第71話 Cランク登録と宿屋ポパイ亭

 俺たちは3人とも無事に、原則Fランクスタートのところを、3ランク飛び越えて特別Cランク登録で冒険者デビューを果たした。

 登録料、大銀貨1枚のところを、それぞれがマリス金貨で払い、それぞれが大銀貨8枚と銀貨10枚のお釣りを個別にもらったので、当面は飯屋とか宿屋とかの支払いに不便をきたすことはないな。

 ちなみにフロアの一角に両替商が看板を出しているが、両替手数料は総額の2%程度必要になるそうだから、ここでそれぞれがお釣りを貰ったのは大正解だ。

 両替えの対象は、通貨とは限らないらしいが、詳しいことは聞き漏らした。


 尚、Aの上には、S、SS、SSSなんてのがあるらしいが、今このギルドには一人も居ないらしい。

 ランク指定の依頼案件は、一つ上のクラスまで受けることが可能だが、下のランクの依頼には制限は無いとのこと。

 まあめったにAやBのランクの人が、FとかEランクの依頼を受けることはないようだが、片腕を失ったとか、高齢になって身体が機敏に動かなくなったとか、特殊事情のある上位冒険者の中には、そんな依頼をこなす人があるそうだ。


 昇級条件は、一定数の上位ランク依頼案件達成と、昇級ランクより上のランクの冒険者二人以上の推薦が必要とのこと。

 つまりこのギルドでは、Bランクまでしか上がれないということになる。

 Aランクはいるが、Sランクはいないからな。

 ということは、Aランクのマイクたちは、もっと大きい町のギルドで、Sランク冒険者二人から推薦を受けたという訳だな。



 冒険者証は、燃やされてもその場に残るメタルプレートで、ランクCの刻印と、登録名の彫刻で15分ほど待たされた。

 小さく、登録日と、ギルド支部の名前も刻まれていた。


「じゃあ、おまえらこの町でしばらく頑張れよ。

 この町で暮らすに当たって、まあ、なんだ、あまり細かいことは言いたくはなかったんだが、地元の服屋でもっと目立たない普通の服を早く買った方がいいぜ」


 俺も、宮坂姉妹も、各々の服と周辺を比べて、改めて納得する。


「そうだな、宿を決めたらそうするよ。

 マイクはこれからどうするんだ」


 俺も気にはしていたが、マイクはレオタードの時に一度注意したからか、今の今まで遠慮して言わなかったってことかw


「俺はあのスパイスをできるだけ高く買ってくれるやつをみつけて、ジャック兄弟の両親に見舞金を届けてくるからよ」


 なんて良い奴なんだ、とその時は思ったが、後日談によると、万能スパイスの買い手をみつけ、交渉の末、金貨5枚を手にしたのに、マイクは3枚を自分のものとして、僅か2枚だけを見舞金としたようだ。

 なんて良い奴から、2段階下げて、少しだけ良い奴に変更したw



 冒険者登録を終えた俺たちは、とりあえず泊まる場所を探すことにした。


 受付のお姉さんが、紹介してくれた宿屋は、ポパイ亭。

 どこかで聞いたことのある響きだが、耳馴染みが良いと思い、お姉さんに簡単な地図を書いてもらい、そこを訪ねることにした。


 4、5軒の宿屋が並んでいる通りに出た。

 ポパイ亭は、二軒目で、隣のブルート亭に比べ、やや見劣りしたが、折角のお勧めだからと思い直し、そこに決めた。

 受付は、女将さんではなく、可愛いらしい獣人族の娘だった。


 猫耳だよ、うっほ。

 尻尾は確認できないが、ぴょこんと飛び出た三角の耳の外は、見た目ヒト族と変わらない。

 おっぱいはDカップ程度か、丁度良いなw


「こら、コウタ、何でれでれしてるのよ」

「コウタさん、よだれが垂れそうですよ」


 さっそく、二人に咎められた。


 獣人族の娘は、そんな俺達の様子を、さして気にも留めず、宿泊料の説明を始めた。


「・・・

 宿泊は前金制で、最低3泊からですが、どうなさいますか。

 三人一部屋なら、少しお得になってますが」


 どうしようか、年頃の男子と女子が相部屋とか、やっぱりまずいのだろうか、と迷っていると、

「ばあか、部屋二つに決まってるでしょ」

と、沙織に一喝された。


「じゃあ、部屋二つで、なるべく近い部屋が良いんですが」


 そう尋ねると、良い具合の答えが返って来た。


「丁度、旅の冒険者パーティが、今朝たった所で、二つ続きの部屋が空いてます」


 朝食付き1泊当り、一人銀貨1枚と大銅貨5枚だったので、大体3千円くらいの感覚かな。

 部屋は二人で一つが原則らしく、俺は一人部屋になるので、俺だけ割増金として大銅貨2枚を余分に請求された。

 3泊分だから、その3倍を割り勘で前払いした。


 これでとりあえず、当面の宿は確保できた。


 お風呂はこの世界では贅沢らしく、貴族や大金持ちしか持てないらしい。

 高級旅館には大浴場があるとも聞いたが、宿泊料はここの10倍くらいするらしい。

 ポパイ亭では、大桶一杯のお湯とタオル1本が、お風呂の代わりについてくる。

 湯をこぼさないように、部屋でタオルを使って身体を拭くだけらしいな。

 洗濯は、共同水場にて自分でやるか、そこそこの手間賃を払って宿屋に頼むかの二択らしい。

 やはり、旅行は地球の方が良さそうだが、アフリカとかアマゾンなどの奥地へ旅行すれば、ここよりよっぽどひどいかw


「ベッドかたいな、まあ慣れるしかないか」

 つい、ボヤキが出る。

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