第108話 ヌシ対策会議その2
そのロクシーは、俺の期待に答えてくれた。
「大丈夫よ、しのぶは私よりも上の大天才だから」
天才魔法使いと見なされている、ロクシーの言葉は、否定的意見を跳ね返す説得力があった。
「おう、そんな奴がいるのかよ。
そら、心強いってもんだ」
デーブがそう言うと、ブッシュもしのぶを見直したような目で見る。
「奴とか言わないで下さい、女の子なんで」
ジト目で、しのぶがデーブを見やる。
その調子だぜ、しのぶ。
「おう、悪かった、気をつけるよ、しのぶちゃん」と、デーブ。
俺は、ロクシーに意見を求める。
「ファイアボール、ウォーターボールでは距離が足りないですか」
「10Mは飛ばすだけならできても、その威力は半減ね、5、6mなら十分だけど」
「それだとドレインされますね」
その答えに少しがっかりしたんだが、ちゃんと、その続きがあった。
「しのぶなら、10M位破壊力を維持したままいけそうよ」
「え、買いかぶりですよ」
しのぶが目を丸くする。
ジト目ではない時のしのぶの目は、つぶらな瞳がよく見える。
「後でロクシーさんと試してみてくれるか」
この話を締め括るため、俺はしのぶにそう頼んだ。
期待してるぜ。まあ戦いにならないことが一番だが。
「では、次にヌシとの接近戦では武具を取られたってことですが、どんな感じで取られたんですか」
どでかいワームが口を一杯に開けると、大きな歯が丸くずらりと並んでいる。
その口の奥から、とんでもなく太く長い舌が飛び出てきて、ハンターから盾や、剣を絡め取る、そんな
「あ、それな、ちょっと不思議な感覚なんだが、接近して斬り掛かると、何か分からない強力な力で、武器が体ごと持っていかれるって感じだな。
身体が浮いた瞬間に、思わず手を緩めると、武器だけがあいつに吸い付けられて、剣士も戦士もストンとその場に落とされるんだ。
あの巨体の頭部に近い側面に、ぴたっと張り付いてもって行かれる感じだな。
そしてヤツにくっついた武具は、その場に落ちる。
落ちていても取り返せる訳がない、あの危ねえ頭より後ろに落ちてるからな」
ふむ、武器がくっついてから、その場に落ちる、、、あ、あれか、とひらめいた途端、しのぶが考えを表明した。
「だったら、ヌシの体内には電磁石の仕組みがあるんじゃないですか」
「ああ、そうね、きっとそうよ」
即座に姉の沙織が同意した。俺もそう思うが、決して後出しじゃんけんなんかじゃないからなw
「なんだその、『電磁石』ってのは」
マイクが興味深そうに訊いてくる。
「この国には磁石はありませんか」
俺は、この世界を地元とする5人全員に向けて、そう尋ねた。
「ああ、あるな、小さな金属の
マイクがそう答えた。
あれか、という顔を、デーブもブッシュもしている。
キャシーは周りが先輩ばかりだと、
「旅商人がよく使っている、方位磁石というのもありますね」
ロクシーの方がよっぽど腹が据わってるようだ。
「そう、それですよ、ただ普通の磁石は常に鉄類を引き寄せる
電磁石というのは、電流が、
あ、電流というのは雷が落ちた時に、動物や植物を麻痺させたり、燃やしたり、殺したりするヤツと似たようなものです」
「ああ、電撃魔法みたいなのね」
ロクシー姉さん、理解が早い。
「そうです、その電流が流れやすい物質を
導体をくるくると、鉄棒にツタがからまるみたいにまきつけた状態にして、導体に電流を流すと磁界というものが発生して、その両端の
電流が止まると、磁力を失うので、くっついたものが離れます。
木や銅などは、普通の磁石でも、電磁石でもくっつきません」
「ほお、知らない単語が混じっていて、少し難しいが、それはすごい知識だな」
マイクがそういうと、デーブもうん、うんと頷いている。
自分たちの経験と、ヌシの電磁石説は、ぴったりと符号したようだ。
「あ、そう言えば、ヌシに取られた武具は全部鉄製だったな。
青銅製のものは取られなかったし、木製の弓も、石の矢じりの矢も、穂先が石の槍も取られなかった」
デーブがぴんと来たという感じでそう言った。
「ただ、気になることがあるんですが、金は磁石にくっつきません。
金貨を取られたと言ってましたが、どうやってヌシは金貨を奪ったんですかね」
俺はデーブに確かめる必要がある。やっぱり長い舌で絡め取ったのか?
「いや、金貨や銀貨を入れる財布の留め金は、磁石だったり鉄製のものが多いんだ。
取られた奴らは財布を革紐で腰紐にくくり付けていたが、ヌシに見えない手で中空に引っ張られたので恐ろしくて自ら紐を切ったと言っていたな」
「なるほど、そういうことか」と、俺。
「とにかく磁石に付かない青銅剣なら、もって行かれないということか、でも鉄剣で斬れないほど硬い皮膚に青銅剣が通るとは思えんな」
重鎮のブッシュがそう呟いた。
「じゃあ、木製の槍で攻撃するとかはどうですかね」
「ここには、良い木製の槍があまりねえんだよな、あれは冒険者より、兵隊が使う武器って認識だからな」
デーブが悔しそうに言葉を
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