第53話 しのぶに同行
「その協力は、しのぶの意思なのよね、そして、その任務は危険なのよね・・・」
沙織はしのぶを信頼していて、大事にもしているが、おそらく信頼が過ぎるようだ。
沙織に任せておけば、結局賛成するに違いない。
しのぶがまだ中2だということを、決して忘れるなよ、沙織。
「そうだ、安全は保証する」
フライは、事もなげにそんなことを言うが、絶対は無い筈だ。
俺は、思いの
「何をさせる気だよ、フライ
地球人の中2は、まだまだ子どもだということを忘れてないか」
フライは一瞬だけ、複眼を七色に輝かせた。
「日本基準の成人については承知しているが、判断力を基準にするなら、コータも、しのぶも、すでに大人だ。
しのぶをあまり見くびらないで欲しい。
コウタ、あまり年齡にとらわれすぎない方が良い」
フライの言葉は、俺の考え方のコアな所を貫いた。
「それでも、しのぶに危険な真似はさせてほしくないんだよ」
「コータの意見は一応聞いておく。
沙織は姉としてどう思うのだ」
「私は、自分自身よりも、しのぶを信頼しているわ。
しのぶの意思だというなら、私はできるだけ、しのぶをサポートするだけよ」
ほらな、やっぱり賛成だよ、、、
しかしながら、沙織の考え方を否定するどころか、俺は内面で共感してさえいる。
「しのぶには、パーチンの考えを読み取ってもらう。
あの最後の影武者の隠し場所をな」
やはり、最近になって、しのぶが隠していた能力を開放し始めたことと、フライたちには何か関係があったらしいな、、、
「フライ、しのぶがテレパスであることを前提にしてるのか」
「しのぶがテレパスであることは間違いない。
元々、その可能性を見出したので、我々はしのぶにアプローチしたのだ。
思慮深いしのぶは、最近になって、ようやくエターナルを平和国家と認めてくれたようだ。
しばらく封印していたテレパシーを、地球とエターナルの、平和の架け橋にしたいと、しのぶは考えている」
「今回は、テレパシーを使って影武者救出の手伝いをしたいというのが、しのぶの意思ということで間違いないね」
俺は諦めて、現実的な確認態勢に入った。
「その通り。
ターゲットの思考を読み取るには、ある程度接近する必要がある」
「しのぶを、ラシアへ行かせるということなのか。
それは危険すぎるだろ」
パーチンの側まで行かせると聞いて、俺の思考はやや逆戻りする。
「そのための準備は十分にする」と、フライ。
「具体的には」と、俺。
「しのぶには小型バリアを張った状態でパーチンに会わせる。
万が一に備えて、しのぶには、強力な防御性能を持つ特殊スーツも着てもらう。
テレパシーで相手から秘密を取り出すには、会話して秘密に関する話題に導かなければならないが、この対策によって、攻撃されたとしても、相手が捕らえようと向かってきても防げる筈だ」と、フライ。
「その特殊スーツには、刃物や銃弾に対する防護機能が備わっているのか」
「特殊スーツと簡単に言ったが、正確にはエターナル特製光学迷彩ファイティングスーツだ。
不可視、防刃、防弾、ショック吸収緩和、耐熱、耐冷、耐圧、防水、防塵、防毒、空調に加え、
通信機能を備え、翻訳機能もある。
未知の言語に対しても、解析学習機能も併せ持つ。
今回のミッションに必要は無いと思うが、4次元ポケットが標準装備だ。
ポケットの中には、半年分のレーション、簡易テント、簡易ベッドなど、キャンプ機能一式と、軽火器が幾つか備えられている」
立板に水のように、すらすらすいすいと、フライが説明した。
「しのぶを守るために、誰がガードにつくんだ」
高性能スーツのことは分かったが、大事なのは守備隊だ。
「光学迷彩機能を備える、戦闘アンドロイドを2機、しのぶの護衛に付ける。
予期せぬ危険を察知した場合は、戦闘にならぬよう、空間転移装置で、こちらにすぐ戻す手筈だ」
「しのぶを守るために、僕も付いていくと言ったら」
自分にしのぶを守る力が無いことは、じゅうじゅう承知しているが、大事な人を、安全圏から遠く見守るのは違うと内なるものが叫んでいる。
「その言葉は予期していた。
コウタが同行するなら、同じ光学迷彩戦闘服を用意しよう。
サイズオートアジャスト機能で人型生物なら誰にでもフィットするから、コウタにもぴったり合うだろう。
加えて運動補助機能もあるから、普段より力も速度もアップするだろう」と、フライ。
「コウタ用には、光学迷彩を使わない時は、幾つかデザインを選べるような機能を付けといたよ。
その他に、あたしが考案した特殊兵器も付けておいたけど、今回それを使う機会は無いかもね」
これまで口を挟まなかったクモミンが、ここは自分の出番とばかりに、得意げにそう言った。
「じゃあ、クモミン、それを用意してくれ、僕はしのぶに同行する」と、俺。
「じゃあ、私も」と、沙織。
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