第69話 冒険者ギルド
入って正面の奥に受付カウンターがある。
俺たちに気付いたのか、カウンターの後ろのテーブルで事務仕事をしていた、30歳前後の巨乳女性が、席を立ちカウンター越しに声を掛けてくれる。
「いらっしゃいませ、こちらで何かお役にたてることがありますか」
マイク以外の俺たちは、ギルドに入ってからずっと内部をキョロキョロと見回す、お上りさんそのものだった。
だから、向こうから声を掛けられたのだw
マイクが、受付の女性に対し、冒険者登録の申請手続きを申し込むと、確認もせずに、マイクを除く3人分の登録申請書を出してきた。
「代表者一人に説明しますので、後の方は一緒に聞いてください」
手慣れた感じで、女性はそう言った。
「お姉さん、よろしく頼むぜ。
こいつらは腕はたつが、最近冒険者を始めたばかりだから、できるだけ丁寧に説明してやってくれ」
「マイクさん、あなたもそちらのお二人の手続きを手伝ってくださいね。
若い女性は得意でしょ」
「はは、まいったなあ。
もちろん手伝いますよ。ペンをあと2本いいかな」
マイクは頭をぽりぽりとやっているが、ギルドの中でも若い女性に声を掛けまくっているのか、おい。
「ほら、もう用意してますよ」
女性はペンを2本、沙織としのぶに向けて差し出した。
どうやら、マイクは受付にも顔と名前が売れているらしい。
さすがAランク冒険者だ。
「名前、、性別、、そこが年齡です、、そこの種族名も必須です」
俺はまだこの国の文字が分からない。
それで申請書をじっくりと見ていると、上の行から順に指さしながら、ゆっくりと説明してくれる。
『言語スペルを解析中です。
できれば何か、パンフレットとか本とかを収集して、マイクか誰かに助力してもらえば解析が早く完了します』と、マイスーツがワンポイントアドバイスをくれた。
ほおん、と俺が頷くと、受付女性は奇妙な目付きで俺を見た。
タイミングが自分の言葉に対してではないな、と違和感を持ったようだ。
「種族名というのは」
俺は澄ました顔で、そう訊いた。
「見た所、獣人族ではなさそうですよね。
そこにはヒト族と書いてください」
受付嬢は、俺、沙織、しのぶと視線を移しながら、そう説明したが、俺は『獣人族』というワードに少しときめいた。
いるのか、やはり異世界には、猫人族、犬人属、うさぎ人属とか・・・
必要事項を記入し始めるとすぐ、受付嬢は、ストップと声に出し、両手で上から押さえるポーズをした。
「それはどこの言葉ですか。
それでは読めないので、共通ヒト語で記入してくださいね」
確かに俺が書き始めた文字は、日本語だった、、、習慣というものは恐ろしいな。
「まだ会話も覚えたばかりで、文字はまだ勉強してないのですが」
俺も
そういやあ、さっきそれらしいことを言ってたな、、、失敗、失敗。
「やむをえません、私が代筆しますから、 順番にやりとりしましょう、まずお名前は」
「ルーデ、、いや、すみません。
コウタ・ナカムラです」
異世界になじんできたせいか、思わず自分の名前をルーデウスとか言いそうになっちまった。
受付嬢は、俺が言った名前を復唱してから、共通ヒト語ってやつで書き出したが、何と書いているのか、俺には全くチンプンカンプンだった。
『共通ヒト語の、名前、性別、年齡、種族名のワードと、コウタ・ナカムラのスペルを覚えました』
おお、その調子で頼むぜ。
受付嬢から、その次の項目の説明を受けたが、何を記入すべきか皆目分からない。
「この得意とする攻撃方法等には何を」
俺は、項目名を復唱しながら質問した。
「剣士であれば剣と、槍使いなら槍と、弓使いなら弓ですね。
攻撃魔法の方が得意であれば、魔法攻撃とその属性を、火、水、土、風とかですね。
治癒魔法が得意であれば、治癒魔法と書きます」
急に長くなった説明に、目を白黒させながら、俺は質問を加える。
「ガンが得意なんですが」
まあ得意ではないのだが、剣も槍も弓も、ましてや魔法など使える筈がないので、そう言ってみた。
「あら、国軍兵士でもないのに鉄砲を使うのですか」
かなり驚いた様子を見ると、国軍兵士以外に銃を使う人はいないのだと悟った。
「いや、それの小さいやつなんですが」
無駄かと思ったが、そう言ってみた。
「弓使いか、石投げにしておいてください。
分類表にないので」
かなりいい加減な答えが返って来た、、、
「はあ、それで良いならそう書いてください。
あと、この町の案内本とか、なければたくさん文字が書いてある冊子とか本とかあれば欲しいのですが」
そんなこんなで、大体必要項目は埋められたらしいが、本は外の書店で買ってくれという。
但しどの本もそれなりに高価だから、本当に必要なもの以外は買わない方が良いですよ、とアドバイスをもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます