第8話 オペレーション ダンデライオン またはウィード
ダンデライオン。
日本語でたんぽぽ。
これはタンポポの形がライオンの歯のギザギザにそっくりだから着いた名前らしい。怖。
タンポポに限らず植物は動けない。
だが、種を風に乗せて自分では進めない遠い遠い場所に行くことが出来る。
なので、太陽風と核融合エンジンで飛んでいく私たちにぴったりの名前ではないかと私は言う。
どっちかというとオペレーション、ウィード(雑草)の方が正しいと思うのは私の気のせいだろうか?
日本のどこにでも生えている雑草『ギシギシ』とか一株が1万の種を生み出して、抜いても抜いても生えて来る。
それは同時期に発芽した雑草を抜いても、まだ発芽していなかった種が発芽していた雑草が使用していた養分を吸ってしつこく発芽するという、たいへんたいへんしつこい性質で、たとえ今回の計画が失敗しても月から再チャレンジをもくろむ私たちのようである。
月と言う拠点を得て一気に増殖した私たちに似ているのは、たんぽぽなんてかわしいものではなく、こちらの方が合っている気がする。
そう思ったが、空気が読める私はあえて口に出さなかった。
「もしも火星への到着に失敗した隊は、そのまま直進して木星との中間にある小惑星帯(アステロイドベルト)を目指してくれ。私たち」
と、立案者は言った。
小惑星帯とは、火星と木星の公転軌道間に位置する小さな惑星の群体であるのだという。
「本当ならある程度の重さの星は惑星になって他の星を排除するのだが、木星があまりにも大きくて重力が強いため、惑星になれなかった星々のあつまりと言われている。ここならまんべんなく星々があるので、宇宙の迷子になることはないだろう」
と、作戦を立案した私が言った。
「いい加減なように見えて、色々考えていたんだな。私」
「まあ、ここにいる私はみんな同じ私だからな。一人も失わずに済む方法を考えるさ。私」
と誇らしげに私は言う。
「てっきり、火星を見失った私は、一度材料(分子)に戻って、他の惑星に到達するまで飛んでもないスピードで無人飛行をさせられるのかと思ったよ。私」
「おい、ここにとんでもない事を考えてた私がいたぞ」
種と言うのは発芽条件がそろわないと発芽せずにそのまま時を待つ。
2000年前の蓮の種が発芽したのは結構有名な話である。
「その場合、作戦名はロータス(蓮)と名付けるだろう。私」
「そっか。それもそうだな。私」
「……やるなら、小惑星地帯を抜けた木星辺りでやらないと危ないじゃないか」
「……私?」
不穏なつぶやきが聞こえたが多分冗談だろう。そう思いたい。
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それから2年。
私たちは前人未到の宙域を進み、多数の困難を乗り越え、不自由で閉鎖された空間に時折仲違いしながら進んだ…………ということはなかった。
長旅と言うのはいかにストレスを減らすかが重要である。
まず無重力状態を解消すべく、円筒形のタイプDを銃弾のようにきりもみ回転させながら進ませた。
これで遠心力による疑似重力を発生させ、生活活動での不便や運動不足の解消に役立てた。
また、内蔵させているタイプAを個室として使い、タイプBを船内でも宇宙服無しで活動できる談話室として使用するようにした。
時折、近くを飛んでいた隕石などを捕食…もとい補足する以外は、地球から送られて来た漫画やアニメ、ゲームのデータで遊びながら、船旅とか連射の旅を楽しむような感覚で2年間の移動を楽しんだ。
そのため
「おい。私。火星がついに近くに見えてきたぞ」
赤と黒の混じった星、2年かけて目指した惑星が視認できる距離に見えてきた。と感動の報告をしたら
「このゲーム、ちょうどいい所だから、あと1時間待って」
「アニメの良い所で話しかけないでくれるか。私。(通信を着る音)」
「(漫画に集中して聞こえてない)」
見事にダメ人間ばかりが出来上がっていた。
もう少しやるき出そうぜ。私。(スマホゲームのログインボーナスをもらいながら)
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豪華客船にしろとはいいませんが、過酷な船旅とかではなく快適な空間で冒険の旅には出たいなぁと思う作者は、野宿も徹夜も出来ないのでこれくいらいの旅をしたいなと思います。
藤子不二雄先生の場合、SF短編集で共通の敵を敢えて作ることでこの問題を解決していましたが、嫌な人がいる旅って最悪だと社内旅行を思い出して思いました。
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