第10話 お嬢様のライバル出現…?
お嬢様の従兄弟であるアクア様が邸を訪れて早1週間、今日もまたアクア様は朝から私を尾行なさっている。食事を作っている時も、洗濯をしている時も、掃除をしている時も…常に視界の中に居た。これで隠れているつもりなのだから、可愛い所もあるのかもしれない
「先程から私に何か御用でしょうか」
「なっ…なんでもない!!」
何かようがあるのだろうかと声をかけるが、猫のように素早く物陰へと隠れる始末…この少年は一体なにがしたいのか。あの時、彼は私を脅したが、私はそれに屈する事はなかった。大人げなく「やってみろ糞餓鬼」と圧をかけ返したら、彼は粗相をしてしまったのだ。いやはや本当に愉快な事この上ない
「…そう監視していなくても、私は約束は破りませんよ」
「ウソだっ!いけ好かない執事の言葉なんて信じるか!リリーに言うつもりなんだろ!」
「いいえ?今お嬢様にお伝えする事は特にございませんし、それはありません」
皿にブリオッシュを盛り付け置けば、彼は素直に手を伸ばしブリオッシュを口にする。共にミルクを渡せばそれもまたすんなりと喉に流し込んだ。この少年…何やかんやと言いながら、私に対する警戒心が薄い
「…絶対に言うなよ」
「言いませんよ。貴方が何も余計な真似をしなければ、ですが」
「くそっ!弱みを握ってたはずなのにいつの間にか弱みを握られた!」
「アクア様は隙が多いですからね」
「ぐぬぬっ………ていうか、リリーはどこだよ、クソ執事」
「お答えする義理はございませんね」
お嬢様は入浴中だが、そんな事をわざわざ教えてやる程の仲では無いし義理もない。私はお嬢様の執事であり、アクア様の執事ではないのだから。ブリオッシュを食べ終えたアクア様は次の執務に取り掛かろうとする私の後を律儀に追いかけてくる。グチグチと文句を垂れるくらいならば私の傍にいなければ良いというのに、何故こうも離れないのか……というか…そうだ、この方と共にいらっしゃったメイドは何処に…
「アクア様…貴方と共に居たメイドの方はどちらに?」
「お前の部屋」
「…はい?」
「お前の部屋」
「繰り返さないで下さい。そもそも何故、どうやって」
「オレがリリーに頼んで鍵貸してもらった。あのメイド、前からお前の事好きって言ってたし」
「…許可なく無断で他人の部屋に立ち入る事は犯罪ですよ」
「でもリリーが良いって言ったぞ」
「あの小娘…!」
アクア様が懐から取り出した鍵を奪い取り、急ぎ足で部屋へと向かう。微かに隙間があいているドアを開ければ、クローゼットから替えの燕尾服を取り出して顔を埋めているメイドの姿がそこにあった
「何をしているんですか貴女は!!」
「きゃああああ!!」
「キャアはこちらのセリフですよ!!!」
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