第93話 冒険者ギルドへの報告

 俺たち四人は、白く淡い光を放つ、幻想的な魔法陣の上に同時にのった。


 キャシーの言った通り、ダンジョン入口近くの小広場に、俺たちは瞬く間に転移した。


 ダンジョンの入り口まで出て来ると、隣の掘っ立て小屋から番人が出て来た。


「どこまで行ったね?」


 番人は、見知った顔のキャシーにそう問いかけた。


「第一階層の突き当りの部屋まで行って来たよ」


「ガーディアンは居なかったかね」


「マウントモンスタータランチュラが出たわ、あんな奴が第一階層のガーディアンなんて聞いてなかったけど」


「おや、それは大変だな、この後潜る冒険者には注意しておこう。

 それにしても、マウントモンタラとはな。

 そいつは、第三階層にいるガーディアンとワシは聞いているが」


 このおっさん、略したよ、ま、長い名前だからなw


「第三階層クラスのガーディアンなの!

 やばいね、それって」


「おまえら、よく無事だったな。

 確か、おまえさんはまだCクラスだったな。

 転移部屋から逃げ出して、来た道を通って戻って来たのか、それにしては帰りが早いようだが」


「いや、皆で倒したよ。

 ガーディアンは倒すと、しばらくは出て来ないんだよね」


「それは本当か、おまえらが倒した証拠はあるのかい」


「ほら、これがマモタラの魔石だよ」


 キャシーよ、それは略し過ぎではないのかいw


「こ、これはでかいな、第二階層のガーディアンの魔石を持って帰ったものを見たことがあるが、その倍はあるな。

 ギルドで買い取ってもらう時、ついでにマモタラの報告をしておいてくれ。

 ワシは交代が来るまで、報告ができないのだ」



 ということで、日が暮れる前に、俺たちは冒険者ギルドに向かった。

 足は疲れているが、後はお宝を売って、第一階層のガーディアンについて報告して、久しぶりにまともな食事をして、風呂に入って、いや風呂はなかったんだっけか、身体を拭いてぐっすり眠るだけだな。



 北の城門を潜る時、門番が沙織にヒューヒューと冷やかしの口笛を吹いた。


 途中で、ロクシーの古着屋に寄って、沙織は上下の服を買い揃えそこで着替えた。

 ロクシーは、沙織の服をダメにした、ガーディアンの話を聞きたがったが、今は時間がないので、また明日来ることにして店を出た。



 歩きながら、ああ疲れたと言ってるキャシーに、ユンケルを差し出す。


「ほら、ユンケル飲んどけ、キャシー」


 注意書きには一日一回服用とあるが、朝飲んでからだいぶ時間が経ってるし、今日だけなら大丈夫だろう、多分。


「サンキュ、ありがたいわ」


 自分でキャップをひねって、キャシーは少し顔を歪めながら飲みきった。

 飲み終わった途端、あ、元気出てきたとか言ってるが、そこまでの即効性はないだろw


「ほら、沙織も」


 沙織もしのぶも、今日は飲んでないよな、確か。


「ありがとう、コウタ」


 沙織はもうこの味にすっかり慣れたようだ。

 顔もしかめず、30mlを一気に飲み干す。

 沙織の疲れは、フィジカルよりはメンタルだろうが、「病は気から」の裏返しで、効かないことはない筈だ、多分。


「しのぶには、チオビタだな」


 あれ、そう言えば、洗濯させた後、チオビタ飲んでたな。


「あ、ダメだ、今日すでに一本飲んでるから、止めておいた方が良いな。

 まだ中学生だし、用法用量は守らないとな」


「そ、そうですか、、、」


 チオビタ、そんなに飲みたかったのか、随分とがっかりした顔してるな。


「ねえ、ちょっと、私、さっきの、今日二本目なんだけど、大丈夫なの」


 しのぶに対する注意を、聞いてやがった。

 もう飲ませちゃったしな、、、


「大丈夫だよ、キャシーなら、ほら俺も飲むからさ、安全、安心」


 俺もユンケルを飲み干した。ふう。


「それって根拠あるの、大体コウタはそれが今日一本目でしょ」


「たまになら、一日二本でも大丈夫なんだよ、根拠ないけど」


「ひどい!」


 俺はキャシーにケツキックされた。




 南門手前の冒険者ギルドに着く頃には、夕暮れ時になっていた。


 受付には、昨日見た巨乳のお姉さんがいた。


「今日は何か依頼を受けに来たんですか、新人さん達。

 あら、キャシーさんもいるんですね」


「あたしら、パーティを組んで、ダンジョンへ行って来たの」


「いきなり、ダンジョンですか。

 他の三人さんは、昨日冒険者登録したばかりですよ、まあキャシーさんと同じCクラスデビューですけどね。

 それにしても、最初からダンジョンは厳しいのではないですか。

 経験者なんだから、初心者の指導はちゃんとして下さいね」


 意外にも、受付のお姉さん、説教モードでいらっしゃるw


「ダンジョンの管理人さんに言われて、報告に来たの。

 うるさいことばかり言わないで」


 そのぞんざいな口調から、この二人はそれなりに親しいのだろうと思えた。

 ああ、そう言えば、ポパイ亭を紹介してくれたのは、このお姉さんだし、キャシーはそこでバイトをしていたな。


「はい、はい、何の報告ですか」

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