちゃんと居たんだなw



「ヌシの皮膚というか外殻がいかくですが、刀が通らないほど硬いと聞いたのですが」

 俺は、デーブに質問を投げ掛けた。


「おうよ、なんだよ、今そういう話をしていたんだろうが」


 話を聞いてなかったのかと、俺はデーブにあきれられたようだ。

 しかし、俺にはある考えがある。


「まあ、そうなんですが、本当にヌシの全体がそこまで硬いのでしょうか。

 俺にはそこがはなはだ疑問なんですがね」


「戦ったことがないお前には分からないかも知れないが、硬いぜ、正面からは難しい相手だ。

 お前、一体何が言いたいんだ」


 もう完全に俺は、デーブから評価を失ったみたいだなw

 だが、マイナス評価から一転してプラス評価させて、みんなからダメだと思われてるヤツだが自分だけはその実力を最初から知ってたんだぜ、と思わせれば、自分の人を見る目は確かだという優越感から俺の評価は下がりにくいだろう。

 そこが俺の計算だ。


「ヌシに斬り掛かったのは、頭の部分と、側面でも頭部に近い部分だけなんでしょ」


 デーブが嫌そうな気配をぷんぷんと放ちながら、俺の質問に答える。


「まあ、そうだな。

 側面の後方には近寄れなかったし、第一、奴は大穴から10Mほどしか姿を見せてねえ。

 あの後ろがどんだけ長いのか、ちと見当がつかねえな、、、でもよ、それがどうだってんだ!」


 俺は自分の見解を披露ひろうすることにした。

 それが当たってるかどうかは、後にならなきゃ分からないが。


「ワーム系の魔物ですから、長い手も長い脚もない。

 戦いの中心になる頭部は、攻撃と防御上かなり硬くできてるんだと思います。

 それに頭部に近い側面は硬くできてないと困るんですよ、構造的に」


「おまえの言わんとする意味が、俺にはよく分からんのだが」

 デーブは、俺から目をらし、隣のマイクにどうなってるんだと、同意を求めるようにしかめた顔を向けた。


「あの電磁石を使った時に、剣などが強く吸い付けられて、ヌシ自身に深く突き刺さったら困るでしょう、それだけで深手を負う可能性がある。

 仮説ですが、そんな理由でそこだけは、構造的に硬くしなければならないんです。

 全体が硬くて頑丈なら、何故、ヌシは大穴から全体を出さずに、前方だけで戦うスタイルを取っているのでしょうか。

 俺にはまるで、側面が弱いからこそ、岩穴で守っているように見えるんですが」


 俺がそう、問題提起すると、経験豊富なベテランのブッシュも、俺に対し懐疑的になってしまったデーブも、俺の実力を知るマイクも、俺に重きを置かなかったロクシーまでもが、じっと考え込み始めた。


「側面を攻めるのは一考の余地があるな」

 マイクが最初に口を開いた。


「まだ試してねえから、側面攻めはやってみる価値はあるぜ。

 お前、俺の見込んだ通りのやり手だな。

 ちょいと姑息こそくな所もあるが、それを含めてかなりの戦略家だぜ」

 デーブも賛意を示してくれた。

 どうやら、俺のやり方に感づいたらしい。さすがだな。


「コウタ君、あんたの推論、すごいわね、当たってないことも考えられるけど」

 こう言ったのはロクシーだ。

 彼女は、俺の推論の欠陥も考慮している、実戦ではかなり頼れそうだ。


「そうですね、当たってれば良いんですが」

 外れてる可能性も十分あるので、俺は謙遜けんそんしておいた。


「側面には目がねえし、良さそうだな、奴の弱点かもしれねえ」

 これは、ベテラン、ブッシュの発言だが、俺は即座に反対意見を表明した。


「側面に目がないと思うのは、まだ早計そうけいです。

 側面に弱点があるからこそ、弱点を補う為に、側面にも幾つか目があると考えた方が良いと思います。

 その場合、側面に敵を発見した場合、巨体を活かして、洞窟と自身の身体で、敵を押し潰す攻撃を仕掛けてくることも考えられます。

 それなら狭い洞窟に留まる、口も歯も無い胴体でも、敵にダメージを与えられるでしょうね。

 ですから、洞窟内に入って、ヌシにそんな動きの予兆があれば、奴の背中に飛び乗って下さい。 恐らくあの大洞窟では上の方が余裕がある筈です」

 あの洞窟は横幅より、高さ、すなわち縦の方が長い。


 全てを見通したような発言をするのには、俺なりの打算が働いているのだ。

 沙織と、しのぶを無事に日本に帰す。

 その目的を果たす為には、若輩の俺が、ベテランハンターらに、こいつの指揮通り動いても大丈夫だろうという、信頼関係を醸成しなければならない。

 これはその為のハッタリだ。


「コウタ、おまえ、すごいこと考えるな。

 例え当たってなくても、その考え方は十分評価するぜ。

 おまえなら、窮地きゅうちに陥っても、頼りになりそうだ」


 デーブがハッタリに乗った。

 作戦成功だw

 ここで、謙遜の態度を示しておく。

 我ながら計算高いなw


「それは、買いかぶり過ぎですよ」と、俺。


「コウタは、すごいんだから」

 沙織は、無条件で俺を評価してしまった、、、


「コウタさん!」

 それしか言わないしのぶは、俺のハッタリをどう評価したのか、利口なしのぶは、既に俺の腹積はらづもりを見通したのかも知れない。


「コウタ、凄すぎる」

 キャシーもちょろいなw

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