第80話 第二戦

 ダンジョン初戦を華々しく勝利した俺たちは、意気揚々いきようようと前進する所だったが、

「沙織、しのぶ、圧倒したからって浮かれるなよ。

 いつ何が出て来るのか、全く分からないんだから、フォーメーションは守れよ」

と、俺はみんなを戒めた。


 ダンジョン経験者の、キャシーには遠慮しておいたが。


「最後の砦コウタ、さすがにリーダーらしいわね。

 キャシーから見て、コウタはどう?」


 ほめてるのか、ちゃかしてるのか、意味不だが、沙織の問い掛けを受けて、キャシーは言う。


「私が教わったパーティリーダーも、今みたいに、大勝利の後、皆を引き締めていたわ。

 コウタはリーダーにふさわしいと思う」


「ほお」と、沙織。


「さすが、キャシーさんは良く見てますね」


 しのぶは、間接的にだが、俺を賛美さんびしてくれているな。

 賛美は言い過ぎか、順当に評価してくれている位が妥当かなw



 暫く進むと、メイン通路が左に折れた。


 その途端、遠くで俺たちを確認した、さっきより遥かに大きな、モルモットもとい巨大なネズミの10数匹の集団が、全速力で迫ってくるではないか。


「キングラットよ。

 さっきのやつらみたいには行かないわ。 みんな気をつけて」


 この距離なら、俺の間合いか。

 俺はブラックウィドウを、向かってくる群れに連続発射した。

 狙いが少し遠目だったようだが、後方の7、8匹はつんのめるように動きを止めた。

 ネットリした糸に絡め取られ、ジタバタする内に、全部が一纏ひとまとめに縛り上げられた。


 撃ちもらした前の5匹が迫ってくる。

 俺は、するりと最後尾に移動した。

 沙織は、ライトセーバーを先程より短めに調整済みだ。

 最初に到達した2匹を、下段から振り上げるライトセーバー一閃いっせんで、真っ二つに。

 こいつにとっては、大きさがこれだけ違ってても、切れ味に大差は無かった。

 なにしろ、翼竜タイタンも真っ二つにして、マイクからはS級冒険者かと問われたくらいだ。


 続く3匹の一体を、キャシーが爪を4本伸ばして、目を中心にずたずたにするが、先程のように、一撃でバラバラにはできないようだ。

 だが、次の一体も同じように、視力を奪い、大ジャンプからのどこでもジャンプの切り返しで、3体目は靴底一発串刺しで始末したのは流石さすがだった。

 残るは2匹だが、相手が半死半生はんしはんしょうだと、沙織の戦闘意欲はすこぶるにぶるらしく、ただじりじりと間合いを測るだけだった。

 そんな沙織に対し、キャシーは高みの見物を決め込んでいる。


「しのぶ、火球の用意だ!」


 後方からの敵に備えていた俺は、メイン通路の角を曲がって来る、さっきよりも数が多そうなモンスターラット軍団に対し、ブラックウィドウを構えながら、後ろのしのぶに強く命令した。


「まかせて!」


 俺は、先頭の奴らにブラックウィドウを発射。

 10数匹が糸に絡まれ、団子状態になり急ブレーキ。

 それを飛び越えて来るやつらには、迎え撃つように、さっきより巨大な火球がしのぶの手に生成されていた。

 そんなのを投げつけたら、曲がり角の壁に反射して、こちらまで被害が出そうだ。


「しのぶ、強すぎる、その半分で攻撃だ」


 あっという間に、大きな火球は、小さな数個に分裂した。


「消し炭になってしまえ!」


 あわれなり、続く一団のモンスラはぶわっと一斉に燃え上がり、断末魔の悲鳴も虚しく、10数個で一つの糸だるまとなったモンスラ共々消し炭となった。

 続こうと身構えていた、後方のモンスラ残党は、仲間の惨状さんじょうに怯え一斉に後退し、角を右に曲がって見えなくなった。

 もう後ろから襲ってくることはあるまい。


 一方、前方では、まだ沙織がぐずぐずと間合いを計っていた。

 半ば視力を失っている、顔面ずたずたに傷だらけの2匹のキングラットは、相手が怖気おじけづいたと見て、じりじりと飛びつける距離を測っているようだ。

 その鋭く尖った、上下2本ずつの巨大な齧歯げっしをむき出しにしている。

 狂犬並に恐ろしいな、、、

 次の瞬間、2匹が時間差攻撃で沙織に飛びついた。

 さっと飛び退いて、間合いを後方に取った沙織は、ライトセーバーを無限大マークを描くようにひゅる〜んと振るった。

 中空でキングラットはばらばらにされ、辺りに肉塊がどたどたと落ちた。


「沙織、詰めが甘いよ」


 見物を決め込んでいた、キャシーが注意する。

 沙織も自覚しているらしく、素直に返事する。


「ごめん、手負いで、向かって来ない奴には、ついためらっちゃって」


「もっと強い相手だったら、敵の反撃に対応できないかもしれないから、バトルの最中には絶対に躊躇ちゅうちょしないでね」

(少しの

「って、私も良く最初のリーダーから注意を受けてたわ」


 キャシーは強く言った後、最後はふっと思い出し笑いしながら、そう付け加えた。


「そうね、次からは気をつける」


 沙織が顔を引き締めるのが分かった。


 前方のキングラット8の糸だるまに対し、しのぶが火球をふくらまし始めたが、それを制して、沙織がライトセーバーを数回振るい、とどめを刺した。

 沙織が僅かに肩を震わせていた。



 第二戦の戦績は、パーティメンバーに受傷なし、教訓一つ会得えとく

 中くらいの魔石13、小さな魔石40。

 ちなみに、中くらいの魔石1個は大銅貨7枚。

 全部で、大銅貨131枚、換算すると、大銀貨1枚と銀貨3枚と大銅貨1枚で、約2万6千と200円なり。

 以降は面倒なので、世知辛せちがらい金額計算は割愛かつあいするw

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