第15話 鉄砲から大砲へ

「ちなみに今は冥王星より先、エッジワース・カイパーベルトの外側に私の前線基地があるらしいぞ。私 」


「エッジワース・カイパーベルト?」

 海王星より外側、50 au(1au=1.5億km) にアステロイドベルトみたいな天体が密集した領域がある。

 火星と木星の間の小惑星帯と似ているが、範囲は20倍、質量は20から200倍と大規模な資源地帯、もとい星域だと言う。

 冥王星もその一部になるらしい。


 余談だが2005年まで冥王星は惑星の一つだったのだが、この年に冥王星よりも大きな太陽系外縁天体、エリスが発見されてから『惑星の定義』について話し合いが行われた。


 そして太陽系だけに適用される定義として、

●惑星は太陽の周囲を公転し、

●自分の重力で球形が維持できるほど大きく、

●太陽の軌道近くから

 という定義が出来上がった。


 この『他の天体を排除していること』という定義で冥王星は弾かれ、準惑星となったという。


「だったら、そこで資源回収した方が良いんじゃないのか?私?」

 アステロイドベルトより大きいのなら資源も豊富だろう?と言ったが、

「あそこは外の宇宙から隕石が飛んで来た時の楯になりそうだから、あんまり壊したくないのだよ。私」

 と、言われた。


「ちなみに、今では直径1000kmの臼みたいなものを作って宇宙船を大砲みたいに飛ばそうという計画を立てているそうだよ。私は」

 え?それ、中の私たち確実に死ぬんじゃないか?私。

「いやいや、月から飛ばした時限方ロケットみたいに30年後に人間が住めそうな星星を見つけたら人間を作るようにするらしいぞ」

 なんでも球形型のタイプD’TURBOという宇宙船を作り、臼型の星に入れてから、水素爆弾で臼砲の玉のように吹き飛ばし、秒速50~75kmくらいのスピードで毎日外宇宙へと飛ばすための計画を実行しているらしい。

「って、もう実行済みかい!私」


「ああ、例えるなら鉄砲の弾だとスナイパ―ライフルで飛距離は2kmが最大だけど、ヴィルヘルム砲(パリ砲)だと130km、ブルカノ砲(ジェット推進弾使用)で120kmと60倍も距離が違うからね。それだけの力があれば太陽系から脱出するための必要速度、秒速16.7kmなんて楽勝で越えられるだろうね 」

 それは凄いけど、宇宙船が壊れないだろうか?

「堅い玄武岩で覆っているから今のところ大丈夫らしいけど、大砲の砲身の方がそろそろヤバいらしい」

「そっちかー」

「だから、次の準惑星のくりぬきに取りかかっているそうだ」 

 おい、さっき『あそこは外の宇宙から隕石が飛んで来た時の楯になりそうだから、あんまり壊したくないのだよ。私』と言ってなかったか?


「だから、あんまり、は壊してないだろう?私」

 今さらだけど、準惑星の10個や100個壊しても、あんまり、と言える私ってちょっとずれていると思う。

 感覚の麻痺って恐ろしいな。私。


 太陽系でもこれなのだから、人間の住んでない別の太陽系だと私はどれほどの無法を働くのだろうか?

 すでに私が飛び立っているであろう遠くの星を見ながら、私は私の事ながら恐ろしくなってきた。


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 太陽系での採掘は続きますが、次回から、外宇宙への旅が始まると思います。

 とりあえず地球は守られました。

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