第12話 ガチャ
「テンマ、いったん
「いいぞ。それじゃあ現実世界の23時に、ここに集合しよう」
俺はゲームを始める前に、メシも風呂も終わらせておいたからログアウトする必要は無しだ。
「じゃあ。お姉ちゃんまた後でね」
「あれ? アオイはお風呂まだなんじゃないの?」
「大丈夫。3日ぐらい入ってないけど、なんともない」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁああ! あんた何やってんのよ! ダメよ。絶対入りなさい!! すぐにログアウトしないと、ヘッドギアのコンセント抜くからね」
ミドリ。なんかいろいろ大変そうだな。
さてと、この空いた時間でガチャでも見てみるか。
◇
ノルン。ヌイの祠の完全クリアボーナスでもらった【ガチャSSR交換チケット】を使いたいんだけど、どうやれば使えるんだ?
『ガチャはメニューからもできるわ。けど、交換チケットはガチャをまわすガチャチケットとは違って、SSRなら好きなモノと交換できるの。だから、ガチャのラインナップが豊富なガチャ屋通りに行くのがおすすめよ』
ガチャ屋通りってなんだ?
『ガチャ屋が沢山集まっているエリアのことよ。人呼んでアキバ。アヴァロンの中でもプレイヤーによって独自のカルチャーが育っているわ』
ネットでもよく話題になるアキバのことね。
正式名称はガチャ屋通りっていうのか。
名前だけで、なんかワクワクするな。
——そんなわけで俺はアキバへ向かっている。
ノルン。なんかあの通りにものすごく人が集まっているけど、あれがアキバか?
『そうよ。あの通り周辺がアキバね。隠れガチャ屋とかもあるみたいよ。あと、不要なガチャの買い取りや交換とかしてるお店もあるみたい』
やばい。楽しそうだ。
まずは一周して、どんなお店があるか覗いてみるか。
それにしても、プレイヤーが多いな。
コスプレというか、あれは自作のアバター衣装なんだろうな。
漫画やアニメで見たようなキャラクターも沢山いる。
大通り沿いはみんな大きなお店ばかりだ。
どれどれ……お店によってガチャのイベント違ったりするのな。
短剣、刀、弓、槍とかの武器の種類ごとのガチャもあれば、剣士、魔道士、鍛冶士とか職業ガチャもあるのか。
店員にガチャの回し方を尋ねると、やり方は簡単だった。
回したいガチャを店員に言うと、ガチャ室に案内される。
そこは個室になっていて、まわりに何を当てたかバレない作りになっているらしい。
タッチパネル式の装置があるので、そこにチケットを投入してボタンをタップ。
するとディスプレイにガチャ演出が映し出される。
店員に不要なガチャ景品を伝えると、その場で買い取ってくれる便利なサービスもあるようだ。
ちなみに、タッチパネル式の装置は不正ができないようアス王国から支給されてるらしい。だからプレイヤーが運営しているガチャ屋でも安心して遊べるんだとか。
今度は、大通りから路地に少し入ってみると、小さなお店が所狭しと並んでいた。
見るからに怪しいお店も多いな。けど、そんなお店ほど取り扱っているガチャがおもしろい。鉱石ガチャ、ダンジョン地下3Fガチャ、液体ガチャ、指輪ガチャと多種多様なガチャがある。
大通りを挟んで反対側は、アバターの衣装系ガチャが多いな。
これ……自作だよな。そういえば、ネットで作成キットみたいなアプリがあるって読んだ覚えが。自分でガチャの景品作るとかすごいな。
ただ、強くなるまではあまり目立ちたくない。
そう考えると、アバターの衣装系ガチャは後回しにした方が良さそうだ。
さてと、そろそろやりますか。
アキバで一番良いSSRを手に入れてやるぜ!
『そんなこと言って、どうやって掘り出しモノを見つけるつもり? テンマは初心者だし、これだけお店があるのよ?』
ネットで情報を集めるのもありだけど、ここは俺の魂印の力【運命、宿命、必然】に頼った方がいいだろう。
他人にとって良いモノが、俺にとっても良いモノとは限らないからな。
今まで散策して、一番高級そうだったお店【
さすが高級店。店内には上品な雰囲気が漂ってた。
ゲームの世界じゃなかったら、ビビって絶対に入れないな。
「いらっしゃいませ。当店のガチャは他店と違いまして、全てハズレなしのボックスガチャとなっております。その代わり1回のガチャにチケットが100枚必要になっております」
そんなガチャありなのかというと、当然ありなのだ。
このガチャ屋はプレイヤーが運営するお店だからな。
そして潰れずに経営できてるということは、他のお店のガチャよりも100倍の価値があるということだ。
『て、テンマ。早くお店を出ようよ。完全に場違いな客だよ。まわりの人達もみんな富裕層みたいだし……』
「装備系のガチャはありますか?」
「はい。あちらにございます。ガチャの残りは253回。SSRの残りは【ヴァンパイアナイフ】が1つとなっております」
【ヴァンパイアナイフ】か……どんなものかさっぱりわからんけど、まあ使えなくはないだろう。
「そのガチャを回します。案内してください」
——個室というか、応接室のようなガチャ部屋に案内された。
『て、テンマ。どうするのよ! 1回100枚必要なのよ。交換チケットも100枚必要なんじゃないの?』
この【ガチャSSR交換チケット】の存在が、ほとんど知られてなかったとしたらどうなる?
【リアル】で、さらにレア
そんな簡単に手に入るチケットなわけがない。
ましてや、プレイヤーが運営するガチャ屋だ。
こんなぶっ壊れチケットが存在するとは思ってないさ。
俺が【ガチャSSR交換チケット】をガチャに投入すると、画面にメッセージが表示された。
「【ヴァンパイアナイフ】と交換しますか? 【はい】【いいえ】」
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! ほ、本当に交換できた!!』
ほらな。知らないんだから対策できないんだよ。
※プロローグに続きます。
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