第7話 電撃訪問、従兄弟襲来

お友達が欲しいの、と仰っていたお嬢様…結局あの日お友達は作れなかった。というのも息巻いて街へ赴いた彼女は、けれどただ仁王立ちしていただけなのだから仕方ない。いざとなったら声のかけ方が分からなかったのでしょう



「……私だって……お友達の1人くらい…」



ソファのクッションに顔を埋め意気消沈するお嬢様に何と声をかけたら良いのか分からない。人付き合いが苦手な彼女は学園に通っていた時から御学友の1人も出来なかったのだ。とはいえ、まる2日も落ち込まれていては仕方がない。机の上にガトーショコラを暖かいミルクを置き、なるべく優しくお声をかける



「お嬢様、また明日、街へ赴いてみましょうか」


「……」


「しょぼくれていても何も変わりませんよ」



その言葉にお嬢様はゆっくりと顔を上げた。涙で潤む瞳がこちらをまっすぐと見詰めている。



「……私の何がいけないのかしら」



「何、とは?」



「……街の方達、皆様が私を見て…避けて行ってたじゃない」



「……あぁ、それは」



どうやら、避けられていたという自覚はあったらしい。原因を教えて差し上げればお嬢様はとうとう瞳から涙を溢れさせる。かと思えばゆったりと起き上がり、ガトーショコラを口に運び出した



「……威圧的でしたのね…」



「威圧的、といいますか……まぁ、私が原因でもありますので。お嬢様だけが悪い訳ではありません」



「執事も…?」



「えぇ」



ですからあまりお気になさらず、そう言えば彼女の口元がほんの少しだけ綻んだ。嗚呼…そう、その顔ですよ、お嬢様。暗いお顔は似合いません…貴女様の笑顔は周りを明るくさせる…私も、貴女様の笑顔があるから日々頑張れているのです








「明日はもっと街に溶け込める服装で行きましょうか。先日は平時通りのお召し物でしたので」









そう、私が最初からこう言えば良かったのだ。あの様な煌びやかなドレスで赴けば威圧的でなくとも人は近寄り難い。そうと決まれば早速発注。カタログをお見せしようとネットを開きお嬢様にお渡ししようとした時、邸の敷地に踏み込む気配を察知する





「……」




お嬢様は私の手からカタログを奪い取り目を向けておられる。静かに庭先へ視線を向けるが、目視は出来ない…何者だ。侵入者か?…だが今はお嬢様のお傍に私が居る。これ以上の警備はない…






何者だろうが何処からでもやって来るがいい……意識を集中させ、お嬢様の話を聞きながら待っていれば、やがて部屋のドアが大きな音をたてて開かれた


















「ひっさしぶりだね!リリー!!」



「!?」




「……」



明るい声と共に現れた小柄な少年………突如現れた彼にお嬢様は状況が飲み込めず混乱しているが、少年は大きく手を広げ走って来る。このままでは突撃してしまいそうな勢いなので私は素早くお嬢様の前に移動し、勢い良く走り込んできた少年の肩を掌で受け止めた
















「お久しぶりです。アクア様……然し、本日ご来訪されるというご連絡がなかった用ですが?」







「……従姉妹フィアンセに会いに来るのにいちいち連絡する必要ある?……ていうかまだ居たの、クソ執事」







「私はお嬢様の執事ですので。居るのは当然かと思いますが」
















深い碧の髪が少し跳ね、金色に輝く瞳はゆったりと弧を描く。私より幾分も背丈の低い彼は、お嬢様をフィアンセと呼ぶ…アクア・グレイス。お嬢様とは従姉弟関係である

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