第9話 アンドロイド

数十年前、とある国に学者と技術者達が集められた。産業が栄え忙しなく働く人々の負担を少しでも減らそうと、人造人間を作ろうという計画を国が興したのだ





その数年後…学者達の優れた頭脳と優れた技術を持つ技術者達の手により、試作品1号が誕生。然しプログラミングの暴走により破壊せざるを得なかった。次いで2号が誕生…これもまた暴走。技術者達は立て続けに作り続けたが、どれもこれも不備が見付かり成功品にはならなかった





やがて、72号目が誕生。これまでの失敗を生かし、学者達は自ら学べるようAIを搭載するよう進言する。技術者達が其れを実現させ…人々に馴染み安いよう、容姿も人間に近付けた。防水機能搭載、温度調節も可能、肌の材質は人間とほぼ同じ。その人造人間は何処からどう見ても普通の人間と何ら変わりはなかった









AIを搭載したお陰でプログラムの暴走はなく、72号は学者達の元様々なことを学んでいく。話し方からテーブルマナー、礼儀等々…当たり前の事を学んだらあらゆる学問の専門的な知識まで…更には戦闘技術を得た72号は、数ヶ月後に晴れて成功品1号となった

































「何処で知った」





それが私、お嬢様の執事だ。試作品72号であり、成功品第1号。私が人造人間だということをお嬢様は知らない…であるのに、何故、この少年は私をそう言ったのか。逃げ道を塞ぎ問い詰めれば小さな口がゆっくり開かれる



「…お…おじ様の書斎…」



「……入ったのですか」



おじ様…つまり、今は亡き旦那様…そして私の購入者。彼の書斎は邸の2階の奥にある



「彼処は封鎖していた筈ですが」



「…去年の冬…リリーとかくれんぼした時」



去年の冬…確かに思い当たる節がある。クリスマスに遊びに来た彼は自身の使用人数名とお嬢様と共にかくれんぼをしていた時だ。お嬢様が「アクアが見つからないの」と言っていたのを思い出す…あぁそうだ、そういえばあの時この少年は私を見て青ざめていたな……寒くて青ざめていたのかと思っていたが、なるほど…あの時に見た訳か




「……それで、その事を知ってどうするのですか?お嬢様に言いますか?…然しそれはお嬢様自身を傷付ける事になるかもしれませんよ」




「…リリーには言わない」




「…では」




「だけどお前が造られた施設に言い付ける事は出来るぞ」




そう言って口元に笑みを浮かべスマホを取り出すアクア様だが、私は反射的にその手を弾きスマホを叩き落とす。ガシャンと音をたて落ちたソレの画面には亀裂が入りガラスが飛び散った

































『試作品72号に欠陥が見つかっただと?…そんな馬鹿な…!』




『博士!72号に異変が!』




『72号は何処へ消えた!』




『探せ!』




















『アレを世に出してはならない!!』



















































……荒い呼吸と共に、何時かの記憶が蘇る。この邸にお仕えするきっかけとなった記憶……施設に連絡されては私はもう此処に居られなくなってしまう







『執事!この婚姻届にサインなさい!』






『執事、なら次はコレにサインを』









『…私が好きなのは執事なの』











あの方の…お嬢様のお傍に居られなくなってしまう

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