第81話 ス◯◯ムが出てくるかも

「ここと第2階層では、あたしの苦手なやつがよく出るのよ」


 俺たちが魔石を集めている最中に、キャシーは口を前に突き出し、目頭を寄せながら沙織にそうもらした。


「へえ、キャシーの苦手なモンスターってどんなの」


 沙織は逆に、目を大きく見開き、口を半開きにしている。


「そいつらは色々な体色をしてるんだ。

 緑色のが一番多いけど、青いのや黄色いのもいるし、ごくまれには赤いのもいる。

 大きさも様々で、10cmサイズから、大きいのは数mサイズのヤツまでいる。

 丸くてぷよぷよしてて、飛び跳ねながら近付いてくるの」


「スライムか、それ」


 俺に浮かんだイメージはそれだった。

 これはぜひ見てみたいなw


 キャシーは、俺が出したワードに、小さくあごを引いて肯定した。


「名前を出すのも、あたし、気持ち悪いんだけど、

コウタ、知ってるの、なら話が早いわ。

 あいつは魔法を吸収する力があって、そのせいかどうか分からないけど、あたしのどこでもジャンプも、あいつらのそばでは使えないの」


 いまいましそうに右拳を握っている。


「ああ、あれジャンプ盤が魔法陣みたいになってますよね、魔法の元の魔素が吸収されちゃうのかも知れませんね」


 しのぶが、冷静に分析した。


「それにすぐ分裂するし、危ない液体を放出する奴もいるのよ」


 キャシーは自らを抱きしめる。


「どういうふうに危ないんだ。

 触れたら溶けるとか」


 この危険情報は、戦術的にもよく訊いておかないといけない。


「金属や石を溶かす力はあるらしいけど、即効性が低いので、その点では大して危険じゃないけど、油断してると、金属や石でできた武器を絡め取られることもあるわ。

 コウタのあのハンドガンみたく、あれをべったり掛けられると、身動きが取れなくなるんだから、、、

 あたし、一度身体中をあの液体で覆われて、仲間が助けてくれたけど、その後も中々取れなくて気持ち悪かったんだから」


「それは災難だったな。で、そいつらの弱点は?」と、俺。


 キャシーが、え、それだけって顔を見せてから答える。


「真ん中に核があるから、それをスパッと切れば一撃ね。

 あと熱や乾燥に弱いから、炎属性の魔法とか」


「魔法を吸収してしまうのでは」


 魔法使いにとってはかなり分が悪い。

 ジト目をキャシーにぶつけて、しのぶは答えを待っている。


「出来上がった火球は大丈夫だけど、あいつらのそばで使うと、火球生成前に吸収される恐れがあるよ。

 魔法を吸収すると、分裂が早くなったり、身体が急に大きくなって、液体の放出量までマシマシになっちゃうから、とてもやっかいな奴らなのさ」


「つまり、放出される液体を避けながら、剣などの打撃と、遠くからの熱攻撃が効果があるということだな」


 俺のブラックウィドウは、スライムには向かないなと考え、俺の武器は他にないのかとつぶやいた。


『ブラックウィドウは、麻酔ニードル弾を発射することも可能です。

 但し、初期装填弾数は100発で、次回装填までには1時間を要します』


 おお、久々にマイスーツから話し掛けられた。ニードルっていうからには、針みたいに細く尖った銃弾なのか。

 まあその麻酔ニードル弾が、スライムに通用するかどうかは、情報が足りないので、俺にも、特殊スーツにも判断できない所だが、、、


「矢も石つぶても効果ありよ。

 私の投げナイフも核に当たれば殺せると思うけど、投げナイフは5本しか持ってないから、私には期待しないでね」


 俺の言葉に、キャシーがそう答えてくれた。


「スライムは、攻撃性が強いのか」


「単体なら、たいてい逃げようするけど、集団になるとがぜん強気になるんだよ」


「倒すと、やっぱり魔石が残るの」


 沙織が、そう口を挟んだ。


「魔石はめったに残らないけど、小さな輝石きせきと呼ばれる、色の付いた宝石みたいなものを残すのがいるんだ。でも、赤い輝石以外はお金にはならないよ」


「じゃあ、そのスライムが出てきたら、キャシーは私の後ろに下がって。

 私がやっつけて、その輝石を手に入れるわ」


「沙織、核を斬らないと、分裂して増えることがあるから気をつけてね。

 それに残念だけど、赤いやつはめったにいないよ。

 それを見つけたら、結構なお金にはなるけど」


「いくら位の価値があるんですか」


 珍しく、しのぶがお金への執着を見せたw


「小さなやつでも、赤い輝石は金貨1枚の価値はあるって聞いたことがある」


「まさしく宝石ね!」


 沙織が目を輝かせた。

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