ハエと美少女姉妹

第37話 休戦

「大体わかったけど、どうしてしのぶは、コウタを好きになっちゃったの」と沙織。

「え、幸太さんの前で、そんなこと言えないよ、恥ずかしい！」

　しのぶは両手をぱたぱたと振る。

「結構、恥ずかしげもなく、私に文句言ってたけどね」

　沙織がしのぶの目を覗き込む。

　このやりとり、俺は身の置き場がなくて、そわそわするので、かっこつけるのはやめて、正直に今の気持ちを吐露（とろ）する。

「お二人とも、俺を好いてくれるのはうれしいけど、もう俺の女子耐性力が限界に近づいてるんだよ、、、

　だからさ、しばらくの間は普通の友人てことで、よろしくお願いします」

　最後は食い気味に、沙織が俺に突っ込む。

「あ、いつ私が、コウタを好きだって言った？

　ちょっといい気になり過ぎなんじゃないの」

　沙織の無駄な抵抗かｗ

　でも、もうお前の気持ちは十分にわかっているんだぜ。

　沙織がまだそんな事を言ってるならいいさｗ

「ああ、俺の勘違いだったか。

　だったら、沙織とは普通の友人てことでよろしく」

　沙織から、しのぶへ視線を移し、俺は、自分の気持ちの一端を披露（ひろう）する。

「しのぶ、高校生になるまで待ってくれないか。

　その頃には俺の女子耐性レベルが今の１から、２か３くらいまで上がるだろう。

　その時になっても、君の気持が変わらないなら、俺からも意思表示するから」

　俺の言葉に、しのぶは我が意を得たりという表情だ。時間の猶予（ゆうよ）は、むしろ望むところらしい。

「あと１年半くらいですね。

　分かりました、待たせてもらいます」

　この展開は予想してなかったらしく、沙織が少し慌てて、本音を漏らす。

「ちょっと、ちょっと！

　私が、いつコウタを好きじゃないって言った？

　私の方が先なんだからね」

「それはどういう意味なの、姉さん」

　食い気味にツッコミをいれたが、しのぶは沙織と違って落ち着いている。

「ああ、コウタが眼の前にいるのに、そんなこと言えないわよ」

　今度は沙織が手をぱたぱたとする。

「じゃあ、私たちの間に割り込まないでね、姉さん」と、しのぶは釘を刺す。

「コウタ、あんた、３学年も下の女子に本気なの」

　俺にはそれが、妹に、はっきり断ってやってよと聞こえたが、今は決断できなくても、しのぶはキープしておきたい。

　２年後に、もっともっと美少女になることは容易に想像できるからなｗ

「いや、しのぶは好ましい女子だと思ってるけど、さすがに今はまだ早過ぎるから、ちゃんと高校生になるまでは待とうと考えてるよ」

　沙織は、眼尻（まなじり）を釣り上げて言う。

「なによ、高校生になったら、しのぶと付き合う気まんまんじゃないの」

　沙織の言うとおりだ。

　今は優柔不断だが、２年したら、俺も女子に対し余裕ができるだろう。余裕ができれば、俺はすぐにでも女子とお付き合いしたい。

「２年待っても、しのぶの気持ちが変わらないなら、俺がそういう気持ちを持っても問題ないだろ。

　今は１４歳でも、２年後は１６歳だろ。　それくらいになったら、普通に付き合ってる男女は多いじゃないか。

　それでも何か問題あるか」

　沙織はふくれつらをしているが、しのぶは余裕を見せて言った。

「あと１年半で、高校生になります。

　２年も待たなくてもいいでしょ、幸太さん」

　攻められるとたじたじになるなｗ　うれしいけど。

「いや、１５歳だと、流石に早すぎだと思うから、せめて１６になってからな」

「私は４月生まれなので、高一になったらすぐ１６歳になります」と、しのぶ。

「ちょっと、ちょっと、１年半後には、もう二人が交際するって話にしてんじゃないわよ」

　沙織はあせったように口をはさんだ。

「姉さんは、幸太さんと幼なじみで、二人がお互いに好意を持ってるのは、私も認めるわ。

　でも、はっきり意思表示しないなら、ここで脱落だよ、姉さん。

　第一、幼なじみは勝てないっていうのが、小説でも、アニメでも定番なんだし」

　これはもう、すっかり姉妹と三角関係成立だよなｗｗ

　それにしても、自称、大人しいと言うくせに、しのぶはぐいぐい行くなｗ

　普通なら、まだどちらとも交際してない段階の女性二人が、ここまでばちばちとやらないだろうに。

　普段仲が良いからこそ、はっきり言い合えるのかも知れない。

「わかったわ！

　じゃあ私も今から参戦する。

　コウタ聞いて、よく聞いて、私は小４の頃からずっとコウタが好きだったし、今もあんたが好きなの」

　嬉しすぎて俺は呆然（ぼうぜん）とする。

　そう仕向けたとはいえ、本命の女子が、俺に生告白してくれるとは。

　期待値を超えて、俺はもう一杯一杯だ、、、

「二人の気持ちはうれしいけど、俺は女子耐性限界を今、超えました、、、

　活動限界です、、、」

　俺は二人に背中を向けて、宙にふわふわと浮く感じで、一人階段を上って行く。

「あらら、コウタ、ブレーカーが落ちちゃったみたい」

　下で俺を見送った沙織のそんな言葉が聞こえた。

（神の視点ｗ）

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「ここは、姉さん、しばらく休戦期間を置いて、幸太さんを追い詰めないようにしないと、二人、共倒（ともだお）れになっちゃうかも」と、しのぶ。

「そうね、しばらく休戦ね。

　コウタはやさしいから、二人のどちらかを傷つけることなんてできないんだよ」と、沙織。

「あれ、小４時代のたった１年間で、幸太さんをすっかり理解しているつもりなんだね、姉さんは。

　でも、７年間のブランクは大き過ぎるかも。それだけ経てば幸太さんも変わる筈」

「根っこのところは変わらないと思うよ。　それじゃ、どうするの休戦しないの」

「休戦はするよ。

　幸太さんを追い詰めたくないし」

「じゃあ、そういうことで、休戦よろしくね」

「しばらくの間だけ、休戦します。

　でも私はあきらめないから」

「良いよ、それで。

　ウチに帰ったら、コウタのどこを好きになったか教えるのよ」と、沙織。

「考えとく」と、しのぶ。

'''''''''''''''''（神の視点はまだ続く） '''''''''''''''''''''''''''''''''''''''