第6話 コウタの達観、女子は無理

 次の日の木曜日、俺はいつものように7時に家を出て駅に向かった。


 2つ先の駅で降りて徒歩10分の所に、俺の通う公立高校がある。


 通学時間は30ないし40分だ。

 スマホもいじらなかったのに、頭の中のぐちゃぐちゃで、30数分はあっと言う間だった。


 俺の高校は男女共学でそこそこの進学校だ。


 1学年は7クラスで、2年生からは理系りけい文系ぶんけいに分けられる。


 理系クラスが3個、文系クラスが4個で、理系は1クラス32名、文系は1クラス35名の編成だ。合計で1学年236名。


 PCに興味があった俺は、最初は理系選択に傾いていた。


 しかしながら、理系クラスは男子24人、女子8人。

 男女比が男に偏った構成で、女子とカップルになるには狭き門である。


 しかもその8人が文系女子と比べて、俺の苦手な、理屈っぽいタイプが大勢を占めるとうわさされている。


 文系は男女比3対4で女子が多い。交際のチャンスも大きい。

 そんな希望的観測で俺はやむをえずw 文系を選択した。


 だが、しかし、俺は自分のパラメーターを計算に入れてなかったのだ。

 平凡な見た目、平均的な身長。

 平凡なセンス、典型的なオタク系男子。


 致命的なのは、女子に耐性がないこと。


 あいつらに自分から話しかける勇気がない。

 話しかけられても、うまく返せるテクもない。


 二年生の一学期が、半ばまで進む頃には、戦局の手詰てづまりを読み切って、早々はやばやに男女交際という勝負を投了とうりょうした。

 終盤、王が詰むところまで指し続けるのはプロ棋士としてはありえない。プロ棋士じゃないけどw


 それからは、携帯ゲームの中で2次元彼女(女子高生)を相手にする日々だ。

 俺は人生を達観たっかんしているのだw


 いや、待てよ。達観するのはまだ早いんじゃないか。


 女子との交際という、超難題ちょうなんだいさえも解決しうる、超常的な力を俺は手にできるかも知れない。

 厨二病ちゅうにびょうじゃないぜ、もう高2だし。


 頭に浮かんだのは、あの虫けら様、フライの姿だ。


 とりわけ、あの光る複眼ふくがんだ。


 PCディスプレイでアップされた、あの光る大きな目はやばい!

 あれで見据みすえられたら、クラスの女子も身動きとれまいぜよw

 好みの女子もゴキブリホイホイかw


 バッドモードだ。

 ハエの暗黒卿あんこくきょうに負けて、危うくダークサイドに落ちる所だった。


 女は2次元でいい。

 いや2次元が良い。

 俺は何かを振り払うように頭を振った。


 近くで変態をさげすむような女子の視線を感じた。

 おまえら、今に見ているがいいw

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