第38話 成績掲示の話
「私たちの恋は一旦置いておいて、さあ、勉強会行くわよ、しのぶ」
「ええ、姉さん」
二人は、コウタが上がっていった階段を登る。
2階廊下奥の部屋がコウタの部屋だ。
ドアは閉まっている。
一応礼儀として、まずはノックを2回してから沙織は中に声を掛ける。
''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''' (神の視点 終) '''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''
「入るわよ」
沙織の声が聞こえたが、俺はまだ立ち直っていないw
「どうぞ、、、」
「何よ、寝てるの」と、沙織。
「いや、ちょっと体力回復を図ってるだけだよ。
これから勉強するんだからな」
そう言って、俺はベッドから降りた。
「私たち、しばらく休戦することにしたから」
まだ頬をほんのり赤く染めた沙織は、しのぶに振り返りながら、そう言った。
「しばらく、恋はお預けです」
そう言ったしのぶは、いつものようにクールな表情だ。
その目つきは、ジト目と言ったほうが近いがなw つまりは、平常運転か、切り替えが早いな、おいw
「お、おう。それは、た、助かる。
うん、何だか体調が良くなってきた」
俺の言葉にウソはない。
「何よ、そんなにダメージ受けてたの」
沙織が、努めて平常心を装っていると分かる。
俺も平常心、平常心・・・
「ちょっとな、精神的ダメージを10ほどな」
「だらしないわね、ちょっと好きって言ってあげただけじゃないの」と、沙織。
「そうだな、もっと耐性上げないとな」
「学校でも、頑張りなさいよ。
もうお一人様は返上するのよ、コウタ」
これで沙織も平常モードらしいな。
「そうしたいところだが、クラスで話す相手が居ないから、やっぱりしばらくお一人様だろ」
「クラスでは私が話し相手になるわ」と、沙織。
「ずるいわ、姉さん、休戦中なのよ」と、しのぶ。
「色気はなしよ、普通の会話するだけ」
「じゃあ、いいけど」
しのぶは、すぼめた口を普通に戻した。
「差し当たり、クラスのみんなを見返すために、中間テストでは上位を狙うわよ」
沙織は、俺を見ながら、握りしめた両手を前後に揺らした。
急に上位を狙えと言われてもな、、、
「上位ねえ、俺 前回は圏外なんだけどな」
そう言うと、沙織は痛い所を突いてくる。
「上位100までの掲示に、あんたの名前は無かったから、学年236名中、コウタは上位には間違っても入ってないわね」
「お前の名前も、上の方には無かったと思うが」
悔しいから言い返した。
「そうね、科目別の掲示は、上位20名までだから、今の私は一つも入ってないわ。
でも総合順位なら、ぎりぎり上位20%の46位よ」と、沙織。
総合順位は上位100までが掲示される。
「ふうん、姉さんの高校って、順位を掲示板に張り出すの。それってきついね」
そう言ったしのぶは、いつもどおり冷静だ。
「しのぶは中学でどのくらいだっけ、あんた結構成績良いよね」と、沙織。
「ウチの学校では、順位は発表されないけど、担任の先生が個人的に教えてくれた話だと、1学期の期末テストでは、学年トップだった」
しのぶは、事もなげにそう言った。
「学年トップだって、しのぶの1学年て何人なの、俺 引け目を感じるぜ」
そんなに頭のいい子と、将来付き合うには、俺ももっと頑張らないといけないな、、、
「100人は居ないと思いますよ。
私のクラスが32名で、1学年3クラスですから、90人ちょっとだと思います。
だからトップと言っても大したことないですよ」
大したことあるんだよ! 成績の良い奴には底辺の気持ちが分からないんだ、、、
でも俺は、自分と比べるのを、すり替えて沙織に言う。
「すげえな、沙織の妹、おまえ負けてんじゃんか」
「勉強では確かに少し負けてるかも知れないけど、私は運動ができるから良いのよ」
確かに口惜しそうには見えない。
そして言う通りに、沙織は運動神経が良さそうに見える。
「スポーツやってるのか、部活は?」
「やってないわ。
でも、小学校5年から中学2年まで4年間、バレエやってたわ。
走るのも早いのよ、100Mで15秒を切ったことがあるわ」
それは、陸上部に所属していない女子としてはかなり速いな。
「そら、早いな。
俺は高2の平均、14秒台半ばくらいだな」
「あら、やっぱコウタの方が早いんだ、さすが男の子だね」
ふふんと首を上下する。まあ、平均なので威張ることはできないがw
「しのぶは?」
沙織がしのぶを見る。
「私は良いの」
しのぶは、への字にした口を瞬時に戻す。
運動は平均かそれ以下だろうか。
ここで俺のPCがブツブツピーと音をたて、画面にハエが現れた。
ディスプレイの上を見ると、フライが居て、大きなハエと同じすりすりポーズをしていた。
「諸君、午後3時だ、そろそろ勉強会を始めようか」
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