第22話 夏イベント(1)
俺は家に着くと、シャワーを浴びた。
血が付いたシャツとかも、水で洗い流しておかないと親に心配かけるからな。
今日はこの後ずっとゲームに浸かりたい。
このタイミングでお風呂を済ませられるのも丁度良い。
もちろん、ミドリが無事帰宅したのは確認済みだ。その後のことも報告した。
ミドリは俺と別れた後、すぐアオイに相談したそうだ。
アオイからは「テンマは心配不要。相手の人達に死人がでないことを祈る。警察呼ぶとテンマが捕まる可能性があるから放置が正解」と言われたらしい。
さすがアオイだ。よく分かっている。
頭の怪我はアイテムボックスからポーションを取り出し使うと、綺麗に治った。
しかし……これは誰かに知られると絶対にマズいな。
世界に医療革命が起きるが、間違いなく拉致案件だ。
取り扱いに気をつけないとな。
◇
目の前に噴水が見える。
始めたばかりのゲームなのに、既に「ただいま」と言いたくなるぐらいゲームに馴染んでいた。ソロでひたすらやり込む格ゲーも良かったけど、仲間と一緒に楽しむMMORPGもおもしろい。
さてと、今日もバリバリ鍛えますか!
『テンマ。おかえり! 早速だけどメールが届いてるから確認して』
俺はメールボックスを確認した。
・【ログインボーナス(リアル)】(New)
・【夏イベント スタンプラリー開催!】(New)
まずはお楽しみのログインボーナスを見てみるか。
ログインボーナスは前回と同じく10万円だった。
これはマジでありがたい。
お金はあって困ることないからな!
次は夏イベントのメールを開く。
————
【夏イベント スタンプラリー開催!】
7月19日(金)~8月18(日)
期間中、イベントやモンスターを倒すとシールが手に入ります。
それを添付のスタンプ帳に貼って、豪華賞品をゲットしよう!
添付:【夏のスタンプ帳(リアル用)】
————
名前の通り期間限定のイベントアイテムのようだ。
手に入れたスタンプ帳を見てみると、シールを貼る箇所が500カ所あった。
どうやらシール100枚集めるごとに賞品がもらえるらしい。
しかも、これリアル用のスタンプ帳だ。レアアイテム確定でしょ!
これは絶対にコンプ目指すしかない!!
パーティー参加型のイベントはミドリ達がログインしてから行くとして、それまではどんなイベントがあるのか調査だな。
◇
あの後、テンマから連絡があった。
どうやら心配してくれてたみたい。
テンマの説明だと、不良グループの人達と話し合って、今後悪いことは止めると約束してくれたらしい。けど私も子供ではない、そんな簡単に解決しないことぐらい分かる。
何があったんだろうと思っていたら、クラスの友達から『隣のクラスの八神くんが、不良達に絡まれてる』というメッセージが送られてきた。
メッセージには動画配信サイトのURLが貼ってあった。なんでも限定公開というもので、URLを知らないと見られないらしい。
URLをクリックしてみるとライブ映像が流れ出す。
いきなりテンマが鉄パイプで頭を殴られていた。
め、目眩が……自分でも血の気が引いたのがわかる。
そしてすぐに動画は写らなくなったけど、音声だけは聞こえていた。
沢山の悲鳴が聞こえたかと思ったら、テンマの諭すような声が聞こえる。
私がおかしいのだろうか。口調は優しいけどテンマが不良達を恫喝しているようにしか聞こえない……
動画のコメント欄には、『八神ニキ、ぱねー』『八神ニキ、一生ついて行きます』という言葉が沢山並んでいた。
八神ニキ? テンマのことかな?
アオイにこの動画のことを教えたら、爆笑していた。
テンマごめん。後でアオイにいじられるかも。
——それからは、ゆっくりゲームを遊べるように、お風呂や寝る前の準備を終わらせておく。
時間も17時になってしまった。テンマはもうゲームに入ってるよね。
「お姉ちゃん。そろそろ行く? 私はいつでもOK」
「アオイ。お風呂入ったでしょうね? それだけは譲れないわよ」
「大丈夫。シャワー浴びた。夏休みの宿題も持ったし準備万端」
え? 夏休みの宿題!?
「ど、どうやって宿題やるつもりなの?」
「スマホで宿題を撮る。あっちで解いたら写真に撮って、こっちで記入する。ゲーム内の時間は3倍だから効率が良い」
ゲーム内の時間は現実世界よりも3倍早く処理される。
つまり、ゲーム内で24時間過ごしても現実世界では8時間しか経っていないのだ。
テンマと相談して、私達も真似してみようかな。
◇
ゲームの中に入ると、メールが届いていた。
・【ログインボーナス(ハード)】(New)
・【夏イベント スタンプラリー開催!】(New)
まずはログインボーナスを見てみる。
前回と同じ1000円だった。
初めてログインボーナスをもらったときは、何もしないで1000円もらえるなんて凄すぎると喜んだけど、アオイから【リアル】は10万円もらえると聞かされた後だと、ちょっと……。
いやこの考えはダメよね。
お、お金のためにゲームしてる分けじゃないんだから。十分満足しないとね。
次は、夏イベントのメール。どうやらシールを集めたら賞品と交換してもらえるらしい。
イベントアイテムとして、スタンプ帳とアバターの水着衣装が添付されていた。
アバター衣装は、アバターの外見を変えるだけなので、装備している武器や防具の効果は反映される。キャラクターの見た目を変えるだけのアイテムなのだ。
周りを見渡してみると、確かに水着を着てる人が多い。
私のビキニアーマーと違ってとても可愛い。何種類かあるみたい。
スクール水着を着ている人がいるけど、まさかあれも今回配布の水着衣装じゃないわよね……
メールの添付【アバターの水着衣装】をタップする。
『アバターの水着衣装はランダムです。アイテムボックスでご確認ください』
私は恐る恐るアイテムボックスを開き、アバターの水着衣装をタップした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます