第29話 宝の地図(3)

「アオイ、ざっくりで良いからこれからスケジュールを教えて。リアルの方もそれを考慮しておきたいし」


 ミドリが時計を眺めながら、アオイに聞いた。


「ドロシーに必要なアイテムを用意してもらう。たぶんリアルで1~2時間はかかる。その間は自由時間にする。それからは8階クリアするまでぶっ続けて、終わるのリアルで4時ぐらい?」


「8階まで行くのって思ったよりも時間かかるんだな。まあ、移動時間とレベル上げを考えるとそうなるのか。時間的に今日はそれで解散って感じかな」


「何言ってる? テンマはいろいろ修行してもらう。しばらくはこっちの世界に居続けることになるから覚悟しておく」

 

 修行だと!? さすがアオイだ。わかっているじゃないか!

 レベル上げもしたいし、寄生木とヴァンパイアナイフも育てたいからな。


「あ、アオイ。テンマだって睡眠取ったり、おトイレ行ったりとゲーム以外にもすることがあるわ。そんな無理言っちゃダメよ」


「違う。これはテンマのため。【リアル】は早く強くならないと危険。それに、トイレも睡眠もゲーム内ですればいい」


「あ、あんた、まさか……トイレはゲーム内で済ませてるの?」


 まずい。ミドリがカタカタ揺れ出した。

 確かに、初めて聞くとけっこう衝撃を受けるよな。


「2人とも揉めてるところ悪いんだけど、イベントのシールを確認しないか?」


「あっ、そういえばスタンプ帳のこと忘れてたわ。それじゃあ、貰ったシールを分けるわね」


 賞品のシールが150枚。【チャラオーズ】から貰ったシールが234枚。合計384枚。

 改めて見るとすごい数だな。


「さてと、みんなシールはいくつ溜まった? 俺は171枚だ」


「私とお姉ちゃんは、元々シールは0枚だったから128枚ね」


「このスタンプ帳にシールを貼っていけばいいのよね? 最大500枚だけど、この調子ならすぐに終わりそうね」


「ちっちっちっ。お姉ちゃん、普通はこんな簡単に集まらないから」


 ミドリに「そうなんだ。ふーん」と言われると、アオイは俺の方をジッと見つめてくる。

 暗に褒めろってことじゃないよな?

 いやいや、褒めないからね。あのシールの集め方は完全にアウトだから。


「よしっ、シールが貼り終わった! スタンプ帳の100のところを押せばアイテムがもらえるのよね。私が最初にやってもいい? テンマ達の後だと、ちょっとキツいのよね」


 俺達が頷くと、ミドリはスタンプ帳を操作する。

 

「あっ、【ヤーユの寄生種】がもらえた! これって育てたらスキルが使えるようになるやつだよね!?」


「マジかっ! そんないいのもらえるんだな」


「以降のスタンプ賞品は【ヤーユの魂】かも。とにかく使ってみて」


 ミドリは頷くと、ステータスパネルを操作する。

 淡い光がミドリを包み、そして光が消えた。

 やっぱり、普通は苦しまないんだよな……

 ミドリにステータスを確認してもらうと、ヤーユの苗木が追加されていた。


————

 ヤーユの苗木

  ├ 水耐性向上(小)

  └ 防御力向上(小)

————


「おおっ。ミドリの特性にピッタリ! 特に防御力向上の枝にどんなスキルが実るのか楽しみだな」


「そうだね。私も初めての寄生種だから育てるの楽しみだよ」


 次は、俺とアオイの順番だな。

 俺はスタンプ帳を開き、100のマークを押してみる。

 すると100と書かれてあった箇所に、【泉源の瓶せんげんのびん】と表示された。

 アイテムボックスの中に泉源の瓶があったので取り出してみる。

 なんか水筒みたいなアイテムだな。

 アオイの方を見ると、同じアイテムを手に持っていた。


「アオイも同じモノだったみたいだな。早速鑑定してみてくれ」


 アオイは瓶を手に持ち、真剣に眺めている。


「——わかった。コレかなり使える。無限に水が湧き出す瓶だ。もちろん飲める」


 おおっ! さすが【リアル】用のスタンプだけのことはある。

 アオイも喜んでいた。魔法だと大雑把にしか水を扱えないため、この瓶があるとかなり便利らしい。

 全員、満足できるアイテムをゲットできたようだ。


 それから俺達は、ドロシーからの連絡があるまで自由時間とした。


 ◇


 俺は現実世界で食事をとった後、すぐにアカシックワールドに戻ってきた。

 今はゲーム内では朝の6時だ。すでに陽が昇り明るくなっている。


 アオイの話だと、もうそろそろドロシーさんから連絡があっても良さそうなんだよな。

 俺は暇つぶしに冒険者ギルドへ入り、壁のディスプレイに表示されている情報を見て回ることにした。

 

 クランランキング……これって前にミドリが言ってたやつか。

 確か今朝の段階で2900万台だったよな。

 どれどれ、名前を入れてポチッとな。


 『【碧眼の魔女たち】Eランク TOP100圏外: 全体15,210,310位』

 おおっ、すごい上がってる。スイカ割りのポイントが効いてるのかもな。


 ドロシーのいる【オズ】も調べてみるか。

 『【オズ】Bランク 3位: 全体5,170位』

 Bランク3位でも、全体だと5,000番台なのか。


 アオイが前にいたクランはどうなんだ? 見るのが怖いな……


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