第17話 軒に押し入り、母屋を乗っ取る(最悪

「外宇宙10年クッキングー!!」

 ここは冥王星の基地。

 目の前で私の姿をした他人が奇妙な振り付けと共に書類を持ってきた。


「いや、4光年先の外宇宙に行った私の一団の記録を持ってきた、れっきとした私だよ!?私!」


 他人が何か言っているが、多分疲れておかしくなっているのだろう。

 こんなハイテンションな私、私は知らない。


「いや、栄えある外宇宙の開拓に向かった一団から光通信で、連絡が入ったから報告に来たんだって!ちょっとしたおちゃめじゃないか!私」

 ああ、やっと到着したのか。やっぱり外の宇宙は遠いなぁ。

 そう思いながら、私を自称する他人から報告書を受け取る。

 そこには、こう書かれていた。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 やあ、こんにちは。親愛なる私。元気かね。


 さて、太陽系という枷がはずれた私が外宇宙でなにをしていたのか?


 それを説明しよう。



 超スピードで他の天体についた全長10kmのタイプDダッシュターボはまず、船内の空気が正常かを確認し、3Dプリンターで私を含め1000人程制作に成功した。


 そして内蔵されていたタイプAを500台、タイプBを10台使って、そこら辺を飛び交う隕石を捕まえることから私の開拓は始まった。

 他の太陽系でもアステロイドベルトはあったので100万を超える隕石がそこかしこに在り、材料には困らなかった。

 そして高さ200mの3Dプリンターの部品を製作し、タイプBのアームで組み上げたら、作戦開始である。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「やっぱり外の宇宙も太陽系と構成はあんまりかわらないんだね」

「まあ、地球みたいな奇跡のバランスの星があるかどうかは別問題だが、惑星を連れて恒星が移動するのはどこも同じみたいだな。他人の人」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 完成した3Dプリンターには、まず材料を入れるだけで、タイプB1台、タイプA10台、私100人が半自動的に制作されるように設定する。

 これで失敗しても私の代わりはいくらでもできる。

 抜いても抜いても生えて来る雑草のように。


 そして同時進行で全長10km、直径2kmのSUPERタイプDを4台制作すると、直径10kmの大きさの隕石を見つけ次第、SUPERタイプDを隕石にくっつけた。

 そして、隕石を土台としてSUPERタイプDはロボットアームとして作動し、他の隕石を捕獲したり、破壊して材料を採取し、さらに大きな星に取り付くための宇宙船を作る機械となった。

 なお宇宙船のエンジンでこの惑星は既定の公転軌道から外れ、こちらの太陽系の秩序はちょっと壊れ、その影響で他の惑星の公転軌道に変化、及び気象状態が激変した事が見て取れた。

 これを地球のある太陽系でやったら人類大騒ぎで滅亡の危険もあったのだが、ここは数光年離れた別の太陽系。

 警察どころか人類の手が届かない治外法権である。

 自由に実験が出来て満足である。私。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「私にまともなやつはいないのか?」

 旅先で羽目を外す旅行客を見ているようで、ちょっと恥ずかしい。

 でも、火星の重量を増やしたり公転軌道をいじると地球にも影響が出るであろうことがわかったのは収穫だ。

 誰もいない宇宙で実験するというのはこういうことが分かるので楽しい。

 

 すこしワクワクしながら、私に似た他人から次の報告を受け取る。

「ふざけたのは謝るから、そろそろそのイジメ止めないか?私」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 というわけで、こちらが直径600km。冥王星とほぼ同じ大きさの準惑星を乗っ取…もとい利用した大型宇宙船、タイプE1/2である。

 これから同じ大きさの準惑星10個を消費して作成した全長1000kmの宇宙船タイプFを作ろうと思う。

 成功率としては某ソシャゲの最高レアを引くよりは高いと思われるので、300回くらい失敗してもくじけない覚悟でいこう。


 冥王星と同じ長さのアームは、軽くて頑丈なハニカム構造。

 これで星を次々粉砕し、それをタイプBやAが消化液のように細かく砕き分別する。このとき作業に当たっていた私たちは

「なんか、私たちで一つの生命体みたいになっているな」

「アームは歯。私たちは消化液。分解機が小腸か」

 それは、私が隕石を食いつぶしているようにも見えた。


 こうして採取した材料で10倍の大きさの宇宙船のパーツを作り、先ほどの10倍の大きさの作業船で組み立てていく。


 そして、幾多の失敗の末、直径約5000km。火星とほぼ同じ大きさの惑星にアームをくっつける事に成功した。

 この惑星は火星と同じく重力が弱くて大気が無かったのだが、金属を多く含む隕石を1000個ほど火山に投下して地磁気と少し強くなった重力を得たことで、大気が存在した。

 私は人類が生存できる、二本の腕が生えている惑星型宇宙船を制作する事に成功したのである。

「もしかしなくても、惑星を完全に乗っ取ったし、ここの宇宙の環境を思い切り破壊してるよね?」

 とつぶやいている私もいたが、ま、そういう考え方もあるかもしれないだろう。

 なので

「そうだね。私」

 私は正しく肯定した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 好奇心と趣味の前には多少の倫理感など消え去ったらしい。

 同じ私なので、気持ちは良くわかる。

 私も人類が住んでなかったら、地球を宇宙船に改造して人工太陽を浮かべながら旅に出たいと思っていたからだ。

 いくら快適に過ごせるように宇宙船を作ったとはいえ、広々とした地球で宇宙の果てを目指した方が快適だからだ。

「ちなみに、これが今日届いた映像だ。私」

 

「……………………」


 そこには太陽系のような大小さまざまな惑星が、作業用のアームを有しながら、公転しつつ周囲の隕石を捕獲している姿だった。

 特に緑と海の青があふれる美しい惑星に、16本のロボットアームが装着され、月らしき衛星を掴んで人工太陽に改造している姿は、何かをものすごく冒涜しているというか、正気の光景とは思えなかったので見なかった事にした。

そして、私は気がついた。


「もしかして、別の太陽系に私が到達するたびに、この正気を消費させる邪神のような映像を見ないといけないの?」


 いや、私たちが環境に適応するために全力を尽くしたのは分かる。

 だが、こんなグロ画像まで送る必要はあるのだろうか?

 うん。あるんだろうね。他の船団のアイデア共有のために。

 昔、動物の森というゲームで、どれだけ●った自宅を作れるか競った一団がいたそうだが、今私が見ているのはそんなタイプの映像である。

 

これは、同じ私ながら到着した場所で千差万別あり、それに触発された私たちがさらに奇抜に天体を改造してくのだが、それはまた別の時に話そう。

 とりあえず、私が手をあまり入れられない地球が有る太陽系に残る事が出来た私は幸運なのかもしれない。と惑星に目や耳を付けた映像を見ながら、私はふと思った。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


惑星に腕をつけて作業機にするというアイデアは実現可能か考えましたが、軌道タワーの頑丈なやつ。と思えば行ける気がしたのでとりあえず腕とかつけてみました。

 キン肉マンにそんな悪魔超人がいたような気がしますが、このあとがきを書いて気がついたので、特にモデルではありません。●●●ッ●●●。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る