第27話 イベントの中止

「へたれ呼ばわりされた幸太が、天敵とも言えるさおりんと、仲良くなるか、それとも徹底的に対立するかが注目されていてな、これがギャンブル対象イベント企画に決定された。

 賭けの内容は、判定基準が明瞭でなければならない。

 ということで、来月末までに二人がデートする仲まで進展するかどうかが判定基準となったのだ。徹底的対立と判定できる事件が発生した時も早期終了となる。

 そして、今日がベット締め切り日に設定されている」


 さきほど俺が聞いた放送では、オッズが低い方へ動いている。

 あのベットチャンネルで、俺たちの様子が逐一中継されているのではないか。

 そんな疑問が湧いて来た。


「何よ、それ、ふざけんじゃないわよ」

 プライドの高い、さおりんが怒るのは無理もない。

 プライドの低い俺でさえ怒ってる。


「僕たちが、太陽系支部の一部の連中の慰み者なぐさみものにされてるって訳か。

 冗談じゃないぞ、僕たちは、お前たちの見世物じゃない。

 結局、僕たちをパーチンプロジェクトの、パーチンと同じ立場に置くということだよな。

 これは、僕たちとエターナルの信頼関係の問題だ。

 そのイベントを中止にしないというなら、パーチンプロジェクトに俺は参加できないし、プライドの高いさおりんも、こんなことは絶対に許さないだろう」


 自信は無かったが、俺はさおりんを振り返る。

 すると、何だかよく分からないという感じで、俺の饒舌じょうぜつを見ていたさおりんは、うんうんと頷いて見せた。


 妹宮いもみや、もとい、しのぶちゃんも同じく、俺の演説に目を見張っていたようだ。

 俺は、しのぶちゃんに、サムアップして見せた。


「分かった。

 これは想定外の放送回線事故だから、中止を検討する理由にはなりそうだ。

 私から、ベットチャンネル代表に話を通してみる。

 私は、このイベントについては、もともと反対の立場だからな」


 そう言ったフライは、PCからぷ〜んと飛び上がり、空中でくるくると、円を描くように飛行を始めた。

 どうやら、太陽系支部と通信をしているらしい。


【 フライの報告に対し、太陽系支部、ベットチャンネル代表から返事が来た。


『了解した。

 では、それに代わるイベントを、フライたちの方で後日提案してくれ』


 チャンネル代表のその話を、フライは拒否した。


『それはできない。

 そういうものは、そちらで企画するのが筋だと考える。

 尚、こちらで醸成じょうせいした信頼関係を反故ほごにするようなイベントには常に反対する。以上』 】


 フライがくるくるをやめて、PCの上に戻って来た。

 どうやら、宇宙通信は終わったらしい。


「コウタの主張は認められ、二人の仲がどうなるかという賭けのイベントは中止が決まった。

 時間が押している。

 早速さっそくパーチンプロジェクトを始めたい」


 フライは、そう結果報告した。


「ちょっと、あんたたちだけで勝手に色々決めないでよね」

 高飛車お嬢さんは、長い脚をひろげ、腰に手を当て、ちょっと待ちなさいよポーズを決めている。

 そして、ポーズを解いたさおりんは、俺にこう言った。


「幸太くん、あんた意外とやるわね。

 見直したわ。

 今から私を沙織と呼び捨てにしてもかまわないわ」


 おや、さっきたしか、俺にこう言ってなかったか?

『もう少し仲良くなれたら、沙織と呼び捨てしても良いから、今は4択で』と。

 つまり俺は、さおりんとすっかり仲良くなれたってことだよなw


 この時、ちらっと見えた、しのぶちゃんの表情に、少しがっかりしたという感情を読み取ったのだが、それは俺の勘違いだろうかw



「では、みんな席についてくれ。

 まず、みんなの認識レベルをある程度、一致させておく必要があるだろうからな」


 フライが議長ぽい事を言う。


 6畳の部屋の、俺のベッドは邪魔になるので、二つに折りたたんで壁際に片付けた。


 お友だちが来ても、部屋を広く使えるようにと考えた両親が、俺に買ってくれたのは折りたたみ式のベッドだったのだ。


 それをクモミンが改造した結果、上に載ってる布団もきちんと畳まれて、見事なまでにコンパクトになった。


 それでも、四人が使えるローテーブルを広げると、6畳の部屋が狭いことは否めない。


 俺の勉強机と、ローテーブルが占拠した、残り少ない空間に、立体映像が浮かび上がる。


 始まったのは、ラシア・エクライナ紛争に関する、特番TVみたいなものだった。

 内容は分かりやすくまとまっていて、情報は正確だったが、

みんなが一緒に同程度まで理解するには、ある程度の時間が必要だった。


 但し、タイムコントロールバリア内で進む3時間は、地球時間に換算して30分だった。

 つまり、6倍速?


 ラシア・エクライナ紛争の共通認識ができたところで、いよいよ本題の、

「パーチンを懲らしめるためのいたずらプロジェクト」開幕である。

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