第27話 宝の地図(1)
「アオイとドロシーさんはどういう知り合いなんだ?」
「私が前にいたクランとドロシーのクランは仲が良かった。ちなみに、ドロシーのクランはBランクのランキング3位」
Bランク3位ってすごいんじゃないのか!?
「はじめまして。【オズ】というクランでクラマスをやっているドロシーです。アオイが【狂った賢者の宴】に居た頃の知り合いです」
狂った賢者の宴……? なんか聞いたことあるな。
今思えば、アオイが前に所属していたクランの名前って初めて聞いたぞ。
「て、テンマ。……Sランクに【狂った賢者の宴】って同じ名前のクランがあるよね。よくネットでも話題に上がってる有名なクランなんだけど……」
「はっははは。【狂った賢者の宴】はSランクでも10本の指に入る。攻略組として最前線で活躍しているクランだ。クランの名前からもわかるように、アオイはクランを象徴するぐらいの中心メンバーさ。今ではアオイが抜けたことで、クラン崩壊の危機になっているよ」
クランの名前からわかる? ……狂った賢者ってアオイのことか!
確かに、言い得て妙だな。
それにしても、まさか最前線で活躍していたとは。
あいつのスキルセットを考えれば、戦闘だけじゃなくゲーム攻略でも貢献度は大きいだろうからな。
そんなクランにいながら、あっさり辞めてくるとは【狂った賢者の宴】の人達が気の毒すぎるんですけど……
「私のことはいい。それで用事は何? 私はこのクランに骨を埋める。クランの勧誘はお断り」
「あ、あのアオイがここまで言うとは……どうやら、ガチの攻略クランってことで良さそうだな。私としても都合が良い。実は、あるクエストの協力を頼みたい。少し話が長くなるから先に交換所で賞品をもらってきてくれないか」
俺とアオイは、ミドリを見る。話を聞くも聞かないも、決めるのはクラマスのミドリだからな。
「わかったわ。アオイの知り合いということもあるし、ドロシーさんのお話を聞かせてください。今から賞品を貰ってきますね」
ドロシーは笑顔で礼を言い、ここで待っていてくれることになった。
俺達は交換所の窓口で【碧眼の魔女たち】とクラン名を告げた。
すると「おめでとうございます。先ほどは見事でした!」と受付の人達から拍手された。
賞品は通常のスイカ割り分として、1人あたり上限となる50枚のシールが渡された。
ボーナスステージでスイカ10個割った賞品は、なんと【宝の地図】だった。
アオイは知っていたらしく、俺とミドリに向けて親指を立てたサムズアップのポーズをしていた。
話を聞くと、どのイベント会場のボーナスステージでも、パーフェクト賞はこの宝の地図らしい。
だから、地図に書かれた宝はパーフェクト賞を取ったクラン同士の争奪戦になるとのこと。
ただ宝の地図は、Aランク以上とBランク以下の2種類用意されていてるので、俺達の競争相手で一番高いクランランクはBとなる。
Sランクとか相手だったら無理ゲーだったが、Bランク相手ならなんとかなりそうだ。
交換所を後にした俺達は、ドロシーさんと合流し冒険者ギルド近くのバーに行くことなった。
◇
このバーはドロシーさんの馴染みのお店らしく、着くと個室に案内された。
冒険者ギルドから近い飲食店には、個室があるところが多いそうだ。
複数クランによるミーティングや打ち上げをする際によく使われるらしい。
「それでは、ドロシーさん。お話を聞かせてもらえますか」
「ああ、まずは話をさせてもらう機会をくれたことに感謝を」
ドロシーさんは俺達に深々と礼をした。
「ボーナスステージの賞品はBランク以下の宝の地図だったと思う。私からの依頼はそのクエストの攻略を手伝ってほしいのだ。どうかな?」
Bランク3位のクランが、Eランクに成り立ての俺達にクエスト攻略の協力をお願いする……つまり、アオイへの依頼ってことか。
クランを通すことで筋を通すのと同時に、アオイが断り辛い状況を作る。
アオイだけなら断るようなことでも、クランのためになるのであれば引き受ける可能性はあるからな。
ドロシーさん、なかなかの策士だな。
「条件は?」
アオイはニヤリと笑いながら、ドロシーを見ている。
コイツ……今度は何をやる気だ!?
「はっははは。少しは興味を持ってくれたようだな。こちらからの条件は、宝の地図のクエストクリアの実績を我々【オズ】がもらう。その代わりクエスト中に取得したアイテムの所有権は【碧眼の魔女たち】とする。もちろん、そちらの要望があれば聞かせて欲しい」
「『クエスト中に取得したアイテム』というのは、【オズ】が倒したモンスターや見つけた宝も含む。それらも【碧眼の魔女たち】が全てもらう」
ミドリが不安そうに俺の顔をチラチラ見てくる。
まあ、アオイはこういう交渉事を今までやってきたんだろうから、任せておけば大丈夫だろう。
俺はどちらかというと、ドロシーさんの方が心配だ。
アオイの交渉は苛烈だからな。
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