第4話 拘束時間はブラック企業並み?

「おおい、コウタ、どうしたの。顔色が悪いよ」


 子供の声が、この時ほど恐ろしく感じられたのは初めてだった。


 怪しいことこの上ないが、今はこいつの言ったことを信じて話を聴くしかないと腹をくくった。



 それなのに、自分でも意外と思える言葉を発してしまう。


「僕がフライの求めに応じてける時間は、平日だと学校帰りの午後5時頃から夕食の時間までと、夕食後午後8時過ぎまで位なんですが」


「君は午後10時頃までPCをいじったり、ゲームをしているようだし、勉強はその後で1時間もやってないように見えるが、違うかい」


「まさしくその通りです。

 それでは僕は、いったい一日どの位拘束こうそくされるのでしょうか」


 きびしいツッコミが入り、俺はボケてみせる余裕がなかった。


「もう、タメ口で良いと言ってるのに、さっきからおかしいよ、コウタ」


「うん、何か、自分でもおかしいと思う。思考停止に近いかも」


 フライは前足を使って、ポンとたたいて見せた。器用なハエだな。


「よし、分かったよ、コウタ。

 君がさっき言った午後5時から午後8時までで良いよ、セブンイレブンと同じ時間帯でしばるつもりはないよ」


「セブンて、一年365日24時間営業なんですが」

 今度はどうにかツッコミを入れた。


「あ、そうか、今はそんなにね。少し前までは午前7時から午後11時までだったと思うが」


「え、そうなの、それでセブンイレブンか、全然知らなかった」


 コンビニはどこも24時間営業かと思っていた。


 そういえば最近、深夜営業は考え直すとかニュースでやっていたっけ。


 フライの方が、自分より日本の文化、歴史に詳しそうだが、知らないこともあるらしいことと、一日3時間拘束までという条件が受け入れられたことに、俺は少しほっとした。


「土曜、日曜は終日 ひまだよね、コウタは帰宅部だし、活動的な友人やガールフレンドもいないようだし」


 失礼な言い方はスルーした。当たっているし。

「土日まで働かせるつもりだったのかよ。まるでブラック企業じゃないか、フライのところは」


「いや、用事のある時はコウタの自由を尊重する」


「用事に当たらない遊びは、ボクの自由にならないってことか」

 俺は条件闘争を始めた。


「大丈夫だよ、長時間君をしばるつもりはない。もちろんだけどね」


 フライの前半の言葉に安心を仕掛けた途端、俺は疑心暗鬼ぎしんあんきになり質問した。


「地球時間で測った場合って、それは一体どういう意味でしょうか」

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