第95話 ブッシュから聞いた話

「10年前に死んだ俺の親父から聞いた話だが、あ、親父も名のある冒険者だったんだがな、」


 ブッシュは、俺たちがAランクの魔物退治した話を受けて、俺か、俺たち全員へ、何か話をしたいらしい。

 その前に、俺は近くでじっくりと見たブッシュが、マイクよりもかなり年上なんじゃないかと気になって、実年齢を確認しておきたくなった。

 まあマイクの年齡もまだ聞いてないんだが、、、


「ところで、ブッシュさんはお幾つなんですか、若そうには見えるんですが」


 ブッシュは、少しいらついた表情を見せたが、質問には答えてくれるようだ。


「ふん、男から年を聞かれたのは久しぶりだな、今年で50歳だ。

 おまえらをこのギルドに連れて来たマイクは35だ。

 ところでおまえらは幾つなんだ」


 マイクの年齡まで分かって手間が省けたな。


「俺が17歳、あっちの髪が長いのも17で、短いのが14歳です。

 キャシーは19ですが、知ってましたかね」


「知らねえよ、キャシーの年なんて。

 それにしてもみんな若いな、その年頃は無鉄砲で命を落としやすいから気をつけなよ。

 話がそれたな、お前、コウタというんだっけ。

 ちょいと大事な話をしようと思ってるんだから、この後は話の腰を折るなよ」


 ブッシュは俺をにらめつけたが、それほど怒ってはいないようだ。それでも俺は新人らしく丁寧な態度を心掛けて謝罪した。


「すみません」


「おれの親父がまだ20歳の頃で、もう55年前の話になるが、既にBクラスの冒険者になっていて、いっぱしのパーティリーダーをやっていた。

 あ、話の腰を折るなとは言ったが、合いの手は入れていいからな」


 それは話しやすいように、合いの手を入れろとの要望かw


「あ、はい。

 お父さん、すごいんですね、20歳でパーティリーダーなんて」


 わざとらしいよいしょは、見破られたらしい、、、


「ふざけるなよ。

 コウタだって17歳でパーティリーダーやってるんだろうが」


「あ、はい。言われてみれば、その通りです」


「若いのに、食えない奴だな。

 まあいい。

 でな、その頃親父が、お前たちが下りてきた、あの魔物の森へ、若い二人の新人を連れて行ったのさ。

 その頃二人は、まだ15歳だったらしい」


「ほお、若い冒険者ですね」


「うむ、親父は、その新人を実地訓練するつもりで、今日は森の浅い所までしか行かないと、前からのパーティメンバー5人と、その新人二人にきつく言い渡したんだ」


「森の中盤から奥は、強い魔物が出るんでしたね」

 うん、どうやら、合いの手の入れ方をマスターしたかもw


「そうさ、浅い所までなら、新人の訓練には丁度良い。

 親父はBクラス冒険者で、他の5人もCクラスだからな、森の浅い所はF,E,Dクラスの魔物が中心だ」


「それなら楽勝だ」


「そう思うのが油断てやつだ。

 次の冒険の時は特に気をつけろよ。

 Aクラスの魔物をやっつけたという自信が、みんなの油断を誘い、大きな事故につながるんだ」


 どうやら、この話は、俺たちのビギナーズラックに対する、経験者からの説教か。

 その程度に思っていたのだが、この話で後々重要な情報を得られることになろうとは、この時の俺には知る由も無かった。


「その双子の新人は、結構筋が良かったらしい。

 オヤジのパーティは連携を組んで、双子に魔物を何体か倒させた。

 しかも、それはDクラスの魔物だった」


 普通なら新人はFクラス登録なのに、デビュー戦でいきなり2クラス上のDクラスの魔物を倒せたなら、大したニューカマーだ。

 あ、俺たちもCクラス登録のデビュー戦で、2クラス上のA級魔物、マモタラを倒してきたんだよな。。。


「若い双子の新人は有頂天になった。

 俺たちなら、二人の連携で、これよりも強い魔物だって倒せると息巻いていた」


 調子に乗ったワルガキ兄弟のイメージが湧いてくる。


「パーティの一人が、それにカチンと来たらしい。

 せっかく俺たちが、弱らせてから、とどめを刺させてやっているのに、こいつら図にのりやがってって感じだな」


「若いやつらにはありそうな話ですね」


 自分の若さは棚に上げて、そう言った。


「お前も気をつけなよ、調子に乗りすぎると、適正な状況判断が危うくなるからな」


「はい、気をつけます」


「それまでの連携では、森の奥側にベテランメンバーを配置して、出て来た魔物を、弱らせながら、森の浅い側に追い込んで、新人二人にやらせていた」


「それなら、安全そうですね」


「そんな中で、パーティは昼休憩を取った」


「ふむ、何か起こりそうな気配ですね」


「こら、先読みをするんじゃねえ」


 気分の良いところに水をさしたようだ。


「はい」


「ま、コウタの読み通り、ことが起こったのさ。

 さっきのカチンときた奴が、こいつら連れて、川に水を取りに行って来ますと、リーダーである親父に告げた。

 川は、そこから見て森の浅い側だし、まだひらけた所にあって比較的安全な場所だったから、気をつけて行って来いと許可を出したそうだ」


「ふむ、なるほど。だったら、昼休憩もみんなで、そこでしたら良かったのでは」


「そうだろうな。

 とは言え、親父は、少しばかり危険な場所で休憩を取るのも、新人教育の一環だと考えていたみたいだ」


「なるほど」

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