第15話 エターナルの認定証

「コウタ、表彰式の件について、まだ何かあるかい」


「式の方は、分かったからもういい」


「取って付けた、という認定証についてはどうだい」


 俺は手元の認定証を確認する。


『地球とエターナル友好に関して、仲村幸太を上級推進委員として認定する。

 以下、【上級推進委員】を、単に【委員】と表記する。』


 始まりの文章には、特に問題はなさそうだ。


『第1項: 委員は、両星の友好推進のため協力する。

 委員として得た情報は、他にもらさないこと。』


 誰かに言ってしまいそうだ。


『第2項: 第1項の目的の為に、委員はエターナル星に対し、娯楽を間接的に、または直接的に提供すべし。


 その実行に当たって、困難な状況がある時は、エターナルは実行可能となるよう、積極的に協力する』


 娯楽ってなんだ。

 困難な状況を伴う娯楽ってなんだ。


『第3項: 娯楽の内容は、エターナル星太陽系支部にて、都度都度つどつど決定するが、極力異議を唱えないこと。

 どうしても異議がある場合は、その理由、または対案を具体的に提示すること。』


 めちゃくちゃ怪しい。大丈夫か、これ。


『第4項: 委員の職務しょくむについて、辞退または解任するには、双方に、相当な理由が無ければならない。』


 められないのでは?

 勝手に認定しておいて、辞められない可能性が高すぎる、、、


 俺はフライをじっと見ながら、ダメ元で主張してみる。


「おまえらの都合で、勝手に僕を認定しておいて、辞められない契約は、始めから無効じゃないのか。

 弱者救済だ!

 僕は認定自体を拒否する」


 フライは落ち着いて答える。


「力の格差が極端に大きい場合、えてしてこういう押しつけが通るんだよ。

 その辺は銀河系宇宙では常識だよ」


 フライは両手を一旦拡げてから、すりすりする。


 それくらい分かれよって感じだな、、、


「銀河系に、弱者を守るための、国際条約機関みたいなものはないのか」


「銀河宇宙条約と、宇宙連合はあるけど、常任理事星には拒否権がある。

 エターナルは常任理事星の筆頭だよ」


「それってつまり、どういう意味なんだよ、分かるように教えてくれ」


「地球には国際連合があるけど、その常任理事国が反対することは、事実上決まらないのと同じさ」


「ラシアや、中つ国なかつこくみたいなものか」


 俺は無力をみしめる。


 フライは、そんな俺に追い打ちを掛ける。


「銀河宇宙条約の原案は、エターナルが作ったし、拒否権を使わなくても、常に忖度そんたくされるのが実態だ」


 俺に拒否権はないらしい。


「但し、我らは娯楽文化第一だから、委員の年齢、家庭の経済力、個人の能力、預貯金等を勘案かんあんして、辞任申し出を認める為の違約金額を決定する。

 ウチの連中は、そんな場合でも、状況を楽しめるように、ぎりぎりの条件を提示するんだよ」


「ちなみに、その違約金額はいくら」


 勝手に契約しておいて、理不尽な違約金を設定するのは納得できない。

 それでも念の為、いてみた。


「コウタの場合だと、キャッシュで10万円。

 但し、人から借りた金は、たとえそれが家族からでもカウントしない。

 その金ができるまでは、委員としての職責をまっとうしなければならない。

 尚、その違約金は保証金として預かり、他の違約が無ければ1年後に返還されるものとする」


 キャッシュで10万円。


 高校生の俺にはハードルが高い。

 長期に渡るバイトが必要だ。

 それでも理不尽なほど高い金額設定とは思えないし、1年後に返還すると言ってるし、悪魔との契約と比べれば、なんと容易たやすいことかw


 まあ委員を一度やってみてから、どうしてもいやだったら、また決めればいいか。

 俺は白旗を上げた。


「とりあえず、委員を続けるよ」


「そうこなくっちゃね。

 じゃあ早速、第一弾のプロジェクトに参加してもらうからね」


「お手柔おてやわらかに頼むよ」


「それは、パーチンをらしめる為のイタズラプロジェクトだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る