第11話 さらば火星 副題 星を盗んだ私

 さて、火星には私の一団を資源採掘のために残しておいたので、今度は木星を目指そう。


 前回のオペレーション、ダンデライオンと同じく、ある程度広範囲で分かれて飛んでいけば、どれか一団くらいは木星に到達するだろう。

 何しろ木星の大きさは地球の11倍もある。

 火星や月に比べたら大き………

「宇宙の広さに比べたらたいして大きくないんじゃないか?私?」

「調べたら地球から木星までの距離は588~968百万kmで公転周期は11年。本当に到達できるのか?私?」

 挑戦をする前からあきらめている情けない私たちが言う。

 参加することに意義があるという言葉があるのを知らないのだろうか?この私たちは?

「それはスポーツに使う言葉で、一生を賭けるようなデスゲームに使う言葉ではないと思うぞ。私、ところで…」

 ん?どうした?私D13ー114514

「勝手に番号を振らないでほしいのだが、それよりも見慣れない巨大な宇宙船が後ろにある気がするのだが、あれはなんだ?私」

 

「何って、ただのフォボスだが?」


 地球よりも小さな火星には、月のような衛星が2つある。

 直径約26kmのフォボスと13kmのダイモスだ。

「ああ。フォボスは昔天文学者が計算したら質量があまりにも軽くて空洞なんじゃないか?と言われた星だけあって、簡単に宇宙船に改造できたんで、今まで10倍サイズで大きくしていたタイプシリーズの例外、タイプD`(ダッシュ)として連れていくことにしたんだ。私」

「もとの場所に返してらっしゃい」

 

 まるで捨て犬でも拾ったかのような話しぶりだが、衛星を盗むんじゃない。私。

「でも、もう内部はくり抜いてタイプBの300倍の大きさの宇宙船に改造してしまっているからなぁ…」

 …なんてことしてくれてやがるんだろう。この私は

「でも、フォボスは月と違って2mずつ火星に沈んでいるからね。近い将来火星の力でバラバラになって土星みたいな輪になるといわれているんで、今のうちに貰ってもいいんじゃないかと思ったんだ。私」

「え?そうなのか?私」

 それは知らなかった。

「うん。、マジマジ。潮汐力っていって、惑星の重力で衛星は縦に伸びたり横に伸びたりして、その変化で爆発四散するって言われているんだ」

 逆に軽いダイモスは火星から少しずつ離れていき、最後には遊星となる予定らしい。

 なのでくり抜かれた中身は月と同じく火星の資源を宇宙船に組み立てる基地にして、外の皮はタイプCを格納する母艦に使おうという計画らしい。

 毎度のことだが天文学者が発狂しそうな所業である。

 もう少し自重しろ。私。

「ちなみに、フォボスというのはいつ頃壊れる予定だったのだ?」

 ねんのため免罪符の補強をしようと思い聞いてみた所

「うん。んで、あとんだよ。私」

 ………………………聞くんじゃなかった。

 天文世界だと確かに『たった』だけど、人類が調査するには十分すぎる時間だと思うぞ。もう原型をとどめてないけど。


 星の窃盗と魔改造は懲役何年の罪になるんだろうか………

 まあ、地球に帰る予定はないからどうでも良い話ではあるが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「さて、それでは次は木星を目指して行くとするか。私たち」

 気を取り直して、次の惑星を目指す。

「ま、そのまえにアステロイドベルトにぶつかるけどね。私」


英語:asteroid belt、アステロイドベルト

和名:小惑星帯(しょうわくせいたい)


 なんでも火星と木星の公転軌道の間には、木星の重力のせいで惑星になりきれなかった惑星たちの集団が輪上に漂っているらしい。

 その数、なんと何十万。

 そのうち220個は直径が100 kmを超え、最大の天体ケレスは、直径約1000 km。

 質量は月の約1/105。氷と岩石で構成されている準惑星らしい。

 ここは潮を吹き出す惑星という事で火星のようにかつては海があったのではないかと言われているらしい。

 

 他にも北極と南極に巨大隕石がぶつかり、マントル辺りまで破壊されながらも、饅頭のような形で残ったド根性惑星。3番目に大きい鉄とニッケルの核を持つ直径460~530kmのベスタ。

 

 純度の高い鉄とニッケルからなる金属であると推定され、100万×1000兆円の価値があると言われたプシケなど、いろんな材料…もとい小惑星が存在する。

 ただ、探査機がそれに衝突することがないように、小惑星同士の間は空いており、遠くから見たら群体のように見えるが、近づくとスカスカの空間らしい。


「さて、そこで何機くらいタイプCやDを造れるかなー。いや。隕石だと引力がほとんどないからタイプDで加工すれば全長100kmのタイプEだって作れるんじゃないかな。」

 と、タイプD’を造った私が楽しそうに計画を立てている。

「あれば火星の衛星ではなくタイプD’。あれば火星の衛星ではなくタイプD’。あれば火星の衛星ではなくタイプD’」

 と横で自分に言い聞かせる私もいたが、作ったものは仕方がないだろう。私。

 個人的には金属は多く有るけど、水分が足りないのでケレスから私の材料2万人分くらいを失敬したいところではある。

 などと考えながら、望遠鏡で資材の宝庫を見ようと思ったら

「あれ?無くなってる?」

 完全に消えたわけではなさそうだが、映像記録に比べるとアステロイドベルトの密度はかなり減っていた。

「誰が私の資源を盗んだんだ」

 犯人は半分わかっているものの、憤慨する私。

 貴重な小惑星を消した犯人。それは誰か?次回の解決編に続く。


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 昔、一億円は意外と重いので盗むのが大変と言うお話を聞きましたが、星みたいなデカい物を盗む場合、取り返して元に戻すのも大変だろうな。と思いながら実際にやったらアメリカとか懲役何億年くらいくらうんだろうかな?とおもう今日でした。

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