第101話 女子の入浴、城内観光、そして


''''''''''''''''''''''''''' 神の視点 '''''''''''''''''''''''''''



 以下は入浴中の女子たちの会話・・・


「お母さん、機嫌きげん良さそうね」と、キャシー。


「一昨日、沙織に譲ってもらった、ブレザーとスカートが、この街一番の衣料品店店主の目に止まって、この製法特許を売って欲しいっていう話が舞い込んで来たらしいんだ。

 まだ特許なんて取る暇ないんだけどさ」


「へえ、良さそうな話だけど、権利を売っちゃうの、自分で作ればいいのに」と、沙織。


「今のうちじゃ、そこまでの縫製技術ないから、あんなすごい服はとうてい作れないよ、これからうんと修練を積まないとね。

 でも、権利は半々にして、提携することにしたの。

 行く行くは、うちもそこの傘下さんかではあるけど、大きな店を持てそうなの」


 ロクシーも上機嫌だ。


「じゃあ、いそがしくなりそうね」と、キャシー。


「ね、ね、それよりさ、もう一度話してよ、ダンジョンに出たガーディアン、マモタラとの決闘について」


 ロクシーの要求に答えて、一部始終見ていたキャシーが、目に浮かぶように話をして見せた。


「へえ、それはコウタさんのお手柄ね。

 そのすごい武器見てみたいなあ」と、ロクシー。


「あれはやばいよ」と、キャシー。


「沙織ちゃん、危ないところだったね」


 ロクシーが、沙織の肩を叩く。

 それは彼女の癖らしい。


「気絶しちゃったからね、私」


 沙織は、マモタラに抑え込まれた時の恐怖を思い出し、自分の肩を抱いた。


「しのぶちゃんも、大活躍したそうじゃないか。

 さすが愛弟子まなでしよ」


 ロクシーはかなりの語らせ上手だ。


 愛弟子と呼ばれたしのぶも、まんざらではなさそうだ。


「それはお師匠さんの教え方が良かったからですよ。

 私達、もうすぐこの地を去るので、お礼として私の着てきた服を差し上げますから、大店おおだなさんとの製法取引に使って下さいね」


 しのぶも、ロクシーの喜びそうなツボをしっかりと抑えてくる。


「良いの!

 あのショートパンツとプリーツスカートの短い奴が一緒になったものと、あの、なんて言ったっけ、上に着てたの」


 商売上手のロクシーは、ツボを刺激されアゲアゲだ。


「あれはスタジアムジャンパーです。

 下に履いてたのは、キュロットスカートです。

 姉さんのが売れるなら、キュロットもジャンパーもきっと売れますよね」


「あれは、きっと売れるね、保証するよ」と、ロクシー。



 こうして、女子たちの楽しい入浴は終わった。

 結局、コウタの入浴も許されることになって、彼はウキウキとバスタブに向かったのである。



''''''''''''''''''''''''''' 神の視点 終 '''''''''''''''''''''''''''



 ロクシーの家でお風呂をもらってから、俺たちはキャシーの案内で、城内見物をした。

 遠くから見た、内側の城壁に近づくにつれ、上り坂がきつくなって行く。

 内側の城壁付近に達すると、手前に半分ほど水を満たした掘が城壁を取り巻いているのが分かった。

 近くで見る、高台にそびえるベナンの砦はお城と言っても良い位の威容を示していた。

 日本に帰ったら、お城巡りでもしてみたいなと俺は感慨にふけった。




 さらに翌朝、俺たちの定宿じょうやどに、冒険者ギルドからキャシー宛に使いがやって来た。


「ブッシュさんが、私のBクラス昇進の推薦人になってくれるんだって」


「本当なの、念願が叶うわね」


 沙織は、キャシーに飛びついてハグした。

 欧米か!(古いギャグにそんなものがあったらしい)


「でも、推薦人は二人必要なんですよね」

 しのぶは常に冷静だ。

 ま、時折、俺はしのぶが取り乱している所も見ているがねw


「もう一人は決まっていて、ギルド長がなってくれることになったの」

 キャシーは喜びを隠しきれない様子だ。


「それなら、決まりですね」と、しのぶ。


「良かったな、キャシー。

 でも一定数の上位ランクの依頼達成という要件はクリアできるのか」

 俺も結構冷静だなw


「それは少し足りなかったんだけど、マモタラ討伐とうばつを実績に上積みしてくれて、要件クリアということみたい。

 これも、みんなのお陰です、ありがとう、コウタ、沙織、しのぶ。

 あたしが、Bクラスに上がれたら、ロクシーにもまた冒険者パーティを組んでもらえるかも知れないし」


「ロクシーは服屋の拡張とか忙しいんじゃないのか」と、俺。


「だから、それを暫く手伝うのがロクシーが出した条件なの。

 あの子はホント、しっかりしてるのよ」


「これで、私達のパーティを解散しても、キャシーの目的は達成できるってことね。

 だったら、心置きなく私達出発できるわ」


 沙織は、自分のせいでパーティが早期解散になることに、少し責任を感じていたらしい。

 キャシーの目的が達成できるなら、肩の荷をおろせるとの開放感で、とびきりの笑顔を輝かせている。


「それなんだけどね、魔物の森の奥まで、デーブさんと臨時パーティ組むんだよね、それに私も入れて欲しいんだ」

 キャシーはそう申し出た。


「どうしてですか、魔物の森のヌシとの戦いになったらどうするつもりなんですか」

 しのぶが、まだ見ぬ恐怖の怪物の存在を考えて、キャシーに問う。


「ブッシュさんには怒られそうだけど、デーブさんだって、あんたらが岩山で帰り道を見つけたら、たった一人で森を下りて来なくちゃならないんだよ。

 だから帰りは、デーブさんと組むつもりよ」


 それは理にかなってると俺は思った。


「でも、ヌシとの戦いになれば命懸いのちがけですよ」と、しのぶは慎重さを隠さない。


「それを言うなら、あんたらも命懸けだよね」


 キャシーは俺たちのことを考えて、サポートするつもりなのだと思った。


「まあ、キャシーは決めたみたいだから、そこまで心配することはないさ、しのぶ。

 ヌシとの戦いも、うまくけて立ち回るさ。

 要するに、ヌシが溜め込んでいるお宝を見つけてやりゃ良いんだよな」


 俺は、キャシーの気持ちが嬉しくて、目算もくさんもないまま、ついそんなことを言った。

 自分のことながら、全くもって自分らしくない、、、俺はもっと慎重なタイプなのだが。


「コウタさんには、何か勝算があるんですか」

 しのぶがすかさずツッコミを入れて来た。まだ何の目算もないんだよ〰


「ありそうじゃない、しのぶ、コウタの最後の砦たる何かを見せてもらおうよ」

 沙織が俺に助け舟を出してくれたが、、、


「いや、いや、そんなに期待されても困るんだが、、、」


「あたしも期待してるよ、コウタ」


 キャシーが俺を信頼してくれている!

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