第36話 生告白
「うん、そうだな。
確かに名前を忘れたのは俺が悪かった。 でも、俺、お前のこと、サオリって呼んでいたのか。
あの頃は、沙織がこんな美少女になるとは、夢にも思わなかった。
変わるんだな、女子って」
ついつい、考えもなしにそんなことを垂れ流した、、、
「あら、私、その頃から、地元じゃ美少女で通っていたけど」
自分が美しいことは、十分に自覚しているようだ。そして調子に乗りやすいw
「おまえ、立ち直り早いな。
ま、とにかく、あれは無かったことにして、仲直りだ。改めてよろしくな」
沙織は念願だったらしい仲直りができて、自然な感じで俺に微笑んだ。
美少女のほほえみはやばい、経験が無いだけにやば過ぎる。
「じゃあ、ライン交換してね」
経験がなくても、俺はクールに振る舞わなければならない。
そうしないと、すぐ立場が弱くなるからな。
「わかった。
でも俺からはラインを送らないと思うけど、沙織から来たラインには、ちゃんと返事はするからさ」
とりあえず、その場でライン承認手続きと、テスト通信を済ませた。
すると、沙織はさっきの俺の言葉に、かなり時差をつけて返事した。
「コウタからはラインを送らないって、なんでよ。
あんたの方から毎日、ラインを送りなさいよ」
ほら、油断すると、すぐ立場が逆転するんだよ、、、
それにしても、俺に毎日、ラインを送って欲しいのか?
そう思ったら、また、ついつい本音をぽろりしてしまう。
「俺は、おまえが言った通りのヘタレなんだよ。
そうなったのを、沙織のせいだと思いたかっただけで、実は、1年の時から、女子には自分から話しかけられなかった。
笑いたかったら笑ってもいいぜ。
どうせ、すぐにはこんな自分を変えられないからな」
かなり
と、ここで、沙織のスマホが呼び出し音を鳴らした。
「ちょっと、友だちから電話掛かってきたから、コウタたちは二人で話してて」
そう言って、沙織は俺たちから少し離れた。
俺には男友達から、電話が掛かってくることは無い。もちろん女子からもw
しのぶちゃんの方を向くと、しのぶちゃんは、俺のさっきの言い分を否定する。
「ヘタレじゃないでしょ、幸太さんは」
「そうじゃないと良いんだけどね、、」
自虐は続くw
「だって、金曜日の夜は、電話でもラインでも、ヘタレた感じはしませんでしたよ」
「ああ、あれな。
不思議なことに、しのぶちゃんは大丈夫だった。
電話とチャットなら、相手の顔が見えないから大丈夫なのかと、あの時はそう思ったんだけど、
電話した最初の女子が、しのぶちゃんじゃなかったら、うまくやりとりできなかったかもしれないと、今は思ってる」
「じゃあ、私は幸太さんの恩人ですね。
あと、私が幸太さんの電話の初めてなんですね」
うれしそうな顔で、意味深なことを言う。
まあ、俺も『電話した最初の女子』とか言ってるから同じようなものか?
いや、やっぱ、しのぶちゃんの言い方は、ニュアンスがエロ過ぎでしょw
短い電話を終えたばかりの沙織が近づいてきた。
「こらこら、また二人の世界作ってる。
私も、コウタのこと、きもいとか言わないようにするから、ライン交換しよ。
あと、電話もね」
「そうだな、リハビリのつもりでやってみるよ」
素直な沙織は悪くないなw
そう思ってしまったせいか、俺も素直に返事した。
今度は沙織にラインが来たらしい。
スマホの親指トークは、女子が圧倒的にうまいな。
姉がラインに集中しているのを横目に見てから、しのぶちゃんが、俺を上目遣いに見ている。
「恩人のお願いを一つ聞いてくれますか」
「ああ、できることならね」
頼むぜ、俺は女子耐性低いんだから、お手柔らかに、という気持ちだ。
「わたしのことも、ちゃん無しの、しのぶって呼んで下さい」
「ええ、何でさ、、」
姉の沙織がいる前で、それはちょっと恥ずかしい。
「姉さんだけ、沙織って呼ばれてると、なんか私が負けてる気がするから」
ええ、ちょっと俺、そんなこと言われると困っちゃうんだけど、、、嬉しいけどねw
「負けてるって、どういう意味よ、しのぶ」
沙織はラインしながら聞いていたらしく、即座に反応した。
「私は、幸太さんが好きなの」
「ええええ!」
沙織はまじでびっくりしたようで、しのぶをまじまじと見てから、次に俺を見た。
「じぇじぇじぇ」
俺だって、ラインじゃなくて、眼の前でそんなこと言われて、びっくりしてるんですけど。
「コウタ、しのぶが中2だって、知ってるよね。
それって不純異性交遊ってやつじゃないの。警察に訴えるよ!」
そんなことは一切していないから、俺は一旦落ち着いてから言い返した。
「いや、そんな付き合いしてる訳ないだろ。
第一、知り合ったのって一昨日の金曜日の夜だよ。ただの電話とラインだよ」
「三つも学年が下の女子に、いきなり夜中に電話したんだ」
夜が、夜中に変換されてるよ、、、
「違うって、しのぶちゃんからの電話だったんだって、沙織に説明してやってよ」
「しのぶって呼んでくれたら、良いですよ」
「ええ、、、じゃあ、しのぶ、沙織に説明してやってください」
「私の方が、先なのに、、、」
かなり小さな声で、沙織が呟いたのを聞き逃しはしなかった。
「え、何か言ったか」
聞こえなかったことにした。
約束通り、しのぶが、沙織にラインの友だち申請と電話した
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