第14話 太陽は太平洋に浮かぶスイカの様なものである

「ようこそ、私」

 土星に到着すると、別の私たちが待ち構えていた。

 

 土星は密度が非常に薄く、巨大なプールがあれば水に浮く=水よりも軽い惑星と言われている。

 なので、気体などで構成されるガス惑星なのだが、質量は地球の約100倍。

 密度が小さいだけで、地球よりも大きな惑星となる。

 そんな惑星の周囲を厚さたったの5m、幅いちばん広いB環で約2万5000kmというわっかが漂っているのは、土星の引力と輪っかの遠心力が釣り合っているからだと言う。

「ま、私にとっては貴重な氷の粒子に過ぎないんだけどね」

 と、先に着いていた私が言う。

 取り敢えず、火星から持ってきたフォボスに木製の氷製隕石をわっかをせき止めるように差し込み、氷の粒を回収して行く。

 土星の輪はマイクロメートル (μm) 単位からメートル (m) 単位の無数の小さな粒子の集団で、粒子はほぼ全てが氷で出来ているので、回収用隕石が壊れる恐れは無い。

 だが、細かい粒子でも量が多ければ回収量も断違いで、数時間で私1万人分の水分が集まった。

 これを核融合エンジンで溶かして私の増加に使うのだ。


「ところで、私の別動隊がもう冥王星に着いたそうだが、早すぎないか?私」

 どういう仕組みで到着したのか、しっていたら教えてほしいと言うと、私は。

「ああ、あれは時限装置を使ったらしいんだ」

「時限装置?」

 地球から冥王星までの距離は約48億キロ。惑星探査機でも9年かかったらしい。

 これを私のような有人機が行うとすればもっと時間がかかるだろう。


「そこで、タイプBが出来上がった時に、私の材料と4年後に起動するようタイマーを仕掛けた3Dプリンターを載せて、自動運転で冥王星が到着しそうな地点めがけて発進させたらしいのさ」

 人間がスピードを出すネックになるのなら、移動中は人間を載せず、目的地に到着してから人間を作れば良い。

 そんな感じで送られた別動隊がかなりの数で送りこまれていたと言う。

 さらに冥王星からは100年単位で起動する同型宇宙船を作っているのだが、あちらでは水分が希少なため、この土星で補充しようとしたらしい。

 アステロイドベルトに到着した時、火星に到着できなかった私と、その他の私が先に着いていた。というのは、この時限式の私が先に到着していたからだと言う。

「しかし、私のオリジナルはなんでそこまで数を増やす事に執着しているんだろうか?私」

「あれ?聞いてなかったのか?私」

 なんでも、太陽から別の恒星までの距離を地球のスイカで例えると、太平洋に3つのスイカをランダムに浮かべた位距離が離れているのだと言う。

 一番近いアルファケンタウリという星までの距離が4.37光年。

 宇宙船なら7万8000年かかると言われていた絶望的な距離である。

「先ほどの例えで言うなら、人間はスイカの周囲を泳ぐミジンコに住みついたバクテリアみたいなものだと、私のオリジナルは考えたらしい」

 だったら、普通諦めるのではないか?と思ったのだが

「バクテリアは、太平洋に浮かんだ別のスイカに辿りつく事は絶対ないだろう。でも、太平洋中にバクテリアが増えれば、到達する個体は必ず生まれるはずだ」

 と、ギャンブル依存症患者も真っ青な超超超超超低確率な賭けを考えたらしい。

「さらに言えば、バクテリアみたいな小さい生き物だから、到着までに時間がかかるのだ。単細胞生物から進化して、マグロとかクジラぐらいの大きさになれば、太平洋を横断する事くらい訳が無い。とも考えていたな。私は」

 それって、太陽よりも巨大な宇宙船を作ると言う事になるのだが……

 私は私オリジナルの正気を疑った。


 そんもん作ったらブラックホールか何かになるだろう。と、


 だが、

「次の目標は太陽をエンジンにした宇宙船を作ろうとしているらしいから、それも計算に入っているだろうよ。私」

 と、土星にいた私はあっけらかんと途方も無い計画を言って来た。


 ここは宇宙最強キャラ決定戦か何かの舞台なのだろうか?


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 スイカの例えは宇宙に関するいくつかの本からアイデアを頂きました。

 そして、その話を読んだ時、宇宙中に繁殖すれば到着出来るじゃん。と思った事からこの話を思いついたりしました。

 ここから凄い時間のかかる外宇宙への到達や、銀河系の脱出、そして宇宙の果てへとどう行くか、無い知恵を絞って考えて行こうと思います。

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