第67話 最初の町 ベナン

「その格好じゃ目立ち過ぎて、またガラの悪い奴らにからかわれるぜ。

 その、マジックボックスみたいな所にしまってある、他の服は無いのか」


 マイクが言うことはもっともだ。

 特に俺のレオタードは、人に指摘された瞬間から急に恥ずかしくなって来た。

 最初は不可視を使っていたから気にならなかったが、パーチンが消えてから、不可視モードを切っていたことをすっかり忘れていた。

 もっと早く指摘してくれよ、マイク、、、


「しのぶ、そっちの木陰で着替えたらどうだ、沙織が見張っててくれるから大丈夫だぞ。

 沙織が着替える時は、俺が見張ってやるからさ」


「何でよ、バカコウタ。

 私の時は、しのぶに見張ってもらうからいいわ」


 しのぶが普段着へ着替え終わると、とは言っても特殊スーツの上に着るだけだが、次はしのぶが見張りに立って、沙織の着替えの番だ。


「何だよ、学校の制服じゃないか」


 白いブラウスに、紺とエンジと細い黒を組み合わせた、トラッドストライプのネクタイ、金ボタンと、学校のワッペンが付いた紺のブレザーに、ボトムスは紺のプリーツスカートに、白いソックスと、えび茶色のローファー。


 いやあ、これはこれで目立つでしょw


「しょうがないでしょ、学校帰りで急にラシアへ出発することになったんだから。

 これしかないわよ。

 コウタ、あんたも制服しかないんじゃないの」


 確かに沙織の言う通りだった。

 俺は下に白Tを着た学ランだが、レオタードよりはずっとマシだと思う。

 沙織のレオタード、制服ともに、どちらも捨て難いが、今日は長めに穿いているとはいえ、スカートは風でめくれるから、ちょいとやばいんじゃね、、、

 あ、下はショーツじゃなくて、レオタードね。

 って、生足も見えないだろ! それじゃ。


 そこへいくと、中学から一旦家で着替えてから出て来たしのぶは、

ここではそれでも目立つとは思うが、長袖のTシャツにスタジアムジャンパーは、良い感じの街着だと思うし、ボトムスはキュロットスカートだから、めくれても心配はない。

 残念ながら、ない、、、だが、丈が短いのは得点高い  って、やっぱ足元はレオタードかい!



 高さ3m近くあろうかという外側の城壁が、大分近くに見えて来た。

 城壁は、高台にある砦を二重に囲っているが、手前の町には低い柵すらない。

 砦があるくらいだから、この世界でも戦争はあるのだろうが、戦時にだけ、町の住人も城壁の中へ隠れるのだろうか。


 来る途中でも、いくつかの冒険者パーティとすれ違った。

 あの魔物の森へ行くのか、それとも次の街を目指して旅立つのか、まあどっちでも良いか。


「コウタたちは、冒険者登録してないんだったよな。

 町に入ってから少し先の、城門を入るとすぐ冒険者ギルドがある。

 町に泊まるなら、登録してカードを発行してもらうと何かと便利だぜ。

 登録料は大銀貨一枚だ。

 両替もできるから、そこで金貨を崩しておいたほうが良いな」


 ほお、いよいよ異世界ライフの始まりかと、少しワクワクして来たが、そんな様子を沙織やしのぶに見せるわけには行かない。


「冒険者ギルドがあるんですか」


 こう言って目を輝かせたのは、意外にもしのぶだった。

 大人しいのはやはり見かけだけか、異世界の街を見たいとも言っていたし、しのぶの中身は夢見る少年かよw


 ここで、マイクから聞いた通貨の単位を整理しておくか・・・

 まずあの、小オークからもらった、アスラン金貨と、

ゴブリンから取り返した(元々、ゴブリンが人から奪ったものだから、取り返したで間違いないだろう)マリス金貨は、ほぼ同価値で、

この町で2、3ヶ月暮らしていけるというから、金貨1枚はざっと2、30万円ほどか。


 金貨1枚は大銀貨10枚に相当し、大銀貨1枚は銀貨10枚相当、銀貨1枚は大銅貨10枚、大銅貨1枚は銅貨10枚。

 大銅貨1枚は2、300円くらいで、銅貨1枚は2、30円くらいか。

 面倒くさいので、この先2、3は、2で統一しようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る