ハエと美少女姉妹

第14話 宮坂しのぶ とその姉

　さて、前日木曜日の晩、フライに対し、あのふざけたイベントについて問い質（ただ）した続きだが、、、

「あれはだな、」

　フライが少しもったいをつける。

「表彰式（ひょうしょうしき）は、あのままの意味だ。

　別にふざけたつもりはない」

「あのおちゃらけがか、しかも随分と和風アレンジだったな。

　バカにされてるとしか思えないけど。

　たった二日間の審査で、エターナルと地球の、友好の橋渡しにふさわしい、高潔（こうけつ）な人物として認定するとか、なんとか言ってたようだが。

　これでも僕は、不潔（ふけつ）と言われたことはあっても、高潔などと言われたことは一度もない！

　女神も和風美人、表彰状の文章も日本の小中学校そのままのおふざけぶりだ。

　おまけになんだ、取って付けたようなあの認定証。

　こっちの方が、僕にとって重大な意味があるんじゃないのか」

　俺は、たまった鬱憤（うっぷん）を一気に吐（は）き出した。

　フライは全く怯（ひる）んだ様子を見せない。

「まず、表彰状の文章だが、あれはチャットGPTを使って、日本風にアレンジしたもので、真面目に作られたものだよ。

　あと、女神が和風だと、何か違和感があるのか」

　チャットGPTだって、こいつら何でも利用するな。

　俺は少し脱力（だつりょく）した。

「そこはまあ、本質じゃないから、良いよ。

　たったの二日で審査終了の方は？」

「二日間の面接前に、コウタの素行調査（そこうちょうさ）が行われていたんだ」

　おいおい、何か妙なことを言いやがる。

「いつから、どうやって」

　フライの説明は淡々（たんたん）と続く。

「コウタの前にもう一人、認定された者がいてな、その者には姉がいた。

　我らの秘密を少し知られていたので、その姉が秘密をもらさないか、動向調査（どうこうちょうさ）していた。

　担当したのは、スパイ３号だ」

「今度はスパイ３号かよ」

「２号と同じ蜘蛛型だ。

　姉の背中とか、持ち物にくっついて、動向を探っていた」

「ほお、クモなら隠密調査（おんみつちょうさ）に最適って訳だ」

　危なくてしょうがないな、こいつら。

　プライバシーの侵害って言葉、知らないのかよ。

「調査の最終日は、姉の通う高校２年時の始業式の翌日だ」

　前置きが長過ぎて、イラッとするな。

「俺の素行調査のことを訊（き）いてるんだけど、話が逸（そ）れてないか」

「話は最後まで聞くことだ。

　その高校は川北高校だ」

「それは僕の高校だぜ」

　なんだか、雲行きが怪しくなってきた。　ちょっといやな予感が、、、

「さっきコウタは、ワタシのことを、きも、きも、きもと言ったな」

「え、それが何か？」

「似たようなことを、以前に、同年代の女子から言われたことはないか」

　え！　予感的中か、もしかして。

「そんなことは、一回も、、、いやいや、一回だけはあるか。

　でも、それがどうしたんだよ」

　それは、触れられたくない話題だ。

「その時の、スパイ３号の観察記録が、審査本部に流れたんだ。

　審査委員の一人が、この少年を審査対象に加えろと言い出した。

　その新しい審査対象が、コウタ、君だったんだよ。

　そして、その翌月からスパイ３号によるコウタの素行調査が始まったってわけさ」

「その、先に認定された者の姉って、もしかして、宮坂沙織（みやさかさおり）じゃないだろな」

　こんな質問をしてみたが、既に俺は確信していた。

「その通り。先に認定された者は、その妹で宮坂しのぶだ」

「なんで僕が、、、その審査委員に選ばれてしまったんだよ」

　俺は、脱力した上に、気力も失いつつあった。

「エターナル星にはね、戦争に明け暮れた長い過去があって、ひどく疲れ切っていた。

　そうした時、この地球に出会った。

　この娯楽にあふれた星の、悪魔的な魅力にイチコロにされたんだ。

　それからの我らは、娯楽を求めることが第一となり、平和な星となったんだよ」

「そんなこともあるのかね、でもその審査委員はおかしくないか」

　はあ、なんか疲れてきた、、、

「娯楽ならなんでも追求するからね、最近のうちら。

　その審査委員は、このへたれ少年と、どS女みたいな、宮坂沙織に刺激を与えて、その後の二人がどうなるか、先行きの展開が見たいと主張した。

　他の委員たちも、それは興味深いと言って、その主張に乗ったって訳だ」

　俺は愕然（がくぜん）とした。

「おい、おい、なんだよ、それ」

　俺は、肝心（かんじん）の認定証の内容について、問い質（ただ）す気力を失いかけていた。

（認定証の内容については、次話以降で）